首都、墓参り
翌日、電車で首都へ。だいたい6時間くらいの行程だ。
夕方頃到着、相変わらず観光客で賑わっている。さらに今はイースターだから、この国の場合余計に混雑する。
今日はホテルで休もう…
「200コルナだよ」
「ありがとう」
翌日、墓参りの花を買って市内の高台にある墓地へと向かう。
朝から少し雨が降っていたが、傘を指すほどではない。
母の墓の前にいくとちょうど先客が花を供えていた。
父だ。
母の命日にはなるべく来るようにしているらしいが、仕事上難しいようだった。だから、ここでばったり出会すのは珍しい。
「久しぶりだな。元気か」
「父さんこそ。」
父は少し時間があるようで、一緒に昼食をとることになった。
手近な店に入り、パスタを二つ注文し、とりあえずお互いの近況を話す。父とはあまり接する機会がないので幾分話題に困るが…
そうこうするうちに料理が運ばれてきて、話題がサーシャのことになった。
「面白そうな子だね」
父は髭にソースを付けないよう器用に食べながら言った。
「しかし…サーシャ、サーシャか…どこかで聞いたような名前だな…」
「結構有名な画家って言ってたよ。本当かどうか怪しいけど」
「…!その子はひょっとしてとても小さい金髪の女の子か!?」
「ああ、そうだけど…」
「やっぱり!サーシャ!サーシャ・ミクラフか!」
どうやら本当に有名な画家だったらしい。
父によると、芸術家のパーティーで一度会ったことがあるらしい。
若いながら微妙な光や大気の描き方が秀逸で、中央のコンクールや展覧会などでも賞を総なめにするほどだったとか。
賞金なんかも相当の額になったらしい。
ちなみにパーティーの席では彼女の振る舞いは、とてもおしとやかだったそうだ。
「そう言えば美術界から急に姿を消したらしい…んだけど」
「そうか、あの街で制作活動していたのか」
昼食を終え、父と別れてから、近くの美術館に足を運ぶことにした。どうやら彼女の作品が展示されているらしい
確かに彼女の作品は別格だった。素人目にも素晴らしかった。
風景画なのだが、光や大気、空気の描き方が絶妙な切り取り方で、いくつもの表情を見せている
といったらいささか大げさかも知れないが、色彩、色調はどこまでも繊細だった。
(でも、あいつの色の置き方…過程はどうあれ、完成したらこういう風になるものなのかな?)