表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
48/67

器用貧乏と再びの悪魔2

遅くなりました。エコプロに行ったら風邪をもらって寝込んでました。

 



「馬鹿な! 能力は封じたはず」


 ブルタールが狼狽えている。


「そういやこれってどれくらいもつの?」


 ハルトは気にせずマイペースにアゲインストに問い掛ける。


「光の巨人の活動時間くらいだな」

「三分かよっ! てかなぜそのネタを知っている」

「まあ、それは置いておけ。時間が無いぞ」


 話している間にもどんどんタイムリミットが迫る。ハルトはストレージからコートオブサタンを取り出して羽織るとアゲインスト目掛けて飛び出した。


 クリスとブルタールの間に入ると、グラムを振るってブルタールを追い払う。


「ご主人様! お体は大丈夫ですか!?」

「ん? まあ死にかけたけど大丈夫だ」


 クリスがハルトに血相変えて駆け寄ってきた。クリスのミスリルの防具は傷だらけで、防具で防げないところからは血も流れている。クリスの再生能力もエストックの能力には効果が無いようだ。


(防具買っといてよかった。無かったら致命傷もらってたんじゃないか?)


 ハルトはこっそり安堵すると、ストレージから大剣を取り出した。ヒュージラプトルからのドロップアイテムだ。


「こいつを使え。そいつよりは強力だ」

「はい」


 クリスが使っていたゴブリンエリートソードはボロボロになっていた。


「悪いが時間が無いから二人がかりでさっさと倒すぞ!」

「はい!」


 ハルトはグラムを肩に担ぐと、アゲインストに向かって飛び込みグラムを横に振り抜く。

 アゲインストの身長はハルトより頭一つ大きいくらいなので、これは無視出来ず大きく避ける。


「その剣はグラムですね! なぜあなたがそれを持っているいるのです!?」

「簡単な話だ。我がくれてやったのよ」

「その声は!?」


 アゲインストが勝手にブルタールに答えている。ハルトは武器が喋るのって嫌だなーって顔をしている。


「貴様裏切ったな! そうか封印を破ったのも貴様だなアゲインスト!」


 ブルタールが憤怒の表情で突きを放つ。エストックは左肩に当たるがコートに弾かれた。

 コートなのに金属音とはどういうことだ。


「なに!?」

「我のドロップアイテムだぞ。そんじょそこらの物と一緒にしてもらっては困るな」


 お前がそれを言うのか。


「気が散るから黙ってろ!」


 ハルトがグラムをブンブン振り回す。自分と同じくらいの大きさだが木の棒かというほど軽々と振り回している。いやー実に人間を辞めている。


「おらっ!」


 ガキィィィン!!


 ハルトとブルタールが鍔迫り合いになる。エストックで鍔迫り合いとは無茶な。

 案の定ブルタールは押し負けている。


「むうぅぅぅ。上級悪魔である私をパワーで上回るだと!?」


 そもそもハルトは曲がりなりにもアゲインストとどつき合いが出来ていたのだ。あの時よりレベルもスキルも上がっているのだからアゲインストよりフィジカル弱そうなブルタールが力比べで勝てるはずがない。


「くそっ! この化け物め!」


 ブルタールが跳んで下がる。だが後ろにはクリスが待ち構えていた。


「はあぁぁーー!!」


 クリスが横凪ぎに振るった大剣がブルタールの脇腹を切り裂いた。


「ぐぅ! この薄汚い奴隷めが」


 線の細いエルフが大剣を振り回すのはかなり違和感がある。あと仮面が剥がれてきたのかブルタールの口調が乱暴になってきた。


「ここで決める!」


 ハルトが勝負に出た。制限時間は残り一分を切っている。光の巨人ならカラー○イマーが点滅しているところだ。


 ハルトは左右の腕当てと左右のブーツとインナーとブレストプレートに刻まれた刻印を起動させる。“豪刻〟“尢閃〟“天冑〟が二つずつ発動した。

 ただでさえ化け物じみていた身体能力が跳ね上がった。最早悪魔じみてると言うべきか。……いや、悪魔より身体能力は上か。


「おお!」


 グラムがキャロット・オレンジに光る。

 両手剣AS『カルテットセイバー』。四連撃が全て決まる。

 ブルタールは血飛沫撒き散らしながら吹っ飛んだ。


「理を越えし力よ、我が内なる魔力を糧に迸る稲妻をもって敵を穿て “雷槍〟!!」


 クリスの放った追撃の魔法が倒れているブルタールに追い討ちをかける。


「ガァッ!」


 体から雷の槍を生やしたブルタールが起き上がる。心無しかよろよろしている。


「これで終わりだ!!」


 ハルトが大上段に剣を構えた。珍しく力が入っているようで力んでいる。焦っているのだ。


 ブォン!


