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帰ってきた! 桜ヶ丘高校生徒会役員

作者: 嫁葉羽華流

お題:オマージュ・パロディ・パクリです。

「つーわけで、始まるわけなんだが。まぁこれから始まるのは極めて一般的な学園コメディなわけだ」

「唐突すぎてわけが分かりませんよ、会長」

 春も始まってすこしした頃、私達は生徒会室に集まっていた。

 なんでも会長が大事な話があると言って集めたのだ。

 集まったのは、会長、副会長、書記、そして私こと庶務。

 会長はまぁ、この学校……桜ヶ丘高校生徒会の会長であり、校内でもっとも有名な人物、三年の夏木(なつき)竜介(りゅうすけ)である。

 金髪(地毛)、180超えの背丈、筋肉もりもりマッチョマンの変態である。

「何か読者に対して説明しているようだが、桜田。俺は変態じゃあない」

「メタいことを言わないでください会長」

「断言しよう。俺は変態じゃない。俺は紳士だ」

「この間幼稚園生に向かってはぁはぁして『お、お嬢ちゃん、パンツ、何色……?』って聞いてたのはどこの誰ですかね」

「記憶にございません。全ては秘書のしたことです」

「いや、貴方がしたことですからね、会長」

「ちっ、しゃーねーな。反省してまーす。してないけど」

「そこは嘘でもいいからしてるって言ってほしかった!」

 私が頭を抱えていると「まぁまぁ」といってお茶が出された。

「まぁまぁ桜田さん。会長はあんな人だし、仕方ないよ」

「萩さぁん……」

 副会長でありこの生徒会の癒やしとブッダ担当の二年、(はぎ)正太郎(しょうたろう)先輩。

 爽やかな笑顔は誰も彼もが虜にされる、甘いマスクのイケメンである。

 だが驚くなかれ、この副会長はヤのつく自由業の若頭さんである。

「あ、会長。あんまりうちのシマでいろいろやってると、そろそろ危ないですよ?」

「なぁに。次はバレない程度にするさ」

「バレたら一大事だから言ってるんだけどなぁ……はっ!? まさか会長、これも僕への試練と……!?」

「え、いや、んなこたぁ言ってないんだが」

「そうですか……会長の気持ちを察せられなかったか……くっ、まだまだ甘いな、僕は。次は会長が手をあげたらムチとろうそくを持ってきてそれから荒縄を装備するくらいじゃないとダメかな……それくらいしないと会長のフォローなんてとてもとても……!」

「すんませんマジ勘弁してください。というか俺そういう趣味ねえから!?」

 なお、割りとマゾい精神の持ち主である。普段は本当にイケメンで落ち着いててフォローもできていい人なんだけど、時折出てくるこの衝動。ヤのつく自由業の人は疲れる人が多いのかな?

「はぁ……正太郎もそのくらいにしてね? ほら、ハルちゃん引いちゃってる」

「いや、それでいいんですか柊さん。いや引いてますけど」

 そして書記の二年、(ひいらぎ)紫苑(しおん)先輩。

 黒髪ロングでほっそい、だが折れそうなとかそんなんではないしっかりとしたスタイル。文武両道、しかも柊財閥という大会社のご令嬢。

 もやし一本から家まで。なんでも作ってなんでも売っちゃう。柊財閥のご令嬢。

 萩先輩とは同じクラスで幼馴染。生まれた病院から同じ付き合いというほどのながーい幼馴染みである。

「衝動なら仕方ないわよね? あとハルちゃん? 暑いから脱いでもいいかしら」

「ダメですよ!? なんで脱ぐんですか!」

「暑いからよ」

「理由になってない!」

「人は服を脱ぐのに理由がいるのかしら?」

「この場合はいります! だからやめてください!」

 あと脱ぐ。

 いや、そんなモデル体型の人が脱いだらとんでもないことになるからやめて欲しい。わりと本気で。

「いやまぁ、それよりもなんでここに集められているのか、そろそろ話してもらえませんか、会長」

 そして私、庶務担当の一年、桜田さくらだハル。

 身長159、体重は教えない、胸は自分で言うのもなんだが大盛り。髪は訳あって桜色ロングで特技は古武術。趣味は食べ歩き。

 ここまで書いてて特に何も特筆すべきことはない普通の一般人である。

「いや、お前一般人という枠組みには入らないからな、それ?」

「古武術が本当に古武術しててサバゲー大会で相手の弾を避けたりスリッパで撃ち落としたりするのは普通の人じゃできないかな」

「走り幅跳びで2m15を出した人は普通とは言わないわね、というか陸上全種高校新記録出してたりとかいうのは普通とは言わないわ」

「あるぇ? いや普通ですよ?」

 おかしいな。普通の人間であればできるはずなんだけど。私間違えたことやったっけ?

