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器用貧乏のリベンジマッチ

すいません、投稿遅れました。

実習先の山が電波入らなくて大変でした。まあカモシカとか見れたからいいですが。

 



 熱い。ハルトはその感覚で意識を浮上させた。うっすらと目を開けると光輝く水晶が目に入った。


(本当に戻って来たんだな……)


 視線をずらせばアゲインストが立ち上がったところだった。どうやらハルトが生き返ったことには気づいていないようだ。


 ハルトはアゲインストが背を向けた隙にスキルウィンドウを開いて、素早くスキルModを取得していく。ただ数が多いため必要なところだけに絞る。


 即行で取得を終わらせるとハルトはのそりと立ち上がった。体を見下ろすと酷い状態であった。傷こそ治っているが血と砂でドロドロだし、致命傷だった右目から太股までの斬撃で防具はズタボロだ。


 ハルトは体のチェックが終わるとアゲインストに話しかけた。


「おい、ちょっと待てよ」

「ッ!?」


 アゲインストは凄い勢いで振り返った。


「な、何故だ? 貴様は確かに死んだはず……」


 かなり驚いているらしく、いつもの威圧感を感じない。もしくはハルトが生物として進化したから威圧感を感じないのだろうか。


「生き返れるのが自分だけだと思うなよ」


 ハルトは近くに落ちていたノワール・ディバイダーを拾うと正眼に構える。そしてアゲインストが動揺しているうちに接近すると斬撃を見舞った。

 アゲインストも流石の反応速度で咄嗟に避けるも避けきれなかった。


「グッ!」

「どうだ? 夢や幻じゃないってわかったか?」


 アゲインストの顔がニヤリと歪む。


「素晴らしい! カラクリはわからんが生き返るとは! これでまだ戦いを続けられる」

「俺はお前を倒してここから出る!!」


 ハルトとアゲインストが剣を構えた。


「こっからが第二ラウンドだ!」


 ハルトとアゲインストが剣を打ち合うが、ハルトが圧倒的に押されている。


「生き返ったところで、さっきまでと同じでは我には勝てんぞ!」


 ハルトが吹き飛ばされて、二人の間に距離ができた。


「さっきまでと同じ訳ないだろ。見せてやるよ、新しい力を」


 ハルトは体の中心で目覚めたときに感じた熱を感じた。熱は段々と全身に広がっていき、その熱量も増していく。それに比例して全身に全能感が満ちていく。


「この力が呪いなのか祝福なのか俺にはわからない。だがたとえ呪いであったとしても使いこなしてみせる」


 ハルトはうちに秘められた力を解放する。


「リベレイション カースフォルム!!」


 ハルトを中心に魔力が渦巻いている。中心にいるハルトからは今までは感じなかった強いプレッシャーを感じる。


「それが新しい力か? 感じるぞ、お前の力を。さっきまでとは比べ物にならない威圧感だ」

「そりゃどうも」


 ハルトの姿は大きく変わってはいない。変わったところは先ほどまでは無かった右目から太股までの大きな傷痕と右目が赤く輝いているところだ。

 全身から禍々しいオーラを撒き散らして、ハルトは犬歯を剥き出しで笑った。


「こっからは俺のターンだ!」


 姿が霞んで見えるほどの速さで接近すると、剣を斜めに切り上げる。動きがさっきまでとはまるで違う。スピードの桁が上がっている。例えるならザ○からユニ○ーンくらい変わっている。通常の三倍どころではない。


「ぬっ!?」


 一閃。

 ハルトはアゲインストの横を駆け抜けて残心している。


 ハラリ。アゲインストの首輪が地面に落ちた。


「貴様、我の首輪を!?」

「これでお前を殺せる」


 ハルトの口がニィと歪む。


「ク、ククク! ハ、ハハハ!」


 アゲインストは笑っている。


「首輪を切られたか。これは我も本気を出さなければならんな」

「殺してやる!」

「やってみよ!」


 怪物バケモノ怪物バケモノの本気の殺し合いが始まった。











 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~










 おかしい。明らかにおかしい。


 アゲインストは困惑していた。初めは互角の戦いだった。実力は拮抗していた。そのはずだった。だがアゲインストは押され始めていた。


「貴様なんなのだ! 人間ではないのか!?」


 アゲインストは理解できない。ハルトの存在が理解できなかった。


 肉を切らせて骨を断つという言葉がある。本来は自分もダメージを受けつつも相手にそれ以上のダメージを与える意味の言葉だ。しかしハルトが行っているのは肉を切らせて肉を断つと言った方が正しいだろう。自分がダメージを受けるのはもちろんのことだが、相手に与えるダメージが良くて相打ち、大抵は自分の受けるダメージの方が大きい。それでも押されているのはアゲインストなのだが。


 ザシュッ!!


