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器用貧乏のダンジョン攻略

なんか日間一位になってました。ありがとうございます。閲覧数がすごく増えていてびびってます。これからもよろしくお願いします。

 



「………………」


 ハルトはアゲインストを倒した後、しばらく無言のままだった。五分かそこらが経った時、やっと再起動した。感慨深いものがあり放心していたようだ。


「勝ったのか……」


 ハルトは折れたノワール・ディバイダーを回収しながら呟くと、急に倒れこんだ。


「? 体が動かない?」


 ハルトは体を動かそうとするが、体が重く思うように動かせない。そして、勝手にカースフォルムが解けた。


「ぐぁぁ!?」


 解けた瞬間に凄まじい脱力に襲われ、ハルトは意識を失った。












 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~













「簡単に言えば、まだあなたの体が新しい力に慣れていないのよ」


 ハルトの前でベルがしたり顔で話している。意識を失ったハルトは気がつくと、またあの白い空間にいた。とりあえずベルになぜ意識を失ったかを聞いたら今の返答があったのだ。


「体の修復も身体能力の上昇も体力を使うのよ。ま、それで死ぬことはないけれどね」

「で? なんで俺はここにいるんだ?」

「言ったじゃない。アゲインストを倒したら呼ぶって。あなたが気絶したからちょうどよかったのよ」

「なるほど。なんか話でもあるのか?」


 ハルトが呼ばれた理由を聞くと、ベルは一瞬目を逸らしてから話し出した。


「えっと、まずあなたはこの後どうするの?」

「当然ダンジョンから出るが」

「あ、そうじゃなくてダンジョンを出た後、なにをするのかなんだけど」


 ベルの言葉にハルトは答えることができない。ダンジョンから出ることに必死でなにも考えていなかったから。

 落ち着いて考えてみると、やることがないことにハルトは気づいた。クラスメイトには裏切られて帰りたくない。一人で元の世界への帰り方を探しても、人間辞めた体では帰っても悲惨なだけ。この世界で生きていこうにもぶっちゃけこの世界のことを大して知らない。まじやることがない。


「どうすっかな。異世界召喚のテンプレでも真似るか?」


 自問自答していると、遠慮がちにベルが聞いてきた。


「す、することないの?」

「う、まあ、そうなんだよな……」


 ハルトは項垂れた。


「だ、だったらまずこの世界を見てまわるとか」

「この世界……」


 ベルの言葉にハルトの目に暗いものが宿った。自分を勝手に召喚した世界。自分に戦いを強要する世界。戻り方すらわからない理不尽な世界。自分を殺した地獄のような世界。ハルトはこの世界が憎いと思った。


 突然暗いオーラを放ち始めたハルトにベルは「あらあら何かスイッチ押しちゃったかしらん」と慌てる。


「…………強くなろう」 

「えっ?」


 ベルが何て声をかけようか迷っていると、ハルトが現実に復帰した。しかも目には決意が宿っており、力強い光を放っている。


「強くなってどうするの?」

「この世界をまわって気に入らないことを力づくでなんとかする」


 決意は決意でも最低の決意だった。どうやら嫌なことがありすぎて多少性格が歪んでしまったらしい。……多少かな? 多少だといいなー。


「そう、あなたが望むならそれでいいんじゃない」

「……いいのか? てっきり止めるかと思ってたが」


 ハルトが意外そうに呟くと、ベルはあっけらかんとして言った。


「私は聖人君子で無ければ、神様でも無いわ。あなたを止める権利も無ければ、止める理由も無いのよ」


 ハルトはあれー、女神って呼ばれてたんじゃないのーと思ったがめんどくさいのでツッコまなかった。


「あなたが世界をまわるならお願いがあるんだけど……」

「ん? なんだ?」

「実は私は完全に封印が解かれたわけじゃないの。まだ世界各地にアゲインストみたいな奴がいて、私を封印しているわ」

「ふーん、で?」

「世界をまわるついででいいから、そいつらを倒してほしいの」

「なるほど」

「もちろんメリットもあるわ。まず、私の加護をあげる。自分で言うのもあれだけどけっこう強力よ。次にダンジョンのボスは倒しても一定期間で復活するのは知ってる?」

「知ってる」

「アゲインスト達は復活しないの。一度きりだからすごく強い。だけどその分ドロップするアイテムやダンジョン攻略のボーナスがすごくレアなのよ。あなた強くなりたいのでしょう? かなり役に立つはずよ」

「うーむ」


 ハルトは悩んだ。すげー悩んだ。ぶっちゃけもうアゲインストクラスの化け物とは戦いたくない。死なないからといって痛いものは痛いのだ。しかしゲームにおいて一回しかポップしないモンスターはレアアイテムを落とすのも事実。ハルトはそこまで考えてまだアゲインストのドロップアイテムを確認していないのを思い出した。


 ハルトがいそいそと確認すると。

 ステータスクリスタルが幾つかと素材がちらほら。そしてコートオブサタンとかいうレザーコートがあった。コートが当たりっぽいので詳しく見てみる。


 ピコン!