「質問だ桜田よ。帰るときの通学路は?」

「山を通るか都市部のビルの間を飛んで帰ります」

「じゃあ、桜田さんの休日の過ごし方は?」

「家にいる金太郎|(ツキノワグマ。オス)と組み手か、おばあちゃんと山菜取りです」

「学校での成績を聞こうかしら?」

「体育以外オール2です!」

 ……あれ、なんだこの皆から漂う「おお、もう……」って感じの諦めオーラは。

 おかしいなぁ。ちょっと生まれが山育ちだからってそんな風に扱われるとは。

「あ、それよりも今回なんで呼び出されたんでしょうか、会長」

「うむ、よくぞ聞いてくれた。桜田よ。他の皆も聞いてくれ」

 そして会長はお決まりのゲンドウポーズを取って厳かに言った。

 この空気、ただならぬことではない――。誰もが覚悟をした。

 次の瞬間、地球が回るのを止めたのかと思うくらい、長い時間に感じた。


「――この度、桜ヶ丘高校生徒会役員。再始動する」


 全員の目の色が変わる。

 再始動。それはすなわち私達が……。


「再び小説化されるってことですね!」

「うん。そうなんだが。俺達の事を知らない人たちがそれはもう多すぎるからな」

「なんせ『小説◯になろう』さんで二十万PV達成したらしいですけどね」

「それでもオファーが来なかったらこうなったら自分でリメイクしてしまおうという作者の浅はかな考えが目に浮かぶわね」

「うん。お前らちょっとはメタ発言を気にしような? 色んな所から怒られるぞ」

 メタが許されるのはここまでだと思う。

「というわけで、再始動に至ってのテコ入れをしていきたいと思う」

「テコ入れ、ですか?」

「おうともよ。俺たちの最初の頃はそれはもう小説の枠組みを取っ払いすぎたなんというか『え? これ小説? いや文学? そもそもラノベ? 絵本ではなく?』といったようなもんだったからな。俺達のキャラもブレブレにブレているわけだ」

「作者もついに書くのが久々ですからね。最終話書いたのが確か高校三年くらいでしたっけ? 確か国語の成績4だったはずですけど」

「文法がめちゃくちゃで叩かれるわ怒られるわでさんざんだったらしいがな」

「それでも確かまだ他の『小説家に◯ろう』でまだ一位が『◯色の文字使い』とか『魔法科高◯の劣等生』とかがあった頃ですよね?」

「そもそも当時、『魔法◯高校の劣等生』、ランキングに出てたかしら?」

 全員、沈黙。

「まあともかくだ。テコ入れだ」

「「「はい」」」

「ここに資料を用意してある。萩」

「こちらに」

 萩先輩が全員に分厚い資料を配る。そこには様々な台本が書かれてあった。

「今回は実際に、そのテコ入れ案のやつを出だしみたいな感じでやってみることにする。しっくりくればそれが物語のはじめになるわけだ」

「へぇ……色々なテコ入れ案がありますね」

 ペラペラ捲る柊先輩。うわあ分厚いよこれ。国語辞典が五冊くらいの厚さだよこれ。

「あれ? でもこれ配役が足りなくないですか? ほら、ここのシーン明らかに人数が合いませんけど」

「ああ、それはこのテコ入れ回で出てこれなかったやつだな。ほら、人数が合わないのはそいつらが自分主人公で書いてるからだ」

「これ下手すれば主人公変わりますよねぇ!?」

 私! 私主人公! このお話というか、物語の主人公私!

