アドベンチャラーズ・ギルド
今はどうせスキル取得しようにも、一文なしなのでどうしようもない。
ノエラも慎重に相談しろと言ってたし、一応そのあたりは気を使ったほうがいいだろう。
とにかくTSO2のスキルが大体そのままあることはわかった、それがこの世界でどのくらい通用するのか確認する必要がある。
しかし死んだら元も子もない。そもそもこの世界に都合よくモンスター討伐とかがあるのだろうか。安易にあればいいのだが。
「おーい!」
「・・・っ!」
びっくりした。ノエラがいつの間にか横にいた。
まああのテンポで処理してたらすぐこっち来るよなあ、そうだノエラにそういうところの事情も聞いてみよう。
「あの・・・」
「なになに」
「・・・魔物倒してお金稼げたりとか、しない?」
「ナオお金ないの?ていうか別に魔物じゃなくても・・・」
まあ普通に考えたらそうだよな。わざわざリスク背負う必要なんかないし、子供なら丁稚奉公とか色々ありそうなものだ。
女体化する前は快感に堕ちてビッチになって風俗だの妄想してたが、いざ自分がされるのを想像すると恐怖しかない。いやマジで。
「いや、そういうのもあるのかなって思って・・・。」
「あんまりおすすめしたくないけどー・・・夜まで私もやることないし冒険者ギルドまでなら案内するねっ!」
あ、そういうのあるのかよかった。とりあえず言ってみて話を聞いてみよう、それからでも色々と遅くはないはず。
ていうか夜の用事ってなんだろう。
――――
顔が焼ける、全身が熱いのに背筋は凍えるように寒い。ノエラはギルドまで案内したら宿を取るとかで一旦分かれてしまった。
自分はギルドのカウンターの案内にあった、登録所らしき場所がわからない。さっきの態度の悪いおっさんは流れ作業でなんとなく行けたのに。
1人女の子に話しかけて聞こうとしたのだが、気づかなかったのかそのまま立ち去られてしまった。
次聞いてもこうなるんじゃないかと思うと、自分で探そうとも思うのだが、どこがどのカウンターなのかよくわからない。
案内表示もない。もしかすると文字が読めない人間のほうが多いのではないか。あのツリーも文字でも音でもなく、脳に直接情報が入ってくる不思議な感覚だった。
いや、そんなことはいい。とにかくわけのわからない恥ずかしさで、どこへ行けばいいのかすらわからなかった。胸がやたらとバクバク言っている。
とにかく何かしないと。そう思い目の前のカウンターまで足を無理矢理進めた。
「あ・・・あ・・・」
どうしよう何と言うべきなのか。登録用のカウンターがここですか、と言うべきなのか。それともいっそ登録お願いできますか、と直接言うべきなのか。
そもそも自分が見落としているだけで、実は登録する場所もどこかに載っていて、自分が見落としているだけじゃなかったのか。
見落としてわざわざ質問したらいちいちそんなこと聞いてくんな、みたいなオーラを出されそうな気がする。自分は繊細なのだ。
「ご用件でしょうか?お次の方がお待ちしているので・・・」
「と、登録っ!」
真っ赤になって叫んだ。いや叫んだ後余計に真っ赤になったかもしれない。
どっちでもいい、とにかく顔が熱かった。
「・・・登録の方ですね、少々お待ち下さい。」
ちょっと一瞬引かれたものの、笑顔で応対してもらえた。安心こそしたがちょっとその余裕に劣等感を感じる。
いや相手は普通に仕事をしているだけなのかもしれない。それなのになぜ自分はこうも喋ることすら、人並みにできないのか。
外に出て思う。自分がああやって引きこもっていたのは外に出れば余計辛い人間で、だからこそ自分を守るためだったのだなと。
「スキルジェムはありますか?」
「・・・」
無言でぐいと差し出した。いや押し付けた。相手はそれを受け取り何か魔法陣らしきものの上に置いた。
データが表示されたのだろう、少し憐れむような目を向けられた。Lv2はきっと冒険者としてありえないのだろう。
やはり自分はここでもダメなのだ、どこでもダメな人間というのは・・・・
「・・・はあっ!?」
次の瞬間、素っ頓狂な声が響いた。声が微妙に裏返っている。
別のカウンターや、ギルドにたむろしていた他の人間もその声に思わず静まり返り、振り向いていた。
カウンターのお姉さんは無理矢理自分を落ち着けるように、咳払いするとこちらの目をじーっと見て言う。
なんか凝視された。怖い。
「申し訳ありません。少々お待ち下さい。」
「・・・は、はい。」
そういうとお姉さんは奥の方へと戻っていく。周囲は奇異な目を向けながらも、さっきの状態へと戻っていった。
その中で自分はただ待たされている。なんとなくカウンターをずっと見つめているのも、催促しているようだと思ったので視線を別に向ける。
そうしてみると自分の小ささに気付いた。物理的に小さい。大体冒険者になろうというのに、自分のような小柄で小さい人間はいない。
男女問わず、それなりに体躯の優れた者ばかりであり、服装も鎧や鎖かたびら、そうでなくとも軽装の鎧であったり、それぞれの戦闘の上で必要な機能を纏っているように見える。
自分はどうか。子供のように小さく、服も明らかに戦闘のためにあるようには見えない。いやそもそも文化的に一致していないのではないか。
なんとなくヤケになって気づかないふりをしていたが、明らかに自分は浮いている。
改めて視線が痛い。そう思っているとさっきのお姉さんが戻ってきた。
「・・・こちらへどうぞ。」
神妙な顔でガイドされた。偉い人が来てしまうのだろうか・・・ちょっと怖い。半分怯えながら着いていった。
帰れなくなったらどうしよう。履きなれないヒールに足の筋が傷んでいることに今更気付いた。