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 コートオブサタン

 魔法耐性(大)、呪術耐性(大)、AGIボーナス(中)

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 どうやら大当たりのようだ。元々レザーコートにしては破格の防御力のところに、さらに魔法耐性が付いているので魔法に関しては凄まじい防御力を秘めている。紛れもないレアアイテムだ。ただしかなり禍々しい。


「わかった。やろう」

「本当! 嬉しいわ! 時間はどれだけかかっても構わないからお願いね」

「ああ、レベルとスキルが上がってからだがお前の封印を解いてやるよ」


 結局ハルトはベルの願いを叶えることにした。レアアイテムが欲しいのもあるが、これから永遠に生きると仮定すると目標は多いに越したことはないと思ったからだ。ベルは大喜びしている。


「お礼と言ってはなんだけど、私の加護をあげるわ」

「加護ってのは具体的にどんなのなんだ?」

「うーん。いくつか種類があるけど、今のあなたには『魔眼』がいいかしらね」


 なんか廚二的な能力来たー! とハルトが脳内で叫んでいるとベルが能力の説明を始めた。


「『魔眼』の能力はね、まず魔力を視覚的に捉えることができるようになるの」


 魔力は感じるもので、魔法を使う者は魔力を感じなんとなくで魔力の強弱を判断するのだ。それを視覚的に捉えることができれば相手がどれだけの魔力を魔法に込めたかわかるし、魔法のトラップも見破ることができる。


「さらに鑑定スキルの上位版の詳細鑑定も備わっているからアイテムだけじゃなく、相手のステータスも見れるようになるわ」


 相手のステータスを確認できるのは地味に強力な能力だ。どんな能力値やスキルの熟練度が高いのかわかれば、相手の攻撃が予想しやすく、弱点を突くのも容易になる。


「便利そうだな。じゃあそれで」

「そう、ではいくわよ」


 幻想的な光がハルトを包み込んでいく。ハルトは光が消えた後ステータスを確認してみた。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 日向 悠斗 17歳 ヒューマン LV49

 STR:1200

 AGI:1200

 VIT:1200

 MP:2500

 SP:2500


 称号

 器用貧乏(覚醒)


 魔法適正

 火・水・風・土・雷・光・闇・回復・支援・生体・結界・振動・刻印


 アビリティ

 異世界言語理解・魔眼

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 確かに魔眼が増えていた。そしてレベルがまた上がっている。ここ最近のレベルの上昇が著しい。てか一日足らずで20も上がっている。


「あ、そうだ。ダンジョン攻略のボーナスも今取れるわよ。取ってしまえば?」


 ハルトがステータスを見て唸っていると、ベルが割りと重要な事をさらっと言った。


「え、なにここで取れんの?」

「ええ。ステータスは体ではなく魂に刻むものですから」

「で? どうやって取るの?」

「簡単よ。視界の隅のアイコンが増えているでしょう? それが通知のアイコンよ」


 ハルトはさっきから気になっていた四つ目のアイコンを開いた。


 ピコン!


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 ダンジョン攻略ボーナス

 スキル 付与魔法

 アビリティ リミットブレイク

 能力値 防御力極大上昇


 この中から一つ選択

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 どうやらダンジョン攻略ボーナスは複数の選択肢から選ぶタイプのもののようだ。


「ダンジョン攻略ボーナスはね、攻略した人によって選択肢の数も得られるボーナスも違うのよ。ちなみに一度攻略したダンジョンをもう一度攻略してもボーナスは貰えないわ」


 ベルは説明しつつ、ハルトの後ろにまわってボーナスを確認した。


「うわあ! すごく強力なのばかりね。『リミットブレイク』も能力値の極大上昇も普通出ないのに。流石は私を封印しているダンジョンね」


 流石って……と思ったハルトだが気にしないようにして、どのボーナスを取得するか考え始める。


「よし! 『リミットブレイク』にしょう!」


 特に迷うことなく決めたようだ。


「じゃあ、やることも終わったし、そろそろ帰るか」

「そう。では送るわね。前と同じで時間の流れが違うからほとんど時間が経ってないわ」


 ハルトが帰ると言うとベルは少し寂しそうだった。ハルトは気づいていたが特に何もしなかった。

 だがかわりに一言付け加えた。


「また来る」


 その一言でベルは笑顔になった。初めに感じた神々しさはだいぶ薄れたように感じた。


「楽しみに待っているわ」


 ハルトは白い光に包まれた。





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