「無駄に強い主人公とかもう廃れてるんじゃないかな」

「そういうこと言うのやめてくれませんか萩先輩!?」

「はーい、それじゃあ始めてくぞー」

「始めないで!?」

 くそうっ! 絶対に主人公の座を守ってやるんだから!


※―――


 時は二〇XX年。世界は核の炎に包まれた――――!

 世界は崩壊し、人類は絶滅したかに思えた……。

 しかし! 確かに人類は生き残っていた!

 魑魅魍魎、悪鬼羅刹のサバイバルを、今一人の少女が銃火器を片手に生き残る!


「まった」

「どうした桜田。まだ出だしでしか始まってないぞ」

「始まらなくていいですよ。これ北斗◯拳ですよね!? ちょっと違うしうろ覚え感あるけど、これ北◯の拳ですよね!?」

「伝統的な世界荒廃の表現として正しいだろこれ。それにパクリじゃないから。オマージュだから」

「会長、すでにこのノリがもうやられてるんですよ!? ◯八先生とかで!」

 伏せ字の場所でちょっと変わってくるけど、もう分かる人は分かるでしょこれェ!

「ちっ。なんだよ。折角世紀末衣装としてモヒカン用意してきたのによー」

「夏木会長? ご自分がどんな髪型しているか分かってて言っていますか? あとこの紐の部分、もうちょっと細くなりませんか?」

「柊先輩!? そこの紐の部分細くしたら青年誌でもアウトな絵面になりますよ!? あと萩先輩はどこに電話をしようと!?」

「え、いや。ヒャッハーな人たちが希望されていたからね。じゃあウチから呼ぼうかと」

「呼ばないでください!? ほんとに呼ばれたらツッコミが追いきれないです!」

 本家ヤのつく自由業の人たちにツッコミしろって無理だから。エンコ詰めとかされたら怖いよ! いや普通の女子高生にエンコ詰めはしちゃいけないけどさ!

「とにかく、これだめですよ! ただでさえ最近いろいろと世間の目が厳しいのに、これはまずいですって!」

「ちっ、しゃーねーなぁ。じゃあ次のテコ入れ案な」


※――――


日本がまだ日ノ本と呼ばれていた頃のお話。

ある一つの忍びの隠れ里に九尾の狐が現れ、里を荒らしていた。

強大な力を持った尾獣、九尾は、当時の里長である四代目火影によって、共に自らの命を犠牲にし、へその緒を切ったばかりの赤ん坊、桜田ハルに九尾を封印した。時は流れ、再び長についた三代目火影・夏木竜介により、里は平安を取り戻していた。


「アウト――――――――――――――――――――!」

「どうした桜田。急に叫び出して」

「言いますよ! 言いますよこれは! 一番敵に回したらいけないやつじゃないですか!」

「あそこはパロディとかには寛容だろう」

「程度によるわ! まるまるもうこれアレじゃないですか! NA◯UT◯じゃないですか!」

「桜田さん。伏せ字になってるかわからないよ、それ」

「私だってギリギリのところで突っ込んでるんですよ萩先輩!」

 くそっ! やられた! これ多分こういうのがめちゃくちゃ多いぞ!

 恐る恐るといった感じで他のを確認すると、出るわ出るわ。

「ちょっと! これほとんどが有名作品のパロディというか、パクリじゃないですか!」

「何言ってんだ桜田。パクリじゃねえよ。オマージュだよオマージュ。最近の作品にはありふれてるだろ? ほら、異世界転生とか、チート持ってるとか、ハーレムとか」

「それとこれを同列に語らないでください!? いや、たしかにおんなじようなのが多いけども!」

「そもそもだ」と会長がとん、とテコ入れ案を指差す。

「昨今作られている作品で、最初から新しい、ましてや新しみのある作品なんぞあるわけがない!」

「うぐっ、そ、それは作り手のクオリティが下がってるとか、原作読んでないからとかでは……」

「確かにそれもあるだろう。だがな。読み手はそんなのを気にすると思うか?」

「どういうことでしょうか、夏木会長?」

 柊先輩がたまらず口を突っ込む。うむ、と会長が頷くと、

「例えばだ。作り手が『これは自分のオリジナルだ!』って言って出したとする。それは作り手が自分の心血を注いで作り上げられた、一筆入魂の作品だ。だが読み手一人が『いや、これは有名作品のパクリだ!』と言うと、とたんにその作品は『盗作』になるわけだ」

