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器用貧乏のお礼参り2

大分時間が空いてしまいました。すいません。新生活に慣れなくて執筆する時間が取れませんでした。

わ、私は悪くないんです。仕事が悪いんです。労働は悪い文明。早く誰かフォトン・レイしてくれませんかね(笑)

 


「ククク、ようやくだ。ようやく手に入れたぞ」


 七光りのバカ息子ことイウザは、自室で静かに嗤っていた。

 手に持っているのは怪しげな巻物。呪殺に用いられる巻物と言われれば信じてしまうくらい禍々しい。


「おめでとうございます、イウザ様、遂に念願の奴隷魔法の秘伝書を手に入れましたな!」

「かなり高い金は払ったがな」


 イウザは傍に控えるジャロに悪態をつくと、機嫌良さげに秘伝書を眺めた。


「まあ、金はいい。奴隷魔法さえあれば、亜人や獣人を好き勝手に奴隷に出来る。そうだ! あのハルトとか言うクソガキの奴隷のエルフを手に入れよう」

「わざわざ奴隷魔法を使わなくとも、あのガキを殺せばエルフは手に入りますが?」

「あいつの目の前で奪ってやるのがいいのではないか」


 ニタリとイウザが気色の悪い笑みを浮かべる。


「いいですな。私も部下たちとかわいがってやりましょう」

「ククク、お主も悪よのう」

「いえいえ、イウザ様程では」


 イウザとジャロの典型的なやり取りを見ている者が一人。ハルトだ。


(俺はご老公ではないんだけどな)


 ハルトはイウザとジャロがゲスが極まっている話しをしているのを確認すると、一旦隠れている天井裏から離れた。


 空き部屋に待機していたクリスとモームと合流したハルトは真顔で(のたま)った。


「先に取り巻きから潰す。遠慮容赦なく殺っていい。屋敷で見つけた金目の物も頂戴するぞ」


 完全に強盗殺人犯の台詞である。


「金目の物の回収は後でいい?」

「……」


 クリスは特に気にせずお金の心配をしているが、モームは黙り込んでいる。


「モーム。辛いならやらなくてもいいんだぞ?」


 ハルトが最終確認とばかりに話しかけた。


「大丈夫です。やれます」


 モームは深呼吸を一つすると、決然とした表情で返事をした。

 ハルトはこれ以上は何も言うまいと頷くと、ストレージから屋敷の見取り図を取り出した。この見取り図は、毎晩忍び込んでいたハルトが自分で調べて書いたものだ。見取り図には隠し部屋から隠し通路まで全て網羅されていて死角は無い。


「二手に分かれる」


 屋敷は五階建てで、更に地下室まである。大小様々な部屋は百室以上あり、かなり広い。纏まって行動するのは効率が悪い。


「クリスは西側から、俺とモームは東側からだ」


 現在ハルトたちがいるのは一階中央にある倉庫部屋。そして、イウザがいるのは五階。バカと煙はなんとやらである。


「そして、この部屋で合流して五階に向かう」


 四階のとある部屋を示したハルトは見取り図の予備をクリスに渡すと移動を開始した。




 クリスと別れたハルトとモームは、一階の東の端に着いた。

 一階には調理室や食堂があるため、部屋数事態は多くない。ただ、警備の人間が一番多いため注意が必要だ。

 しかし、ハルトの偵察の結果、この屋敷の人間は自分たちが襲撃されるとは微塵も思っていなく、真面目に警備していないので穴だらけであると判明した。


 東端の部屋の前まで来たハルトは、少しだけドアを開けて中を覗いた。

 中では数人の男たちが談笑している。ここは警備兵の休憩所なのだ。


(五人か。ちょっと多いな)


