表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
67/67

器用貧乏とレオ2

やっと繁忙期が終わった……

 



「おやー? あなたはどなたですかぁー?」


 不思議そうなピエロの言葉には答えずに、ハルトは辺りに広がる惨状を眺める。

 一通り眺めたハルトは、ピエロの持つ剣に目を向けた。


「その剣が気配の元か」


 ピエロの持つ剣は禍々しい邪気を放っており、とても薄気味悪い。ダンジョンに向かう途中だったハルトは、突如邪悪な気配を感じて急行したのだ。そのため、他のメンバーは置き去りにしてきたので一人きりだ。


「あなた中々強そうですねえー」


 ゆらゆらと体を揺らしていたピエロは、いきなりハルトに斬り掛かった。


「!」


 虚を突かれたハルトだったが、まわりの惨状からある程度予測はしていたので咄嗟に剣を抜いて受け止める。


 ギィンン!!


 攻撃自体は受けきることができたが、ゴブリンエリートソードが欠けてしまった。店売りの普及品に比べて遥かに高性能ではあるが、流石にバルムンクの相手は荷が重かったようだ。


「あれー? 剣ごと一刀両断するつもりでしたが、私のバルムンクを受け止めるとはやりますねー」

「ちっ!」


 ハルトは舌打ち一つすると前蹴りを放ち、その反動で距離を取った。蹴り自体はしっかりとブロックされてダメージは与えられなかった。


「バルムンクだと? 本物か?」

「失礼ですねえー。本物ですよぅー」


 ハルトの問いに口を尖らせたピエロは見せつけるように剣をブンブン振るう。

 適当に振るっただけで地面に亀裂が生まれる。凄まじい威力だ。


「本物ね……」


 欠けた剣を眺めたハルトは、ずっと疑問に思っていたこと口に出した。


「どうしてバルムンクがあるんだろうな」

「はあー?」


 そう、なぜこの世界に、ウエイストにバルムンクがあるのか。バルムンクは『ニーベルンゲンの歌』という叙事詩に登場するジークフリートという英雄の愛剣だ。つまり、地球の物語に出てくる剣なのだ。

 バルムンクだけではない。ハルトのグラムや守のクラウ・ソラス、拓真のレーヴァテインも地球の物語に登場する武器だ。それなのにウエイストにも存在する。今まで流していたが、よく考えればおかしい。


(この世界と地球は何らかの関わりがあるのか?)


 考えても答えは出ないが、いつか必ず答えを見つけることをハルトは決めた。もしかしたら地球に帰る手掛かりになるかもしれないと。


「おいピエロ野郎、お前名前は? ここで何をしている?」


 とりあえず情報を聞き出そうと会話を続けるハルト。


「私の名前ですかー? そうですねー。ジークフリートとでも名乗りますかねえー」


 体をゆらゆら揺らしながら答えたピエロことジークフリート。どう見ても偽名である。まあ、隠す気は全く無いうようだが。


「あとー私がここで何をしているかですがー。偶々見つけた彼らをぶち殺していただけですよー」


 本当かどうかは知らないが、辺りには死体が転がっているのでとりあえずハルトは納得した。


「今度は私の番ですねー。あなたのお名前はなんですかー?」


 今度はこちらの番とばかりにジークフリートが質問する。しかし、ハルトはへっと嫌な面をすると


「敵にわざわざ名前を教えるわけねえだろ」


 と言い放った。自分は聞いといてこれである。外道だ。


「えー。私には聞いといてそれはないでしょうー。性格わるいですねえー」


 ハルトからすれば、偽名臭い奴にわざわざ名前を教えるかという心境だ。

 とかなんとかやり取りをしているとクリスとモームが走ってきた。どうやら慌ててハルトを追いかけてきたらしい。


「ハル!」

「ハルトさん!」


 ハルトに置いていかれたクリスとモームが慌てた様子で駆け寄って来る。

 普通ならば主人思いの良い奴隷なのだが、今回は不味い。


「なるほどー。ハルトさんと言うんですねー。覚えましたよー」


 そう、結局ジークフリートに名前がバレてしまったのだ。

 般若のような表情で振り返ったハルトに、クリスとモームは足を止めた。


「お前ら後で覚えとけよ」


 凄まじく理不尽だが、怒ったハルトは恐ろしい。二人はびっくーんと硬直した。


「で? 今さらだけどここで手打ちにする気はないか?」

「ないですねー。私のバルムンクが血を吸いたがってますからねー」

「バルムンク!?」


 バルムンクの名を聞いたクリスが驚いたように叫ぶ。


「あれが滅竜大剣バルムンク……」


 クリスが興味深そうに凝視する一方で、モームは不思議そうに首を傾げている。


「なんですか? その滅竜大剣って?」

「高位の聖剣魔剣には、その剣の性能に見合った二つ名があるの。バルムンクは竜種に特効があるから滅竜大剣」


 その通り、ウエイストでは二つ名付きの武具は最上級の武具で冒険者や騎士など戦いに身を置く者にとっては憧れの的だ。また、剣以外にも槍だの斧だのにも二つ名は存在する。

 ちなみにハルトが今までに目にした二つ名付き武具は守のクラウ・ソラスで光麗輝剣、拓真のレーヴァテインで紅蓮焔刃の二つとハルト自身が持つグラムである。


「バルムンクは、頑強な竜の鱗すら容易く斬り裂くほどの切れ味があるという。生半可な武器では碌に打ち合うことすらできない」

「それって不味くないですか!?」


 そう、珍しくハルトが勝負を避けようとしたのはバルムンクと打ち合える武器がグラムしかないからだ。じゃあ、グラム使えと言われてしまうかもしれないが、グラムはあまり使いたくない理由がある。ハルトは能力に見合った武具が少ないのが弱点かもしれない。


