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自作小説倶楽部 第17冊/2018年下半期(第97-102集)  作者: 自作小説倶楽部
第99集(2018年9月)/「変身」&「四元素(風水火土)」
14/27

03 柳橋美湖 著  四元素 『北ノ町の物語』

【あらすじ】

 東京のOL鈴木クロエは、母を亡くして天涯孤独になろうとしていた。ところが実は祖父がいた。手紙を書くと、お爺様の顧問弁護士・瀬名さんが訪ねてきて、北ノ町に住むファミリーとの交流が始まった。お爺様の住む北ノ町。夜行列車で行くとそこは不思議な世界で、行くたびに催される一風変わったイベントが……。最初は怖い感じだったのだけれども実は孫娘デレの素敵なお爺様。そして年上で魅力をもった弁護士の瀬名さんと、イケメンでピアノの上手なIT会社経営者の従兄・浩さん、二人から好意を寄せられ心揺れる乙女なクロエ。さらには魔界の貴紳・白鳥さんまで花婿に立候補してきた。

 他方、お爺様の取引先であるカラス画廊のマダムに気に入られ、秘書に転職し、マダムと北ノ町へ来る列車の中で、神隠しの少女が連れ去れて行くのを目撃。そして北ノ町のファミリーとマダム、それに白鳥さんを加えて、少女救出作戦が始まる。一行は、北ノ町一宮神社から軽便鉄道列車に乗り、ターミナルから鉄道連絡船で、大陸にたどりついた。

 ――そんなオムニバス・シリーズ。

挿絵(By みてみん)

挿図/Ⓒ奄美剣星「ネクロマンサー」



     52 四大精霊

.

 クロエです。神隠しの少女をさらった死神さんが現れ、お爺様は後を追い駆けて行っちゃいました。それから終点・龍の墓場の直前、虹色燕ジョナさんの列車が、竜骨トンネルに爆弾が仕掛けられたという連絡を受けて、緊急停車し、グールが襲ってきましたが、元魔法少女のマダムが奮闘して撃退。そしていよいよ終点。そこでネクロマンサーが登場……。

     ◇

「ネクロマンサーは人間じゃない」

 白鳥さんがネクロマンサーについて言うと、瀬名さんと浩さんが聞き返しました。

「人間じゃないというと悪魔とか吸血鬼とか?」

「こらこら一緒にするんじゃない。つまるところは亜神くずれの魔法使いだ」

 ネクロマンサーは、しもべであるグールを全滅させられたので、術をつかおうとしていました。

(どんな術をつかうのだろう)

 再び私たちは戦闘フォーメーションをとりました。

瀬名さん、浩さん、白鳥さん。それに護法童子くん、電脳執事さん、使い魔ちゃんが、私とマダムを囲みます。マダムは竜骨トンネルでの戦闘で力を使い果たしていました。

「クロエ、今度はあなた一人でやるのよ。ネクロマンサーは、上級の魔法使いだから、死者を操る魔法以外では、恐らく、四大精霊エレメンタルをつかってくるわよ」

「ええっ、そんなあ!」

「初級者だって決めてかかっちゃ駄目よ。クロエの潜在能力は亜神級なんだから」

.

 東京にいたとき、職場である画廊で私は、毎日、マダムから個人レッスンを受けていました。

「敵が、火の精霊を呼び出したら、水の精霊を呼び出して冷やすの。風の精霊の場合は、土の精霊を呼び出して壁を築かせるといいわ」

 マダムはいつもそう言います。

.

 死体を操るネクロマンサーと、痩せ馬に乗った死神さんは、黒いローブを着ている点で、外見上あまり差がありません。確かな違いといえば、死神さんが大鎌を担いでいるのに対し、ネクロマンサーは杖をついています。

「出でよ、サラマンダー」

 列車に乗り込んで来たネクロマンサーは、早速、トカゲの形をした火の精霊サラマンダーを呼び出しました。召喚の呪文は、あらかじめ杖に仕込んでいます。それは、ネクロマンサーが杖の先をこちらに向けると、飛び出して来ました。

対する私は――、

「水の精アンディーン」

 水の精といってもいろいろいます。術者のレベルに合わせて精霊も出てきますので、問題は、私の呼び出す子が敵と互角以上かどうかというところ。私が呼び出した水の精は、水色の羽衣を着た少女の形をしています。――その子を、ミズエちゃんと呼びます。――よかった、ミズエちゃん、敵のサラマンダーが吐いてきた炎を、見事に弾き返したみたい。

 ネクロマンサーは、したりと笑って、風の精シルフィーを呼び出しました。そのシルフィーは白衣を着た少年の姿です。吊り目で耳が尖っているのが特徴的です。

 対抗して私が、呼び出した土の精ノームは、小人ピグミーで、百人隊で出てきます。百人隊長はルシウスさん。ピグミーたちは、手に乗るほどの大きさで、古代ローマ戦士のような甲冑を身に着けていますが、実は土木工事が得意です。敵のシルフィーが、無数の鋭い風槍を放ってくると、瞬時に砂煙を巻き上げて、私たちを囲む防御壁をつくり、守ってくれます。

 とても厄介だったのは、ネクロマンサーが、火の精と風の精でスクラムを組ませた、複合技「火槍」を繰り出してきたことです。

 ピグミーさんたちの防御壁にみるみる穴が空いてきました。ミズエちゃんが「火槍」を食い止めようとしましたが、弾き飛ばされてしまいました。

 そこで、白鳥さんが私に声をかけました。

「お爺様の呼子を吹いてみろ」

(えっ、ピーちゃんを?)

 炎竜のピーちゃん、私、すっかりその存在を忘れていました。

 無我夢中で吹いてしまったけど、ピーちゃんのビームって、岩山を横から撫で切りするような物凄いもの。それじゃ、私たちまで一緒に吹き飛んじゃうって、吹き飛んでから気が付きました。

 たぶん、ピーちゃんは成層圏で、日光浴を兼ねたお食事・エネルギー充填をしていたのだと思います。空の彼方で小さくピカッと閃光が……。

     ◇

 それでは皆様、また。

             by Kuroe 

【シリーズ主要登場人物】

●鈴木クロエ/東京暮らしのOL。ゼネコン会社事務員から画廊マダムの秘書に転職。母は故ミドリ、父は公安庁所属の寺崎明。大陸に棲む炎竜ピイちゃんをペット化する。

●鈴木三郎/御爺様。富豪にして彫刻家。北ノ町の洋館で暮らしている。妻は紅子。女学校卒業後、三郎に嫁ぐ。紅子亡き後はお屋敷の近くに住む小母様をアルバイトで雇い、身の回りの世話をしてもらっている。

●鈴木浩/クロエの従兄。洋館近くに住みクロエに好意を寄せる。式神のような、電脳執事メフィストを従えている。ピアノはプロ級。

●瀬名武史/鈴木家顧問弁護士。クロエに好意を寄せる。守護天使・護法童子くんを従えている。

●烏八重/カラス画廊のマダム。お爺様の旧友で魔法少女OB。魔法を使う瞬間、老女から少女に若返る。

●白鳥玲央/美男の吸血鬼。クロエに求婚している。一つ目コウモリの使い魔ちゃんを従えている。

●神隠しの少女/昔、行方不明になった一ノ宮神社宮司夫妻の娘らしい。死神にさらわれているのがわかった。

●ジョナさん/虹色燕。同名の港町で、連絡船アテンダントをしていた、脚のある人魚族・由香から案内役を引き継いだ。軽便鉄道・装甲気動車の運転士。

●ネクロマンサー/竜骨トンネルで、グールたちを操り、クロエたちを襲撃した。

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