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光魔法を使う時は周囲を明るくして離れて見てね!

奥の応接室らしき部屋へと通された。色々な所にガタの来ていそうなさっきの場所と比べると、全体的に小奇麗な印象を受ける。

机の回りに席がいくつかあったが、どこに座ればいいのかわからない。こういう時どう振る舞うのか、いやこの世界でどう振る舞うべきなのか。

座る場所一つでこれからの立ち位置が決まるかもしれないのである。考えながら椅子を見て立ち尽くしていた。いやに胸が張って苦しかった。


「あ、こちらにお掛けください。」


にこやかな初老で白髪の紳士が、手で席を示した。色白耳長の種族の人だ。

そのまま従って奥の席へと座る。


「・・・はい。」


「私はこのような者です、どうぞよろしくお願いします。」


恭しく名刺らしきものを渡された。冒険者組合 副会長 ドラゴン・ウェーバーと脳に伝わってくる。スキルジェムと同じ仕組みなのだろうか。

ちなみに名刺を渡す時には、身長差のせいか腰をかなりかがめられた。ちょっと悔しい。

自分が返せるような名刺がないのに、なぜか申し訳無さを感じる。


「ところで、いきなり疑うようで申し訳ないのですが。」


「・・・な、なんでしょう。」


「スキルジェムの改ざんなどはされていませんか?」


「・・・してません。」


ていうかそんなの出来るのか。


――――


話を聞くと、なんでもこの世界では攻撃魔法自体が存在しないか、かなり限られるようだ。

副組合長のこのウェーバーという人も、回復魔法や補助魔法であれば使えるとのことだが、炎魔法や水魔法などというスキルは人生で一度も目にしたことがないそうだ。

魔法というものは大概、教会の偉い人か医者、それと魔法具職人だけが使うものと相場が決まっているらしい。

それかダンジョンの深層まで潜るパーティーがギルドを通じ、それなりのお値段で派遣してもらう程度のようだ。ていうかギルドはそういうことやってるんだな。

初級治癒魔法、初級補助魔法があれば一生食いっぱぐれないらしい。ちなみにゲームのとおりなら自分の今の職はウィザードで、恐らくその状態でのスキルしか使えない。

が、プリーストのレベル特典でどのクラスでも上級までなら治癒も補助も使えるはずだ。

とは言っても最上級が使えないし、強化スキルなども適用されないので、本職のプリーストがいる時に使うと上書きすんな死ね、と嫌わてしまうのだが。


ともかく火魔法や水魔法というのは、様々な人間のスキルを観てきたカウンターのお姉さんが驚くくらいには、未知のスキルらしい。

本来であればスキルジェムの改ざんを調べるため、それに対応する人間が来るはずだったが、珍しい魔法かもしれないということで副組合長がわざわざ来たそうなのだ。

問い詰め受けてたらどうなってたんだろう。怖いぞ。あと聞けばスキルジェムの書き換えは教会でも、かなり上位の人しかできないようだ。

そんな話をただ首を降って聴いていた。途中さっきのカウンターの人が、オレンジジュースのような飲み物を持ってきてくれた。見た目に反して苦かった。


副組合長は雰囲気的には信じてくれたようなのだが、やはり実際に魔法を見せてくれ、ということになる。

そこで副組合長と自分は壁を超えて町の外に二人で出ていた。町の偉い人間にアピールするのだ、ここはやはり魔法も見た目重視で行くべきだろうか。

使えるかわからないが範囲拡大スキルも使おう。


「・・・テリトリー・ブースト!」


全身が少し光る、これはちゃんとスキルが発動しているということだろうか。

この時点で少し副組合長の目つきが変わる。少なくともさっきまでの孫を見る老人のような眼ではなかった。

向こうに見える岩を意識して、魔法を発動させる。


「スプンタ・ライトV!」


スプンタ・ライトは上級光魔法だ。最上級の方が威力は高いのだが、光の最上級は単体向けの高威力魔法と格下の雑魚相手の即死魔法になる。

前者は見栄えが悪いし、後者はそもそも敵がいない場所で使っても効果がわからない上にもし相手に通じてしまうとまずい。

スプンタ・ライトはその点上級ではあるが、攻撃範囲が広く即死できない敵集団にはなかなか有効であるが、ウィザード以外特に近接職からは嫌われていた魔法である。

なぜならエフェクトが死ぬほど眩しいのだ。遠距離職であれば適当にロックするだけでなんとかなるが、近接職だと完全に敵と自分がエフェクトに埋まってしまうことも多い。

TSO2は全体的に近接職と遠距離職で煽り合いの多いゲームだった。もちろんゲーム外での愚痴という形だが。

スプンタ・ライトはその対立を象徴する魔法と言えるだろう。


少し遅れて、岩が砕けその中心に光から走る。次の瞬間に視界は白に染まった。

あまりの光に右も左もわからなくなる。これは・・・ゲーム的に言えば状態異常になっているということなのだろうか。

横からは副組合長から言葉にならない、焦りの混じった声がした。


「・・・アンティードIII!」


状態異常解除魔法を掛ける。視界は元に戻った。

参ったな・・・力はそのままなのだろうけど、耐性がないしこの世界だと自分もある程度魔法の影響受けちゃうんだな。

アイスースでわかっていたことだが、これからは耐性魔法や耐性装備が欠かせないかもしれない。

そう思いながら横の副組合長を見ると口を開けて呆然と座り込んでいた。

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