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器用貧乏と夢

 



 ハルトは町に戻ると宿屋に直行した。なんかイライラしてギルドには行く気にならなかったからだ。


 宿に戻ると昼食を食べたがイライラして何を食べたか覚えていない。その間クリスがずっと怯えていたがハルトは気がつかなかった。


(なんでこんなにも不愉快なんだ……)


 ハルトは部屋に戻ってからもずっとイライラしている。ハルトは自分の気持ちをもて余していた。カルシウムが足りてないのかもしれない。


「あ、あの、申し訳ございません!」


 しばらくの間部屋の雰囲気が悪かったところ、突然クリスの謝罪が飛び出した。自分がスライムに手も足も出なかった後からハルトの機嫌が悪くなったので自分のせいだと思ったのだろう。


「ん? 何が?」


 ハルトは何で謝られたのかわかっていない。頭上にクエスチョンマークが浮かんでいる。


「わ、私がスライムを倒せなかったから怒ってるんじゃないんですか?」


 クリスがおっかなびっくり聞いてくるが、ハルトとしてはそんなに機嫌悪く見えるかなとか思っている。はたから見ればかなり機嫌が悪そうに見えていたが当然気づいてない。激怒ぷんぷん丸だったのに。


「いや、別に怒ってないよ。そもそもステータスのこと忘れてた俺が悪いし。悪かった」


 ハルトが謝るとクリスはすごく変な顔をした。困ったような驚いたようなそんな顔だ。


「ご主人様が謝る必要は無いと思います。ではなぜ怒っていらっしゃったのですか?」

「さあ? 俺にもよくわかんないんだ」


 ハルトはすっとぼけると立ち上がった。


「ちょっと出てくる。夕食までには戻るから」

「わかりました」


 クリスのお辞儀に送り出されながらハルトは宿の外に出た。






 ハルトが向かったのは図書館。目的は情報収集である。王城でも暇を見繕って情報収集をしていたが、細かい情報を知るには市井で探すのがうってつけなのだ。気分転換にもなるし。


 ボルタの図書館は日本でいう地方の田舎の図書館といったところだろうか。落ち着いた感じのする、あのなんとも言えない雰囲気だ。


 図書館の入場料は500G。ハルトはさっさと払うと適当に本を探し始めた。別にどうしても欲しい情報はなく、王城ではわからなかった市井の生活習慣などがわかればいい。あとは興味を惹かれたものを探すのだ。







 時間は過ぎて夕方。ハルトは閉館時間ということで図書館を出た。どうやら異世界でもお役所仕事は時間が早いらしい。


「さーてと。帰るか」


 今回ハルトが得た情報によると生活習慣は日本と比べて致命的に食い違うことはないようだった。細かな違いは見られはしたが耐えられないようなものはなかった。


 他の情報でハルトが興味を惹かれたのはこの世界と大陸について。ハルト達が転移してきたこの世界の名前はウエイストといい、大陸の名前はパンゲアというらしい。パンゲアは別に世界に一つしかない超大陸ではなく、他にも複数の大陸があるようだ。


 しかし他の大陸の情報は驚くほど少ない。別に情報が規制されているのではなく、そもそも情報が無いのだ。それはつい最近まで大陸間の移動が出来なかったからだ。

 その理由は歴代の魔王の一人が原因だ。過去の魔王の一人が結界を張り、大陸間の移動を封じたのだ。三百余年の間、大陸間の移動が出来なかったため情報が少ないのだ。


 さてなぜつい最近までかというと、こないだ結界が解けたからだ。ハルト達が召喚される一月前のことだった。まだ原因はわかっておらず大陸間の交流は細々としたものに留まっている。


 こんなところが今回の成果である。他にも幾つか興味深いものもあったが時間がなかったので仕方ない。また来ることにしてハルトは宿へと戻った。


 宿に戻った後は夕食を食べて、風呂に入って寝たが、またクリスが夕食や風呂を遠慮したので強引に食べさせたり、強制的に風呂に入れたりしたらハルトは疲れ果てた。


 今日もクリスにベットで寝るように言いつけると、ハルトは早々と夢の世界へと旅立った。









 ハルトは誰かに呼ばれたような気がして目を開けると、白い空間にいた。凄まじいデジャヴを感じて振り返るとベルが立っていた。めっちゃニコニコしてる。


「またあなたに会えて嬉しいわ、ハルト」


 お前が呼んだんだろーがと思ったが、さすがに口には出さず無難に返事をする。


「思ってたやり早かったがな。まあ俺も会えて嬉しいよ」


 ベルはハルトの返事を聞いて嬉しそうに微笑んでいる。


「で、今回は何の用だ?」

「もうせっかちね」


 ハルトが用件を聞くとベルは頬を膨らませた。子供っぽいが意外と似合っている。


「まあいいわ。用件はあなたの奴隷のことよ」

「クリスのこと?」


 ハルトははてなんでここでクリスなんだと首を傾げている。


「彼女の封印されたステータスを解放したくはない?」

「!!」


 なぜそれを知っているのか、そもそも奴隷を拾ったこともなんで知っているだとか色々疑問はあるが、とても魅力的な提案だった。


「どうすればいいんだ?」

「簡単よ。とあるダンジョンをクリアすればいいの。幸いなことにあなた達の比較的近くにあるわ」


 ハルトは驚いた。あまりの都合の良さにだ。奴隷の封印のことを知った日の夜に解決法がわかり、なおかつ近くにあるとか出来すぎである。ただ胡散臭いが損にはならなそうなのでとりあえず言う通りにすることにした。疑念は消えないが。


「俺がいる場所まで知ってるとかストーカーかよ」

「失礼ね、違うわよ!」


 しかしあからさまに疑ってかかれないので表面上はいつも通りを装って冗談を言っておく。


「で、場所は?」

「あなたがいる町から南西の方向にある森の中よ。距離は三十キロくらいかしらね」

「結構近いな」

「ダンジョンは彼女を連れて行かなければ姿が見えないわ。だから他の人は気づいてないはずよ」


 ハルトはなるほどと頷きながら、さらに幾つか話すと現実に復帰した。最後の瞬間ベルが悲しそうな顔をしていたので、次はもう少しゆっくりしようと思ったハルトだった。









 翌朝、ハルトが目を覚ますとまたクリスを抱き枕にしていることに気がついた。しかし今度はまだクリスが寝ておりひと安心。今のうちに離そうとするがちょっと、いやかなり抱き心地が良かったので躊躇ってしまう。まあその後鋼の心で離したが。


 クリスが起きた後、朝食を食べるとダンジョン攻略の準備を始めた。




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