「そ、そんな無茶苦茶な」

「桜田、無茶苦茶だ、というのは作り手の妄想だ。無茶苦茶でも作り手にとってはそれは体のいい逃げ道でしかない」

 ギロリ、と此方を睨む会長。こわっ。

「だがしかしだ。作り手がそれはもうメッタメタに、もう最初からどこかで見たことあるような出だしで始めたとしたら、それはどうなる? 読み手も作り手も『これはパロディだ、いやオマージュだ。いやこれはパクリを利用したコメディだ』と一致団結するわけだ」

「そんな都合よく行きますかね?」

「うまく行くさ。さっき桜田が突っ込んだだろ?」

「あっ」

 そうだ。さっき私はテコ入れ案をあれこれのまんまだと突っ込んだ。

「つまりだ。これらのテコ入れ作品はそういうオマージュ・パロディ・パクリがふんだんに盛り込められた、いわゆる一周半回ったオリジナルの作品というやつだ!」

「なるほど! それなら世間様に叩かれることはないですね!」

 萩先輩と柊先輩が何か生暖かい目線を送っているが気にしないでおこう。

「そういうわけだ! 桜ヶ丘高校生徒会役員、新規路線の合言葉は『オマージュ・パロディ・パクリ』だ!」

「おお! 一周半回って新しい! これは来てますね!」

「ああ。来てる。確実に吹いてるな。俺たちに時代が追いついたんだ」

「なんでしょう。新しい風を感じます……」


※――――


「現役幼女の脱ぎたておパンツをおくれーっ!」

 会長がそう◯龍に頼むと、威厳あふれる声で神◯は『承諾した』と答えた。

 その後、会長の頭に脱ぎたての幼女のおパンツが降ってきた。

『願いを叶えたければまたドラゴンパールを集めるがよい……』

 そう言って◯龍はまた光り輝く一〇八の玉になり、宇宙へと飛び去った。

「な、な、な、な……」

 マガマガしい衣装に身をつつんだ萩先輩はワナワナと震えだし、

「なんということを……! 苦労して集めたドラゴンパールが! こともあろうに、幼女のパンツに変わるなんて!」

「萩殿下。落ち着いてください」

 側近の柊先輩がなだめる。しかし萩先輩の怒りは有頂天に達していた。

「ええい! 者共! なにをしている! 斬り捨てろ! このような願いを叶えたやつらを斬り捨てい!」

 といって周囲から黒装束の忍者たちを呼び寄せる。

「どうするんですか会長。周囲にはニンジャが大量に居ますよ」

「こいつぁ……アイサツをしても乗り切れるかわからねえな……」

 背中合わせに私たちはニンジャと相対する。その数は数十人に及ぶ。正に人だかりだ。

「斬れ! こやつらを生かしてここから返すな! その幼女のパンツ諸共、血に染め上げてしまえ!」

 ニンジャたちが一斉に飛びかかる、その瞬間、

「イヤーッ!」

 会長は目の求まらぬヌンチャク術で敵を吹き飛ばす!

「ハァァーッ……螺旋◯!」

 私も瞬時に練った気を丸め、ニンジャに叩きつける!

 アワレニンジャ達は米粒ほどの大きさになりながらこの世から姿を消してしまった!

「うぐぐ、おのれおのれ! よくぞ、よくぞ我が野望を邪魔してくれたなリアル・ニンジャ達よ!」

「ふん。地球のみならず、木星火星金星土星水星海王星天王星、さらには最近外された冥王星まで手広くウ=ス異本を手広く扱い、それを高い値段で売りさばくアコギな商売をしている銀河ヤクザにはそのような宇宙征服なんぞさせてはいかんからな」