 ハルトが剣を降り下ろす前に足元の大気が震えた。

 ブルタールのつま先から浅黒い刃が生まれていた。


「ハァッ!」


 下から蹴り上げるような斬撃がハルトの胸を切り裂いた。どうやら魔力で出来た剣のようだ。


「ぐぅ!」


(くそっ、こんな隠し玉を! まずい時間が……)


 たたら踏んだハルトがなんとか踏み留まったときには恐れていたことが現実になった。


「時間切れだ」


 無情にも時間が過ぎ、カースフォルムが解けた。身体能力が大幅にダウンする。


「ちょっ、延長だ、延長!」

「無理」


 ブルタールはハルトの動きが止まった隙に後ろに跳んで下がって距離を取る。今度はクリスを警戒するのも忘れない。


「フフフ。どうやらもう呪いの力は使えないようですね」

「うっせえ。お前だってボロボロだろうが。あとはこのまま倒しきるだけだ」


 辛うじて胸の傷は治っていたのでハルトは無傷だ。それに対してブルタールは満身創痍、一見ハルトが有利そうだ。ただ素のスペックでは完全に負けているのでけっこうヤバイ。


「ハァッ!」


 突きからの踊るような連続蹴りがハルトを襲う。クルクルと独楽のように回転しているのでつま先の剣が非常に危険だ。

 ハルトはグラムの腹でガードする。防ぐことは出来たが速さでは完全に上回られた。


 ブルタールは嫌味ったらしくニヤリとすると、エストックを引き絞った。エストックがカーディナルレッドに光る。

 細剣AS『コンティニュネーションスラスト』。八連撃がハルトに迫る。


 ハルトは助けに入ろうとしていたクリスにアイコンタクトを送るとどっしりと構えた。


「うおおーー!!」


 グラムの腹に手を添えて盾のようブルタールに向ける。グラムが琥珀色アンバーに光る。

 武器防御AS『ウェポンガード』。武器の耐久が短い間だけ上昇する。

 そして、さらに『金剛』を発動させる。


 ガキィィィン!!


 全力で防御した結果、全ての攻撃をノーダメージで防ぎきった。

 しかし、続けざまに放たれたつま先による斬り上げでグラムが手から離れた。


「くっ」

「ハァー、ハッハァッ!!」


 好機とばかりにブルタールが突きを放つ。エストックはワインレッドに光る。

 細剣AS『ヘビースラスト』。超威力の単発突きだ。

 グラムを失ったハルトに防ぐすべはない。コートによる防御も間に合わないし、流石に貫通しそうな威力だ。


 キンッ!!


 しかし、必殺の輝きを宿した突きはハルトの体を貫くことはなかった。

 ハルトの表情がニヤリと歪む。本物の悪魔よりよっぽど悪魔らしい表情である。


 エストックからハルトを守ったのはハルトの左手に握られている短剣だ。短剣の刃は白銀色ホワイトシルバーの光を灯らせていたがすぐに消えた。


「なにっ……」


 ハルトが右腕を畳んで脇に構えると手がオールドゴールドに輝いた。そして、そのまま絶句しているブルタールの腹に掌底をお見舞いした。

 体術AS『虎閃』。捻り込むように放たれた掌底突きがブルタールにめり込む。


「ぐふっ」


 怯んだブルタールに回し蹴りがプレゼントされた。ハルトの右足はセルリアンブルーに光っており、ただの蹴りとは一戦を画くすのが見てとれた。

 体術AS『貪狼』。超速の回し蹴りがブルタールを蹴り飛ばす。


「がはっ」


 ブルタールは吐血して片膝を着いた。

『貪狼』は北斗七星の星の中の一つの名前で、他の北斗七星の星の名前の技も存在する。どれも強力な体術スキルの技だ。ちなみに一番早く習得出来る『貪狼』ですら体術スキルの熟練度が400にならなければ習得出来ない。


「これは効いただろ」

「……軽いですねぇ」


 ブルタールはすくっと立ち上がった。


「先ほどまでのあなたがあの技を放っていたら不味かったですが、今のあなたの技では足りませんねえ」

「なら試してみるか?」


 戦いは最終局面に移行した。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