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あの男と私、本当に溺れるのはどっち?

初心者バリバリ初投稿です。

生暖かくよろしくお願いいたします、笑

ハッピーエンド予定です!

あの男。


私だけのモノにならなかったなんて

「ありえないでしょ?!」


佐藤優って私の名前。

訳したら、優しく甘いのよ。(佐藤=砂糖=甘いっていうこじつけね)

名は体を表すっていうでしょう?

中身は優しく甘いのよ、たぶんね。


私の見た目は優しそうではないし、甘さとは程遠いキツめの美人…って自分の事はわかってる。



〝媚びない美人〝って散々周りに言われてきたんだから、堂々と公言するわ。




今年4月の帰り道

「医療の仕事なんて選ぶんじゃなかったわ」

クセのつきやすい髪質を、少しだけうらめしく思いながら髪をほぐす。お気に入りのシャンプーが香って、まだまだ女だと自信を持つ。


急ぎ足で雑踏を、ヒールがウザいと思いながら掻き分け歩いてると、携帯が鳴った。腐れ縁の悪友、芽衣からの着信だ。


「ねぇ。時間ある?」

通話ボタンを押したと同時に彼女の声。

芽衣らしい前置きがない電話に気持ちが落ち着く。


用事なんてない。モテる割りに彼氏イナイ歴も3年を過ぎた28歳だもの。芽衣に誘われるまま、約束をしたバーに向かう。

「こんな事ならもっとオシャレしてくれば良かったわ」

柔らかな膝丈のシフォンスカートが足にまとわりつく。首元には3年前に、あの男からプレゼントされたネックレスが今だに鈍く光って揺れる。


少しだけ重めのバーの扉を押し開ける。

「待ってた〜!!」

企らむように笑う芽衣。


バーのカウンターに座る芽衣の隣には

3年前に姿を消したあの男の後ろ姿。スーツの後ろ姿だけで、あの男だとわかってしまう自分が恥ずかしくなる。

っていうか、芽衣とあの男は知り合いだったの?

何で芽衣の隣にあの男がいるの?

一気に思考は回るけと、一瞬、首元に意識がいく。


「ごめん!!先にトイレ!」

トイレであの男からもらったネックレスを、引きちぎるように外してバックに落とし入れる。


そこから、しばらく3人で飲んで

どうやら芽衣の職場に海外赴任から転任した上司が、あの男だった事を知る。

キラキラした鮮やかなカクテルを飲み干した。2人の会話に入り込む余裕さえなくて、隣に座る、この男よりも眩しくて甘いんだと言い聞かせながら飲み干し続けた。いつの間にか芽衣が帰った事にさえ、気づかないくらいに酔っていた…。


「なぁ、あの時どうして俺の前から消えた?」


お願い…鮮やかに彩られていたあの日々を思い出させないで。泣き喚いた日々を思い出させないで。


グラスを持つあの男の薬指には、外しているだろう指輪の跡が、まだ残っているように、酔いで鈍った目に虚ろに見える。とっさに視線をずらした先の、奥二重の切れ長の目に泣きそうになる。

少し口角を上げて、憎々しげに笑う唇。


キレイな顔…

再確認してしまった。


あの男の名前を呼びたくても呼べない3年間に

憎悪さえ浮かんで消えない。

昔と変わらずスマートに会計を済ませたあの男に、

強く腕を掴まれて、私達はバーを出た。

私じゃ少し重いバーの扉を、あの男は軽く押し開ける。


「頼むから名前を呼んでくれよ」


押し倒されたベッドの上で、切れ長の目を一層尖らせて懇願される。

絶対に呼んでなんかやるもんか。

じゃあ、なんで私は自分の部屋に入れたの?


私の機嫌をうかがうような優しいキスから

奪うようなキスに変わる。

覚えてる……鮮明に覚えてる。

カラダ中を優しく這う唇の感覚を

少し細めの指が伝う感覚を

細いのに、広い肩幅と私を抱きしめる強さを。


「頼むから名前を呼んでくれよ」


(春馬……)


懐かしいあの男の匂いに溺れて

全て奪われてしまいたい力強さに包まれて

あっという間に、3年前と同じように私は意識を手放した。


ふと目が醒めると隣には、寝息を立てるあの男。

逃げ出したくてもここは私のマンションのベッド。

せめてもと反対側に寝返りを打とうとすれば

〝逃すものか〝というように、あの男の腕に力が入る。

(爆睡してるよね?)

無意識にでもあの男に求められてるようで。全身に血液が駆け巡る。


あの男を朝に部屋から見送って

「連絡するから」って言うのを聞き終わらないうちに扉を閉めた。

次の日にはもう、私の携帯が鳴る事すら知らずに。



仕事が終わって白衣を脱いで

職場から出たと同時に鳴る携帯。

知らない番号に躊躇しながらも通話ボタンを押す。

「優……。オレだけど」

あの男の声。番号を教えたのは芽衣しかいない。


あの男が既婚者で、名のあるある会社の二代目だった事は付き合って3年目の春に知った。

「愛のない会社同士の結婚なんだ」

そう言われたって信用なんかするもんか。

指輪を外して私と会っていたあの男を信用なんてするもんか。だから、既婚者だって知った3年前に、海外赴任をする事になったあの男の前から消えてやったんだ。住む所も携帯番号も職場も、全て変えて。


携帯を耳に当てたまま、立ちすくむ私の数メートル前に、183センチある長身のあの男が視界に入る。

「あそこにいる人やばくない?超イケメンなんだけど!」って、後から職場を出てきた新人2人が騒いでる。


「優〜〜〜〜っ!!」

半年くらい前から、私の仕事終わりの時間に迎えに来るようになった、幼馴染の腐れ縁、裕太が手を振りながら駆け寄ってくる。

同窓会で再会してから、週3ペースで勝手に迎えに来るんだよね。

あの男に見せつけるように、満面の笑みを浮かべて裕太に手を振り返す。

あの男が裕太を睨みつけているのが視界に入る。


2度とお前のモノになんかなるもんか

さっさと指輪をつけて家に帰りなよ


まだバックの中で鈍く光続けるネックレス。

捨てる勇気はまだなくて、しばらくバックの中でもてあそんでしまおう。





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