 チャキ、と小刀を構え、会長は萩先輩と相対する。

「悪者、殺すべし!」

「ほざけただの会長の分際でェッ! 許さんぞ虫けら共! じわじわとなぶり殺しにしてくれる!」

 そう言って目にも止まらぬスピードで彼らは戦いを始めた。

 その疾きこと、まさに島を征く風の如し。

「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ!」

「ヨージョジョジョジョジョジョジョジョジョジョジョジョジョジョジョジョ!」

 二人が激しくぶつかればぶつかるほど、戦いの舞台が壊れていく。

「会長! もうだめです! それ以上全力でぶつかってしまっては地球が壊れてしまいます!」

「正太郎! もうやめて! 地球のライフはゼロよ!」

 二人の漢がぶつかり続ける。それでも彼らは止まらない。

「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ!」

「ヨージョジョジョジョジョジョジョジョジョジョジョジョジョジョジョジョ!」

 何故なら、漢達の道はすでに違えているからだ。

 片や、幼女を至上主義とする、『幼女連合』の勇者。

 片や、スラッとしたモデル体型を良しとする『普通』の魔王。

「柊先輩! やめさせましょう! これ以上戦わせたら危険です!」

「いいえ。彼らは止まらないわ。彼らはどちらかが滅ぶまで戦い続ける」

 二人の戦いの衝撃で、家が、山が、海が滅んでいく。さながらそれは旧約聖書のノアの大洪水のよう。

「始まってしまったのね……最終戦争(ハルマゲドン)が。この銀河は、滅んでしまう」

「な、なんだってーっ!? どうにかして止める方法はないんですか?」

「あるにはあるわ。それは」

「それは?」

「それは――――私が脱ぐことよ」

「なんでだ!」

「ここで私が脱げば、少年誌には表沙汰にできない、不都合なシーンができるわ!」

「そう言って暑いから脱ぐだけでしょう! 乗らんぞ! その手には乗らんぞ!」

「離しなさい、ハルちゃん! かくなる上は貴方も脱がすまで!」

「乱心だァ! 柊先輩が乱心だァ!」

 乱心だぁ……乱心だぁ……乱心だぁ……乱心だぁ……


※――――


「いやもう全てがめちゃくちゃだよ!」

 ガバァ、と起き上がり突っ込むハル。

 気づけばすでに朝となっていた。

「あ、あれ? さっきのは……夢?」

 そうだよ。

「夢かぁ……ふぁぁ……夢でよかった……」

 そう言ってハルは頭を掻き、カーテンを開く。

 外では桜が満開になっていた。

 風が吹けば桜吹雪が舞っている。空はどこまでも青かった。

「うーん。いい天気だなぁ……よし、今日も頑張ろっかな」

 そう言ってハルは学校へ行く支度をする。

 キッチンでは小さな女の子と、ツキノワグマが立っていた。

「おや、おはようハル。さっき叫び声がしたけど大丈夫だったかい?」

「あ、ウメばーちゃん。それに金太郎もおはよう」

「おはようごわす、ハルちゃん。朝食を作ったで食べてくれんね?」

「はーい」

 ハルはそう言うと、テーブルについて朝食を食べる。今日はじゃがいもがたくさん入った味噌汁とお漬物、お茶漬けと自家製のたくあんだ。

「いただきまーす」

 そう言ってハルは勢い良く朝食を食べ始める。その間、テレビのニュースや天気予報を流していく。

『四月二十日。今日は絶好のお洗濯日和です。これから一週間は晴れ間が続くでしょう……』

 天気予報がそういうのが聞こえると、金太郎と呼ばれたツキノワグマが、

「晴れん日が続っと。じゃあ布団とか干しちょっても大丈夫やろうか、ウメばあちゃん?」

「そうだねぇ。ハル。お前のとこの布団も干すけどいいかい?」

「あ、うん。お願いね」

「ハルちゃん。生徒会んお仕事はどげんな? 楽しかと?」

「うん。だいぶ慣れてきたよ」

「それは、良かったよお。お前さんが高校に行くって言ったからアタシはびっくりしたよ」

 先程からウメおばあちゃんと言われた女の子はホッとしたように重箱を風呂敷に包み、

「はいこれ。お弁当。生徒会の皆の分もあるからね。仲良く食べなさいよ」

「はーい。じゃ、いってきまーす!」

「ハルちゃん! 今日ん晩御飯はカレーにすっで材料を買うてきやんせ!」

「はーい」と言った後、ハルは高く跳んだ。

