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見えるもの
後天性色覚異常--
というらしい。
彼女が画家として様々な賞をとり、名実を得て、正に飛ぶ鳥を落とす勢い--
そんな絶頂期に、それは発症した。
初めて目の異常に気づいた時、すぐに中央の大きな病院で検査をしてもらったらしい。
しかし、治療は難しく、徐々に見える色が減り、最後には白黒の世界になってしまうだろう、と医者に告げられたそうだ。
サーシャは描けなくなった。
徐々に、しかし確実に世界から色が失せていく恐怖--
それからほどなくして、彼女は、この街にきた--
「なんで、…なんでわたしなの?」
「なんでわたしから色を奪うの?」
どうすることもできなかった
まるで心に鉛を流しこまれたような--
自分は、どこまでも無力だった…
俺は彼女を宿泊宿まで送り、少し気持ちが落ち着いたところで、今日はもう休むよう寝かしつけた。
サーシャは今は泣き疲れたのもあって眠っている…
どんな夢を見ているのだろう…
そして、その夢には果たして色はあるのだろうか…
サーシャのあどけない、涙のあとの残る寝顔を見ながら、そんなことを考えた…




