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弟子と開かずの間【其の二】

■ストーリー

『出海ムネマサ』の熱狂的ファンである華薗梅は、Web作家時代の異世界戦記シリーズの最終巻『晴天の金狼』の結末に納得せず、新作小説を破棄した上で続編を書き下ろすことを彼に強要する。


作家の出海宗雅は、自身のベストセラー「晴天の金狼シリーズ」の最終作の原稿を運ぶ途中、吹雪で交通事故に遭うが、同じくハルドラゴン文庫執筆家の女性・華薗梅に助けられ一命をとりとめる。


年下の先輩作家という彼女から手厚い看病を受ける宗雅だが、実は華薗は「晴天の金狼」の熱烈なファンであった。


しかし、最終作でヒロインが死ぬことを知り激怒した彼女はケガで動けない宗雅を監禁し、ヒロインを生き返らせ、新作を書くように強要する。果たして宗雅は、彼女の元から逃げ出す事ができるのか・・・?


■登場人物

・出海 宗雅(著:出海ムネマサ)

作家。

東京都墨田区生まれの15歳。

紅蒐ちゃん(挿絵:出海 桐紗)という名前を持つ女性がヒロインの異世界戦記バトル小説「晴天の金狼・シリーズ」が代表作。だがシリーズの余りの人気ぶりに新作が書けないことに悩み、アカネを死なせ、作品に終止符を打つことを決意する。


※作中の「晴天の金狼シリーズ」とは

作中では詳細な説明はないが、ヒロインの紅蒐ちゃんにムネマサという恋人未満らしき男がいることと、アカネを巡る恋敵のサワムラという人物がいることが会話からわかる。


・華薗 梅(著:仙住サワムラ)

宗雅を助けた女性。

たまに勘違いされるがペンネームの「仙住サワムラ」は彼女の名前ではなく、

彼女が書いた小説の作家名である。


見た目は着物姿が似合う小綺麗なお嬢さん。

事故に遭った宗雅を送迎車で自分の家まで手配して運ぶなど相当なお金持ち。

元保健委員長で保健室にいたこともあり、応急手当や薬などの知識が非常に豊富。

家には大量の薬や鎮静剤が常備してあり、そのおかげで宗雅は助かったのだが・・・。

夢にあの杭が現れた。とてもハッキリ見えていて、手をのばせば赤錆色のL字に曲がった丸みを、掌でなでることができそうに思われるほどだった。


半ば意識がもどりかけたとき、杭といまの自分の情況とのつながりをみつけていた――掌に流れ込むように、自然に掴み取っていたのだ。感触は金属とは違う。夢に変換された記憶が、何かを教えているのだろうか。感触はたんに、寄せては返すような弾力があるだけである。じっさいは杭の影法師とおなじように、隠れたりまた現れたりはするが、常にそこに存在していた。痛みが石のように重たい濃灰色の汚泥のなか、両足に付きまとうのを感じると、苦痛の悲鳴をおぼえたが、もはや感覚すらしない――依然として痛みがとどまって、またもどってくる気配がしても足から先は無いのだから。しかし杭を触るとひとつでなくふたつあった。円状の杭はふたつ。その楕円をつかんだ二本の手は、お尻の丸みなのだということを、はっきりと知ることになるずっと前に、心のどこかでそれに気づいている部分があった。


それからずいぶん長く経ってから、ようやく僕は、乾いた唾液の涎に糊付けになっていた頬を抓られて、「なにしてるんですか」と、かたわらの女の子に嗄れ声で訊かれた。女の子は本を片手に、ベッドのそばに腰をおろしていた。その本の表紙に書かれた名前は、「出海ムネマサ」と読めた。それが自分の名前だと気付いたが、べつだん驚きはしなかった。


「これが噂に聞くラッキースケベか」彼女の質問に僕は堂々と答えた。「オレの名は出海ムネマサ。オレは"いがいせ(ry――」


「知ってます」と、彼女は言った。「さすが"意外性ナンバーワンのエロ小説家"ですね」


「すみませんでした」彼女はにっこりした。「素直でよろしい」

■漢字の成り立ち


【蒐】


「あかね(アカネ科の蔓性(つるせい)の多年草(複数年にわたって

  生きる植物)。根から赤色の染料(着色に用いる物質)をとる。

  夏から秋にかけてで、目立たない小さな花が咲く。秋には

  黒い果実をつけ、冬にはほとんど地上部は枯れてしまうが、

  春になると根から芽を出し、成長する。」(同意語:茜)(例:芽蒐)


「狩り。春・秋の狩り。」(例:蒐田、蒐猟)


(あつ)める」(例:蒐集)


「隠す」


「数える」


「調べる」


「捜す。求める。」(例:蒐索)

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