器用貧乏の温もり
サブタイトルの書き方変えてみました。
…………長い夜ではなかった。始まって5分でハルトの眠気が限界を迎えたからだ。一日で死んだり生き返ったり、殺されたり殺したりとハードなスケジュールをこなしていたので疲れはてていたのだ。けっしてハルトが自堕落なわけではない。たぶん。
「……すまん。眠くて頭働かないからな寝る……。クリスはどこで寝る?」
ハルトがフラフラと布団に潜りながら言うと、クリスは一瞬身構えた。
「床で寝ます」
「……そう言うと思った……。……さすがに床で寝かすのはあれだからベットで寝ろ……。幸いベットはそこそこ大きいから二人でも寝れるだろ……」
「……はい」
クリスが体を硬くしながらベットに入ってくる。しかしハルトは眠たすぎてそれどころではなく。クリスがベットに入るのを確認するとベットの端に寄って即行で寝てしまった。
「……え?」
てっきりやられると思っていたクリスだがさっさと寝てしまったハルトを見て目をぱちくりしている。
その後もハルトは起きる気配もなく爆睡しているのでクリスもハルトと反対側のベットの端で横になった。
(この人はなにを考えているのかしら?)
クリスはしばらく起きていたがなにもなかったので、いつのまにか夢の中に旅立って行った。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
夜中、ハルトはうなされている声を聞いて目を覚ました。
(なんだ?)
ハルトがすぐ横を見るとクリスがうなされていた。どうやら移動してきたようだ。単に寝相が悪いのか、うなされて移動してきたのか。おそらく後者だろう。
クリスはかなり悪い夢を見ているようで顔色が悪い。小声でやめてとか許してとか呟いている。半日前に魔物に食べれているので悪夢も見るだろう。
ハルトがクリスを見ていると、クリスがハルトの服を握ってきた。
(……どうするかな)
ハルトのオタク知識の中には奴隷が出てくる作品の知識もある。異世界から来た者は奴隷を解放したり、奴隷と良好な関係を築いたり、自分の欲望の捌け口にしたりといくつかパターンがある。召喚前のハルトであれば美人の奴隷だぜ、ヒャッハーとかなったかもしれないが、テーリノートでチラッと見たとはいえまともに奴隷を見たのはクリスが初めてだ。しかもファーストコンタクトが魔物にムシャムシャされているところとか未知との遭遇過ぎる。ぶっちゃけどう扱えばいいかまったくわからない。
クリスの反応を見たところ、この世界の奴隷の扱いはかなり粗雑なようだ。郷に入れば郷に従えと言うがこの世界が嫌いなどころか憎いハルトはあまり従いたくない。結局ハルトの気持ち次第なのだ。
これがそこら辺にいる奴なら適当に扱ってもいいのだが、自分と似た体質のクリスをハルトは放って置けなかった。ハルトはクリスを大事にすることにした。
ちなみにハルトの優先順位はこれまで、一に自分、後その他だったのが、一に自分、二にクリス、後その他になった。やったねクリスが世界で二番目に大切になったよ! そもそもハルトにとってこの世界のものは優先順位激低だっただけなのだが。
迷った末、ハルトはクリスを抱き寄せ、背中を軽く叩き始めた。まるで幼い子供をあやすかのように。
しばらく背中をポンポンしているとクリスの寝顔が安らいでいった。クリスを宥めているうちにハルトもいつの間にか寝てしまった。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
(……温かい。……?)
朝、クリスは自分を包む温かさに気づいて目が覚めた。
(……なに?)
寝惚けた目でまわりを見渡そうとして自分が動けないことに気がついた。
(!?)
目の前には男の胸板が見える。当然ハルトの胸板である。ハルトに抱きつかれて抱き枕にされている。
一瞬、ああいつもの主人達と同じかと思ったが、次の瞬間クリスの頭が沸騰した。自分の手がハルトの服を握っているのに気がついたからだ。
(っ!!!???)
さっきハルトに抱き締められていることに気づいた時よりも驚いている。
(ど、どうして!?)
あまりに驚いて身じろぎするとハルトが、んーとか言いながら抱き締め直してきた。
(あっ……。)
温かさの原因がわかった。単純にハルトの体温という訳ではなかった。ハルトの魔力だ。
エルフという種族はとても魔力に敏感なのだ。魔力の質である程度相手の人格を判断する。ハルトの魔力はクリスが今まで感じたことが無い程の優しい温かさでとても安心する魔力であった。その安心感たるや寝てる間に無意識にくっつくレベルだ。
「ううっ……」
結局クリスはハルトが起きるまでされるがままになっていた。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
ハルトは起きると目の前にクリスの顔があって、こっちをじっと見ていてちょっとびびった。その後自分がクリスを抱き締めていることに気づいてさらにびびった。
「……おはよう」
「……おはようございます」
なんとも微妙な雰囲気である。
ハルトは私は気にしてませんよと言いたげにさっさとベットから脱け出すと窓から外を見た。随分と日が高い。もう昼のようだ。
「飯にするか。下の食堂に行こう」
ハルト達の泊まった宿は食堂も併設されている。ちなみに食事代と宿代は別である。
ハルト達が食堂に移動して椅子に座る。食堂にいる人はお昼時を過ぎたからか疎らだ。クリスはまた床に座りそうだったので、ハルトが先んじて椅子に座らせた。
メニューを開くが何の料理かさっぱりわからなかったので適当に定食っぽいものを注文した。クリスはほっとくと何を頼むかわからないので同じ定食を注文してしまった。
しばらくして料理が届く。定食は何かのスープとピザみたいなパンだった。
「いただきます」
ハルトが食べ始める中、クリスは手をつけない。躊躇しているようだ。
「どうした?」
「あの、ご主人様と同じものを食べるわけには……」
「……いや、食べていいから」
ハルトがどうでもよさげに言うとクリスもやっと食べ始めた。一度食べ始めると夢中になって食べている。余程お腹が空いていたようだ。
「そんなにうまいか?」
「はい! 美味しいです!」
クリスは笑顔で食べているいるが、ハルトからすれば大して美味しくない。地球のピザと比べるべくもない。ハルトは漫画、ラノベ、DVDを買うためにいろんなバイトをしていたので、その中にピザ屋のバイトもあった。そのためハルトは自分が作った方が美味しいのではないかと思った。大手チェーン店ピザヘルムでのバイト経験は伊達ではないのだ。
「今度俺がもっと美味しいやつを作ってやる」
「むぐ?」
ハルトの発言にクリスはピザをくわえながら首を傾げている。どうやらよくわかっていないようだ。
食事が終わるとハルト達は部屋に戻った。当初の予定通りクリスについて色々聞くためにである。
「随分と予定がずれたがクリスについて聞こうか」
「はい」
「まずお前は何なんだ?」
「私は……」
クリスが自分について話し始めた。
今週の半ばからまた山で修行をするので来週は投稿できるかわかりません。
なにぶん電波が入らないので。おのれa○め、他の会社は入るのに……




