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アマグモ計画

作者: 日暮栄光

コメント評価まってます。

「本日は地球観光ツアーにお越しいただき誠にありがとうございます」

 地球観光ガイドの芥川です。そう名乗った男は地球の歴史を語り始めます。


 2XXX年。急激に加速した地球温暖化はついに世界中の海を干上がらせ、ユーリイ・ガガーリンの言った『地球は青かった』はもう通用しない惑星になってしまいました。

 むかし、軌道上のスペースコロニーに地球から移住した子供が言ったそうです。

「ママ、地球は赤かったんだね」

 大人たちはこの子供の言葉をきいてたいへん焦りました。大人たちはこう考えたのです。今の子供たちはこの荒れ果てた荒野しか知らないのだと。

 そこで大人たちはあるプロジェクトを立ち上げました。それがアマグモ計画です。

 このプロジェクトは蜘蛛の遺伝子を操作して、蜘蛛が吐き出すその糸を雨雲にしてしまおうというものでした。

 プロジェクトは難航しました。それはそうですよね、だって蜘蛛が雲をつくるなんて紛らわしいじゃないですか。

 しかし難航したプロジェクトも、ついに終わりのときがきました。

 博士は泣いてよろこびました。それも無理はないでしょう、数十年にわたる努力が報われたのです。さっそく博士は荒れ果てた大地に蜘蛛を放ちました。


 皆さんそれから数年後、地球がどうなったと思います?

 わからないって? それじゃあ教えますからけっして驚かないできいてくださいね。地球は一個の大きなキャンディになってしまったんです。ええ、不服そうな顔をしていますね。それじゃあこれをごらんください。


 わたしは宇宙観光船のカーテンを開け放ちました。すると、どうしたことでしょう。真っ暗な宇宙の真空に大粒のキャンディが浮いているのです。

「ほら、言ったとおりでしょう」

 わたしは得意げに言いました。

 博士が放った蜘蛛は雨蜘蛛ではなく、飴蜘蛛だったのです。放たれた蜘蛛たちは期待を裏切り、雨、ではなく飴、をつくってしまったのです。まったくこれにはびっくりしました。だってアメ違いですもん。でも、こうして地球は宇宙のあらたな名所として宇宙観光ガイドブックに載るくらい有名になったのです。結果よければすべてよしですよね。え、なんでそんなに詳しいのかですって、それは。

「だって、わたしがその博士ですから」

 


【参考文献】

・星新一   「ツキ計画」

・芥川龍之介 「蜘蛛の糸」

・グリム兄弟  グリム童話「ヘンゼルとグレーテル」

・朝霧カフカ 「文豪ストレイドッグス」


読んでいただきありがとうございました。

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