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勇者達のダンジョン攻略1

章タイトルつけてみました。

元ネタは機動戦士です。

転移したら器用貧乏だった件と迷ったのですがどっちが良かったですかね(笑)

 



 夜が明けてミーティングの時間が近づくと続々と生徒達が集まって来た。

 何処と無く全員が眠そうな顔をしているのは昨日の話を聞いて、色々考えていたからだろうか。


 その中に大河と達也がいる。二人はクラスメイトとは離れて座っており、クラスメイト達も遠巻きしている。理由は昨日の事で近寄り難いのと、二人の目が鋭くてクラスメイト達がびびっているからだ。二人の目が鋭いのは単に寝不足なだけだったりする。


 そうこうしている間にミーティングが始まった。

 話すのはアレクだ。ただ今日も隣にロゴス教皇がいる。


 昨日の夜は国王とゲスの極みな話をしていたが、そんな雰囲気は微塵も感じさせない。恐るべき厚さの面の皮である。

 今日も何かあれば釘を刺すためにやってきたのだ。だが大半の生徒は問題無く昨日の話を信じており出番は無いかもしれない。


 生徒達は何の疑いも無く信じているが、何でも願いが叶うなど日本に居たころならば絶対に信じなかっただろう。願いが叶うなど詐欺の定番である。

 しかし、日本のサブカルチャー、漫画やドラマではその手の話に事欠かない。なまじそのような文化に触れているため、異世界ならそんな事もあるだろうと思ってしまう。

 彼等がもう少し冷静に考えることが出来たなら、少しは疑うことも出来ただろうが、異世界に召喚という究極の非日常が彼等の冷静さを奪っていた。

 それに、人は誰しも自分にとって都合の良いことを信じる。だから魔王を倒せば願いが叶うと無意識に信じ込んでしまう。彼等の精神衛生上、帰る方法が無いなどとは考えられないのだろう。


「これからミーティングを始める」


 アレクの声でミーティングが始まり、生徒達の注目が集まる。


「まずこれからの訓練の日程だが、三日程城で訓練した後、ダンジョンを攻略してもらう」

「またダンジョンですか?」


 アレクの言葉に晴子先生は不安そうな顔をする。また犠牲者が出ないか心配なのだろう。


「安心してほしい、今回のダンジョンは安全第一でいくし、あのような悪質なトラップは滅多に無い」


 まだ晴子先生は不安そうだが何も言わないのでアレクは肯定と受け取った。


「それでは早速訓練を始めるぞ」


 訓練はいつも通りグラウンドで行われた。訓練の内容はパーティ毎に教官をつけて各個に自習である。


 溜まった鬱憤を晴らすかのように生徒達が訓練に邁進する中、グラウンドの一角で大きな金属音が断続的に響いている。

 音の発生源は大河と達也だ。二人は模擬戦をしている。


 ギィィン!!


 大剣とメイスがぶつかり盛大な金属音を立てる。刃引きした大剣と刺の無いメイスではあるが当たったら怪我ではすみそうでない。てか死ねる。近くで訓練している生徒は若干引いている。


「オラァ!!」


 達也は大剣を軽々と振り回し遮二無二に攻めるが、大河は盾とメイスで的確に防御する。全ての攻撃が防がれていて達也は歯噛みするが、大河も防御で手一杯で反撃が出来ずに唸る。


 更に五分程攻防が続いた後、「止め!」の声が入った。審判をしていた教官役の騎士が止めたのだ。


「凄かったよー!」

「見応えがあったわ」


 声をかけてきたのは大河達と同じパーティの菜奈と深雪だ。大河と達也が模擬戦をしたいと言ったので観戦していたのだ。


「二人ともお強いのですね」


 もう一人声をかけてきた。彼女の名前は白井唯。ハルトの代わりの補充メンバーだ。


「ま、結局勝負は着かなかったけどな」


 達也は顔を顰めて非常に悔しそうだ。まあ二人の称号を考えれば妥当な結果なのだが。


「新しいメンバーも入ったことだし、パーティの連携の訓練をしようか」


 大河がみんなをまとめようとするが、自分の言った言葉で暗くなってしまった。新しいメンバーということでどうしてもハルトの事を意識してしまうからだ。まとめる役は、リーダーは俺じゃなかった筈なのにと。

 しかし、いつまでも悲しんではいられない。今はハルトを生き返らせることに全力を注がなければならないのだから。



 そして、一日の訓練が終わった。生徒達はその後、個人個人で自主連を始める。


 大河達のパーティはそのままパーティの連携の訓練をしている。パーティ間における大河達の役割はあまり変わらない。大河は前衛でタンク。達也は前衛でアタッカー。菜奈は中衛でサポート全般。深雪は後衛で遠距離攻撃。そこに新しく入った唯が前衛寄りの中衛として援護する。これが新しいパーティの形だ。ぶっちゃけ変わっていない。ハルトのポジションに唯が入っただけだ。

 ただ、大きく変わったこともある。リーダーが大河に変わったことで、戦闘中の指示も大河が出すことになった。これが問題だった。みんな今までと違和感があって動きが噛み合わないのだ。こればっかりは練習を繰り返すしかないだろう。


 それからしばらく訓練を続けていると、レイラと凜がやって来た。二人も訓練中はパーティで訓練していたが自主連になったので抜けてきたようだ。


「蒼井くんと中猪くん、ちょっと話があるのだけどいいかしら?」


 凜にいきなり呼び出された大河と達也だが、二人の目があまりに真剣だったのでもしやと思い大人しく付いていった。

 他の人に話し声が聞こえない所まで移動すると、凜は前置き無しに話始めた。


「貴方達は魔王を倒して何を望むの?」


 どストレートである。ど真ん中である。しかもジャイロボール。


「直球だな。俺達はハルトを生き返らせる」

「「!!」」


 大河の言葉に反応するレイラと凜。


「そーゆうオメーらはどうなんだよ?」


 達也がドスの利いた声で問う。なぜに喧嘩腰なんだろうか。あと顔が怖い。小さい子供なら泣き出すレベルだ。


「私達も日向くんを生き返らせたい!」


 レイラが毅然とした表情で答える。


「だからパーティは違うけど協力しない?」


 凜の言葉に達也は表情を緩めて返事をした。


「ああ、いいぜ」


 達也の返事を聞いたレイラはふーーと息を吐き出した。


「あー、緊張した。信じてたけど願いが違ってたらどうしようかと思った。あと中猪くん怖いし」

「まあ俺たちも宮野さんと橘さんは願いが一緒かなとは思ってたんだけどね。あと確かに達也は怖いな、顔が」


 達也のこめかみに青筋が走る。


「やかましいわ!!」

「ああ、後唯も手伝ってくれるって言ってたからよろしくね?」


 達也が怒鳴る中、凜は柳に風と受け流す。


「おう。わかった」


 その後、レイラと凜を加えて訓練は続いた。不思議なことに目的が同じだとわかると途端に大河と達也と唯の連携が格段と良くなった。さらに実は菜奈と深雪も大河と達也はハルトのために願いを使うと確信していたので、二人のサポートをする気満々だったのだ。そのため大河と達也と唯の連携が良くなると菜奈と深雪と唯の連携も良くなり始めた。

 パーティの目的はただ一つ、ハルトを生き返らせる。五人の結束は強固なものになった。



 それから三日、特に問題無く訓練は進んだ。パーティ間の連係には多少のぎこちなさはあるものの、生徒達は今までよりより一層訓練に励んでいた。その根底にはある生徒の二の舞にはなるまいという思いがあった。


 そして勇者達はダンジョンの攻略に向かった。





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