 ただ殺すだけなら問題無い人数だが、騒がれずに殺すにはちょっと多い人数だ。

 どうしようかとハルトが思案していると、一人の男が立ち上がった。


「ちょっくら便所行ってくるわ」

「あ、俺も行くわ」


 二人の男がドアに向かってくる。

 ハルトは慌てずドアから離れると、身を隠した。そして、部屋から出て来た男たちについて行く。もちろんモームも一緒だ。


 トイレに男たちが入ると、ハルトたちは中には入らず廊下で待ち構える。


「今日も暇だなー」

「早く酒が飲みてえな」


 男たちが用を足して出てくると、ハルトとモームが音も無く襲い掛かった。


「ふっ!」

「はっ!」


 ハルトの短剣が喉を切り裂き、モームの手斧が頭蓋を砕く。

 男達は悲鳴すら上げられずに崩れ落ちた。


 ハルトは男たちの死体をトイレの個室に押し込むと、先程の部屋に向かった。


「モーム平気か?」


 向かいながらハルトが聞くが、モームは少し青い顔をしながらも


「大丈夫です」


 と気丈に答える。

 先程の部屋の前に戻ると、残っていた男たちは変わらず呑気に談笑を続けていた。


「ははは。イウザ様が奴隷魔法を手に入れたんだってな」

「ああ、明日我々の前で習得するところを見せてくれるってよ」

「これで、これからは女に困んねえな」

「違いねえ。早くおこぼれにあやかりたいぜ」

「亜人や獣人の女で遊ぶのは楽しいからなぁ」


 実にゲスい会話だ。上司が上司なら部下も部下だ。

 ハルトはモームに合図をすると、部屋に入った。

 ハルトは部屋に入ると同時にスローイングナイフを投擲。笑っていた男の眉間に突き立った。

 残りの二人の男が異変に気がついた時には、ハルトが男たちに肉薄していた。


「っ!」


 何かを言おうとしていた男は、口を開いたところでハルトの短剣が喉に突き刺さって言葉にならなかった。

 ハルトが振り向くと、最後の一人の男は脳漿を撒き散らしながら頭を爆ぜさせていた。傍らには血を滴らせる手斧を持つモーム。

 さっきまで青い顔していたモームだが、今は凍えるような冷たい眼差しをしている。


「そうでした。ここにいる者たちは害虫でした。人ではありません」


 先程の男たちの会話が僅かに残っていたモームの躊躇する心を打ち壊したらしい。


「じゃあ、次だ」


 ハルトは躊躇無く人を殺したモームには何も言葉を掛けず、淡々と次の獲物を探し始めた。



 その後も必殺仕事人よろしく暗殺を続けたハルトとモームは無事に四階に到着した。合流ポイントまであと少しだ。


 パタン


 ハルトの目の前の扉が開いて、中から使用人が出て来た。人数は二人。

 索敵スキルで予め分かっていたハルトは、待ち構えて襲い掛かった。

 ブスリ。ハルトの短剣が使用人の喉に突き刺さる。ここに来るまでに幾度となく繰り返した動きだ。今回も見事に悲鳴一つ上げさせることなく対象を殺した。そこに慈悲は無い。ハルトはこの世界(ウエイスト)人間(ヒューマン)に容赦などしない。


 ブシャッ


 もう一人の使用人の脳漿が飛び散った。モームによる攻撃だ。狭い屋内では使い辛いだろうと思い、武器は柄の短い片手斧に変更している。一応片手斧のPSは習得している為、ある程度は使いこなせるが、本来の主武装である両手斧とは比べるべくもない。しかし、三流の傭兵や使用人を不意打ちするのには十分だ。


 この屋敷にいる人間は全てイウザに加担している。予めハルトからそう聞かされていても殺すのを躊躇していたモームだったが、実際に見て聞いた結果、躊躇する心は微塵も残らなかった。自分を甚振っていた連中が屋敷にいた一部だけという儚い幻想は無残にも砕け散ったからだ。そもそも誰も助けてくれなかった時点で期待するのもどうかとは思うが。


「合流ポイントだ」


 死体を部屋に隠したハルトとモームは合流ポイントである部屋にたどり着いた。


「クリスさんはまだ来ていないようですね」


 部屋を見渡したモームが呟く。

 ハルトが「ああ」と答えようとした瞬間、ぬうっとモームの後ろに人影が現れた。


「残念。もういるよ」


 揉み揉み。突如現れたクリスはモームの胸を揉みしだいた。


「モーー!!」


 モームは驚いて振り解こうとするが、びくともしない。揉み揉み。一通り揉んで満足したのか、クリスは呆気なくモームを解放した。


「ど、どこから湧いて出たんですか!?」

「人を害虫みたいに言わないで。隠蔽スキルを使ってたに決まってるでしょ。索敵スキルが無いモームが気づく訳ないじゃない。ねえ、ハル?」


 クリスとモームのキャッキャ、ウフフをいいぞ、もっとやれ! と見ていたハルトは急に話を振られて慌てた。


「あ、ああ。そうだな」


 若干上擦ってしまったハルトだったが、モームは幸い気づかなかった。


「流石です、ハルトさん! ハルトさんは気づいてたんですね!」

「ま、まあな」


 嘘である。クリスの隠蔽スキルはハルトの索敵スキルよりも高い。ハルトでは本気で隠れたクリスを探すのは至難の業なのだ。

 クリスは何も言わずハルトを見ており、ハルトは変な汗が止まらない。


「ていうか、こんなに騒いでバレたらどうするんだ」


 今さらながら辺りを警戒するハルト。いいぞ、もっとやれじゃねーよ。

 それに対してクリスは肩を竦めて


「もうこの屋敷には生きているのは、私たちを除けばイウザとジャロしかいない。だから平気」


 とサラッと言い放った。

 ちなみに索敵スキルもハルトよりクリスの方が高い。ハルトの存在価値が皆無である。


「じゃあ、お礼参りといきますか」


 ハルトはモームでもドン引きするような悪い笑みを浮かべた。




600万PV突破!

本当にありがとうございます。次の更新はなるべく早めに……。CCCのイベントに夢中なってさぼっていなければ来週までには……。がんばります。

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