 アゲインストの斬撃が当たり、ハルトの左腕に深い傷ができた。同時にハルトの斬撃がアゲインストの脇腹を浅く切り裂く。ダメージは明らかにハルトの方が大きく、左腕は使い物にならない。この時点では。


 シュウウウ。一瞬の後、ハルトの左腕の傷が猛烈な勢いで治っていき、ものの数秒で完治した。人間を辞めた効果ではあるが最早生物として危ういレベルである。


 この馬鹿げた回復能力のお陰で身体的スペックが同等でありながらハルトはアゲインストを追いつめ始めていた。


「貴様……、傷が治るからといって痛みが無いわけではないだろうに。そこまでするか」

「当たり前だろう。俺はここから出る。そのためなら何だってしてやるさ!」

「ならば奥の手を使うまで!!」


 このままでは押し負けると判断したアゲインストは切り札を切った。

 アビリティ『魔力変換』 魔力を消費して一時的に身体能力を上昇させるアビリティだ。一見地味だが変換率は凄まじく、リミットブレイクと同等の上昇率を誇る。魔力が尽きた後もリミットブレイクのような能力のダウンは無く優秀だ。ただし発動中は魔法が使えないのが欠点である。


 黄色い光がアゲインストから生まれ、身体能力が上昇した。これでアゲインストは魔法を使えなくなったが、魔法自体大して使えないので問題は無い。


「ハアッ!!」


 アゲインストの大剣がハルトの土手っ腹を捉え、真一文字に切り裂く。


 決まった。アゲインストはそう思った。それが油断になった。


 ハルトは傷の回復も待たずに接近すると、アゲインストの腹を真一文字に切り裂いた。


「グウッ! 貴様、これでも一瞬も躊躇せんか……」

「ガハッ! お前が隠し玉を持っているのは予想していた。いくつか推測して対策考えていたが、一番楽なのが来るとはツイてるぜ」


 吐血しながらハルトが発した言葉にアゲインストは眉を寄せる。


「楽だと? どういう意味だ?」

「簡単な話だ。変則的な能力ではなく、単純な身体能力の強化。それなら殴り合いをすればいいだけのことだろ」

「なっ……」


 アゲインストが絶句した。対策でも何でもない。ただのバカだ。


 実のところハルトに余裕は無かった。身体能力は飛躍的に上昇したが、いかんせん慣れていないので十全には扱えない。スキルも熟練度が上昇したが、確かめる暇がなかったのでどんな効果が増えているのかわからない。選択肢は人間離れした回復能力を活かしてど突き合いすることくらいだ。


 腹の傷が癒えたハルトは再び突撃する。互いの位置を高速で入れ換えながらハルトとアゲインストは切り結んでいく。


 アゲインストが盛り返すが攻めきれない。ハルトも決定打に欠ける。ハルトは装備しているものは刻印魔法を既に使用してしまったため、どうしても押しきれなかった。


 膠着状態に陥って、残存魔力が少なくなったアゲインストは勝負に出るべく強引に前に出る。ハルトの剣撃を受けつつも上段からの剣撃を左の肩口に叩き込んだ。これぞ本当の肉を切らせて骨を断つ。


 ハルトはたまらず後退する。左肩が回復を始めたが、傷が深いため時間がかかるようだ。左腕がプラプラしている。


「これで終わりだ! 頭から真っ二つにしてくれる!!」


 アゲインストが大上段から渾身の一撃を繰り出した。その瞬間ハルトが薄く笑った。


「予測通りだ」


 ハルトは足下に落ちていた盾を踏んで、刻印魔法を起動させる。〝断壁〟が発動した。アゲインストの肘の前に。

 〝断壁〟では振り抜かれた剣は止めることはできない。だが振り抜く前のしかも力の起点の一つでもある肘の前に障壁を張られれば、いくらアゲインストでも満足に剣を振れない。斬撃が止まった。


「うおおおーーーーー!!!!」

「しまっ!?」


 ハルトは根性で左手を動かした。『ハードスタブ』が再びアゲインストの胸に突き立った。ノワール・ディバイダーはアゲインストの背中から突き出ている。


 ピシッ、ピシッ。


「…………我が負けるか…………」

「……こっちもギリギリだったけどな」


 バキッ!! ノワール・ディバイダーが半ばから折れた。頑丈さが取り柄の剣が折れた。それだけ厳しい戦いだったのだ。


「フッ、フフフ、ハハハ」

「なんで笑ってやがる」

「なに負けはしたが、我が望んだ互角の勝負ができた。楽しかったのだ。礼を言うぞ。」

「俺は全然楽しくなかったよ」

「まあそう言うな。礼だ、こいつをやろう」


 アゲインストはハルトに自らの大剣を差し出した。


「使い手を選ぶ剣だが、お前なら使いこなせるだろう」

「まあ、もらえるものはもらっておくが」


 ハルトは大剣を受けとるとストレージに仕舞った。


 さらにハルトとアゲインストはいくつか会話をすると、ハルトが距離をとった。


「ハルトよ、お前がこれからどう生きるのか地獄の底から見ているぞ。我を殺すのだ、簡単に負けるでないぞ。さらばだ!!」


 アゲインストは細かい粒子になって消えた。アゲインストは最後まで笑っていた。





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