「そうでもないさ」


 ハルトは不敵に笑うは、ゴブリンエリートソードを鞘に戻してストレージから別の片手剣を取り出した。どこにでもある量産品である。


「そんなナマクラでバルムンクの相手をできるわけがー」

「シッ」


 取り出した片手剣を見て馬鹿にしていたジークフリートの言葉を遮って、ハルトは斬り掛かった。


 キィン


 当然ハルトの剣が打ち負けて、バターのように刀身を斬り落とされた。

 ジークフリートはニヤリと笑っているが、ハルトは気にせず剣を投げ捨ててバックステップ。同時に腰のベルトからスローイングピックを抜き取り投擲する。


 ヒュン!


 空気を斬り裂いて、両手から放たれた都合六本のピックがジークフリートに直撃した。

 しかし、ジークフリートは何の痛痒も見せない。効いてないようだ。


「こんなものは聞かないですねー」


 ハルトは、無言で新たな片手剣をストレージから取り出す。先程と同じく量産品だ。


「ですからそんなものではー」


 再び、言葉を遮って斬り掛かるハルト。嘆息したジークフリートは、剣すら構えずに棒立ちになった。


 ボキン!


 ジークフリートの肩に当たった片手剣は呆気なく折れた。スローイングピックを防いだことからもかなり防御力が高いと思われる。『金剛』を使った可能性もあるが、ハルトの攻撃を連続で防いでいることからクーリングタイムの関係上ないだろう。


「だから無駄だと言ってるじゃー」

「これなら?」


 突如、ジークフリートの前に魔法陣が出現した。


「なに!?」


 雷魔法〝雷禍〟がジークフリートを飲み込む。


「かはっ!」


 ハルトの本職の魔法使い顔負けの魔法を食らったジークフリートは踏鞴踏んだ。


「この!」


 動揺したジークフリートが横薙ぎの斬撃を繰り出す。ハルトは深追いすることなく、後退して避けた。


「無詠唱で魔法ですかー? あなた剣士じゃないんですかー?」

「一言も剣士だとは言ってないぞ。そして、お前の弱点もわかった」


 僅かに火傷を負ったジークフリートを見つめながら、ハルトは剣を捨て新たに二本片手剣を取り出した。


「まあ、わかっちゃいましたよねー。そうです、私は魔法がー」

「違うな。お前の弱点は魔法じゃない」

「なにを言っているんですかー?」

「じゃあ、その胸の傷はどうしたんだ? それ、切り傷だろ?」

「……」


 そう、ジークフリートの胸にはハルトと戦う前から傷があったのだ。それも、剣でつけられた傷が。


「お前の弱点はおそらく」


 神速で踏み込んでハルトが二刀を振るう。

 だが、ジークフリートもしっかりと反応しており、剣は防がれ刀身を斬り落とされた。

 しかし、ハルトは予定通りとばかりに流れるような動きで、刀身を斬り落とされた剣を放り捨てると、もう一本の剣で斬り掛かる。剣はスキルとは違う輝きを宿している。


「くうっ!」


 今までで一番余裕の無い声を出したジークフリートが全力でバックステップをした。


「チッ、浅いか」


 不機嫌そうに舌打ちをしたハルトは片手剣を構え直す。ジークフリートの胸には新たな切り傷が増えていた。


「お前の弱点は魔力だろ。魔法でもダメージは与えられるが、魔力を込めた武器でもダメージは与えられるのがその証拠」

「……正解ですよぅー。私の防御能力は魔力の伴った攻撃には効果がないんですよー」


 口調そのものは朗らかだが、ジークフリートの目は据わっている。どうやら秘密を知ったハルトたちを生きて返す気は無いようだ。


「さて」


 ハルトがチラッと手に持っている片手剣に目をやる。

 武器に魔力を込めるというのは高等技術だ。守や拓真の保有するアビリティの『M・V・S』がそれにあたる能力だが、ハルトは保有していない。なのになぜハルトができたこと言うと、莫大な魔力量に物を言わせ強引に魔力を流したからだ。言うなればなんちゃってM・V・Sだ。この方法は魔力の消費が多いのと武器に大きな負担が掛かるのが問題である。事実、ハルトの剣は今にも砕けてしまいそうなほどボロボロだ。


 ハルトが残りの武器と刻印魔法で倒す算段を立てていると、新たな乱入者たちが現れた。


「ちょっと! あんたたち何やってんの!?」


 騒々しい声と共にやって来たのはアフェクたちだ。煩いのはリーアである。


「増援ですかー」


 ため息を吐いたジークフリートは懐から小さい玉を取り出すと、地面に叩き付けた。

 ボフンと煙幕が撒き散らされ、ジークフリートの姿が見えなくなる。


「くそ!」


 慌てて追いかけようとするハルトだったが、すでにジークフリートの気配はわからなくなってしまった。


「今回はおとなしく引いておきますよー。いずれまたお会いしましょうー」


 煙幕が晴れると、そこにはジークフリートの影も形もなかった。



お知らせ

本作の改訂版を書くことにしました。理由といしては、ここああすればよかった、こうすればよかったと思うところが多々あったので修正をいれるよりはいっそ新たに書くことにしました。一応、大きな流れは変えない予定ですがどうなるかはわかりません。

一旦全て消してから投稿するか、新たに別に作るかは未定です。なにせ、まだ全く書いてないので(笑)

しばらくの間は、このまま細々と投稿を続けるのでよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