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器用貧乏と魔法

 



 ハルトが特訓を始めて三日目、本日は一日魔法の勉強となっている。


 エスタ・エンパイアには騎士団の他にも魔法師団がある。武器の扱いは騎士団が魔法は魔法師団が教えている。まあ結局どちらの訓練でも両方ともいるのだが。


 なぜなら、彼等にとって勇者達は百年に一人の逸材のである。砂が水を吸うように教えた事を吸収するので、この才能は我等の手で花開かせるのだと躍起になっているからだ。


 てか百年に一人の逸材が一クラス分とか、十年に一人の逸材が毎年出る最近のスポーツ漫画も真っ青である。まさにスーパーサ○ヤ人のバーゲンセール。



 朝食後に生徒達全員が教室に集まった。本日は座学からだ。


「これより、本日の訓練を始める」


 魔法の訓練を取り仕切るのは魔法師団長のトウルさん。歳はアレクさんと変わらないように見える。


「まずは復習からだ。魔法とは十二の属性に別れており、基本的には自分に適性の無い属性の魔法は使えない。魔法を発動させるには詠唱が必要であり、上級者には無詠唱での発動が可能な者もいるが詠唱するのと比べると威力が大分落ちる」


 トウルは一旦回りを見回し、問題が無い様子なので続ける。


「また、魔法を発動させるには魔方陣が必須だな。詠唱をして魔力を練り、それを元に魔方陣を構築する。そして発動だ。ここまでは大丈夫か?」


 生徒達が頷くのを確認して講義を続ける。


 その後はお昼まで講義が続き、午後から実技の訓練が始まる。


 生徒達はグラウンドに集まって、訓練の開始時間まで休憩している。


 学校の勉強では大半の生徒が嫌々授業を受けているが、どの生徒も座学をきちんと受けている。ステータスやスキルはゲームみたいだから勉強という感じがしないのだろうし、魔法は誰だって一度は使ってみたいと思うだろう。それに分野は違えど皆その道の逸材だ。自分の才能が評価されるのは嬉しい。


 だが、一人だけそうとは言えない者もいるが。


 そう、ハルトだ。一人だけハズレの称号でまわりの反応も冷たい。アレクやトウルや一部の兵士は他の生徒と変わりなく接してくれるが、それ以外の兵士は表だっては何も言わないが裏ではお荷物扱いである。


 そしてハルトはそれを感じとっている。露骨とまではいかないが態度が違うので丸わかりだ。


「ハルト大丈夫か?」


 木陰でハルトが休んでいると大河がやって来た。

 大概の生徒はハルトを気にも止めないが、大河達ハルトと親しい生徒はとても心配している。


「ああ、別に大丈夫だよ」


 ハルトはなんでもないように言っているが、内心はどうなのかはわからず大河は取りあえず今はハルトから言ってくるのを待つことにした。


 それからすぐに休憩時間が終わり、訓練が再開した。


「それでは午後の訓練を始める。今回は一通り復習した後、各自鍛練したい属性を訓練するように。各属性ごとのスペシャリストを用意しているので楽しみにしていろ。なおどの属性を訓練するのか相談したい場合は受け付けるので私の所に来るように」

「「「はい!!」」」

「良し。ではレイラ、復習として魔法であの的を破壊してみろ」

「は、はい!」

「属性や魔法の種類は問わない」

「わかりました」


 十五メートル程離れた所に的として藁人形が置かれた。


 レイラの称号は魔術師と治癒師で、治癒の実力ならクラス一であり、魔法の総合的な実力もクラスで五指に入る。


 ハルトは容姿端麗で成績優秀で治癒能力もあるとか漫画やラノベのヒロインみたいだなと思っている。


 レイラの属性は火、水、風、光、回復、生体、結界、振動と多く、攻撃には特に火属性の魔法を使っている。


 レイラが藁人形に向かって杖を構える。


「理を越えし力よ、我が内なる魔力を糧に燃え盛る炎の弾丸で敵を燃やせ 〝炎弾〟!」


 バスケットボールサイズの火球が一直線に飛んでいって、藁人形を燃やし尽くした。


「うむ、素晴らしい。詠唱の速度、魔力の練り方、魔方陣の構築の速度、どれをとっても文句なしの合格点だ」

「あ、ありがとうございます」

「このように、みんなもまずは無駄なくスムーズに魔法を発動できるようになるのを目標にしよう。前衛の者も魔法なんてと思うかもしれないが使えるようになれば戦闘の幅も広がる。なので是非頑張ってくれ。では各自、訓練開始!!」


 生徒達が各々鍛練したい属性のスペシャリストの元に集まって訓練が始まった。






 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~





 夕方になった頃。


「では本日の訓練はこれまで、自主練をするものはこのまま始めてかまわん。では解散!!」


 トウルの号令で本日の訓練が終了した。

 生徒達はそのまま魔法の訓練をする者、武器の訓練をする者、一旦休憩する者など各自思い思いに行動を始めた。


 ハルトは雷属性の訓練をしていたので、自主練では何の属性を訓練しようかなーと考えていると大河達が集まって来た。


「ハルトー、一緒に自主練しようぜー」

「おう」

「日向くん、私とレイラも一緒にいいかしら?」

「え? 別にいいけど、俺とやっても橘さん達にはあんまり得は無いよ?」

「あら、そんなことないわよ。ね、レイラ?」

「え!? う、うん、そうだよ! すごくためになるよ!」

「そ、そうか? なら別にいいんだけど」


 ハルトはなんだかなーと思いつつも、自分を気にしてくれる友人達に心の中で感謝する。


「ねえ、まずは日向くんの雷魔法を見せてくれない? 私も雷属性は持っているけどあまり鍛練してないから」

「おっけー、わかった」


「理を越えし力よ、我が内なる魔力を糧に迸る稲妻をもって敵を穿て 〝雷槍〟」


 一メートル程の雷の槍が凄まじいスピードで岩に突き刺さり、岩が爆散した。


「やっぱり速いわね。全属性の中で単純な速度なら最速って言われてるだけはあるわね」

「てかハルト、普通に魔法使えてるな、詠唱も魔方陣も特に問題無かったと思うけど」


 凜はふむ、ふむと納得して、大河はハルトが普通に魔法を使えてる事に喜んでいる。


「うーん、雷属性は一番鍛練してるから攻撃魔法だったら問題無く使えるんだけど、防御魔法になると途端に魔方陣の構築速度が落ちるんだよ。他の属性はあまり鍛練してないからスムーズに発動できないしね」

「そうなのか、でも防御魔法なら任せろ! 俺の得意分野だからな」


 大河の称号の鉄壁には防御魔法に限り、全ての属性の魔法が使えるようになる効果がある。まさにどの属性にも死角なしの鉄壁の守りである。


「なら風属性は私に任せて。一番鍛練してるからそこそこ自信あるわよ」

「じゃあ、私は回復属性だね。回復魔法なら誰にも負けないよ!」


 凜の称号は刀術師で、特に魔法に効果のある称号では無いが風属性の適性が高い。

 レイラは言わずもがなである。


「い、いや、みんなに悪いよ。態々俺の為になんか」

「そんなことないぞ。人に教えると自分の復習になるし、教える時に新しい発見もあるかもしれないしな」

「そうだよ、日向くん」

「そうよ、そんなこと気にしないでさっさと始めるわよ!」

「わかった、ありがとう」


 ハルト達が和気あいあいと鍛練をする中、ハルト達を睨み付ける者達がいた。


「ちっ、調子に乗るなよ…」


 そう遠くない未来に絶望が待っていることに、このときはまだ誰も気づいていなかった。







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