 青い空に高く跳んで、街を見下ろす。

「うーん、今日もいい天気だなぁ」

 そのまま街へ降りて、ビルや住宅の屋根をぴょんぴょんと跳んでいく。

「ん?」

 その途中、ハルは見知った顔を見つけた。

「あ! おーい、抄華(しょうか)ちゃーん!」

 と言って歩いていたツインテールの、小学生と見間違うくらい小さい背丈の女子高生――桧木(ひのき)抄華を呼び止める。

「あ、ハルさん。おはようございます」

「おはよー! 今日もいい天気だねえ」

「そうですね」

 そして彼女と一緒に学校へ登校する。

 しばらく「昨日のテレビ番組」や「サバイバルゲームの集まり」についての話で花を咲かせていると、学校へ到着した。

 大多数の生徒がそのまま正面へと進んでいく中、ハルと抄華は別の校舎へと入っていった。

「いやー、それにしても昨日は変な夢を見たよ」

「変な夢、ですか?」

「うん。なんか『最終回迎えたお話が、またリメイクされて戻ってくる』っていう感じの夢」

「そんな、最近のおそ松◯んじゃないんですから」

「いやいや。それにしてもあの夢ひどかったなぁ」

「と、いいますと?」

「だってさ。いろんなもののパクリしてたんだよ。北斗◯拳とかドラゴンボ◯ルとか、もう集英◯に喧嘩売ってるのか! って言わんばかりのオンパレード」

 苦笑いする抄華に対して、ハルはとても真剣に話していた。

「でも、パクリとオマージュって、どう違うんだろうね?」

「うーん、そうですね……パクリっていうのは、明らかに原作を知っていながら『これは最初から自分が考えて書きました!』って言うのがパクリじゃないでしょうか」

「オマージュも似たようなものじゃないの?」

「オマージュは『これはこの原作があるからこそのこの台詞。この場所にはこの台詞をつかうことで、元となったお話に敬意を払おう』っていうものじゃないでしょうか」

「うーん……つまりどういうこと?」

「私もうまくいえませんけど……パクリは悪意を持ってやった行動、オマージュは敬意を払って行う事、ってことじゃないですかね?」

「そんなものかなぁ」

「最近、創作物じゃあそういうの激しいですから。二次創作のガイドラインでも厳しく決められているそうですよ?」

「うわ、怖いなぁ。ガチガチにやっちゃうんだ」

「雫さん辺りがもう頭ひねりそうですね。うまくかぶらないようにしないと、小説のクオリティが下がっちゃうらしいですし」

「作家も大変なんだねえ」

「っと、そろそろですね」

 ガラガラと校舎の一室に入る。

 そこに居たのは上級生三人。

一人は長い黒髪ですらっとした手足の日本美人。

一人はメガネが似合うふわっとした天然パーマの少年。

そして最後は金髪の不良であった。

「おう。おまえら。おはようさん」

「おはようございます、会長!」「おはようです、会長さん」

「おう。それじゃ、始めて行くか! 生徒会をな!」


 ここは、桜ヶ丘高校生徒会。

 様々な嵐渦巻く、波乱万丈驚天動地、奇妙奇天烈奇々怪々なメンバーが織りなす、賑やかで楽しい、普通とはちょっと違う学生達の物語が始まる場所である。


とてつもなくデリケートな問題を扱った気がする……。

あ、どうも。嫁葉です。きちんと生存しているとついでに書いてみました。


何が言いたいのか、っていいますと最近おんなじようなのが溢れてるなぁって思いました。

真新しいのがないのは仕方ないとは思うけど、それでもすでに知ってる作品で「これは◯◯のパクリだ!」「いやこれはオマージュだろ」「パロディじゃね?」って騒ぐ人も居るなぁ、って思ってやってみました。

もちろん、その人達が全員悪気があって騒いでいるというわけではないと私は信じています。

パロディやオマージュが悪いわけではなくって、悪意を持って(無意識の悪意とかは仕方がないのかもしれません。意図してやるのはだめですが・・・)そのやり方をパクるというのは良くないんじゃないかって思い、書きました(伝わってるといいんですが……)。

なんにせよ、書くにしてはみんなで楽しく、笑顔になるものを書きたいなと思います。

これからもたまにちょくちょく出していくつもりですので、皆さんどうぞよろしくお願いします。

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