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兄・典光寺惣岐 ①ご主人様はお兄様

日曜の朝、帰宅すると両親はおらず卓袱台に書き置きらしき紙を見つける。

読んでみると借金のこと、両親のことが書いてあって怒りより先に驚きで唖然とする。

元々母の実家は有名な財閥なのだが私が生まれる前に離別しているだとか、そして孫であることを話せばきっと援助して貰えると書き置きに書いてあった。


身内がお金持ちとなれば普通は頼る状況が、多額の借金を身内として無償で、こんな全額の借金を代わりに払ってもらうことは心苦しくて、多少なりともこういうやり方ならタダではないはずだと考えたからだ。


アパートから歩いて一時間かけてようやくお屋敷についた。

噴水付きの庭を歩くと別邸の綺麗な窓ガラスに人がうつっているのが見える。


それは一瞬で消えて気のせいだったのかと思っていたら

急に窓ガラスが開いて、なんだろうと視線をそのままにしていると、栗毛の男性がロープをつたって二階からスルスル降りて来た。


「屋敷に何か用でも?」

機嫌が悪いのか目付きが鋭い。

「あ…はい貴方は?」

祖父とはどういう関係なんだろう。


「オレはこの家のもんだけど?」

言ったら悪いけど、茶髪、革ジャン、ダメージジーンズ、ピアスの彼はあきらかな不良青年。お金持ちとは対局の存在だ。


というかコンビニでleafguardを買った彼だ。


屋敷の関係者だとするともしかすると、私の従兄弟か何かだろうか。


「あ、私雇用希望なんです」

「雇用希望ねぇ…」

なにをおもったのか私は書類を不良青年に渡してしまった。

さっきまでの剣幕は消え、落ち着いた表情で書類に目を通す彼。


「サトウハナコ…アンタ、これ偽名だろ」

目の前の人物にずいっと迫られてドキリと鼓動が高なる。

そう、彼のいうとおり書類の佐藤花子は偽名だ。

両親は祖父の反対を押し切って結婚した為、絶縁状態、父の名字をそのまま使うとバレてしまうだろうから違法だとはわかっているが偽名を記入してある。

そのまま屋敷に来たわけなのだが、案の定全て暴かれてしまうとは。

そこで焦るわけにはいかない。

私は最後までシラを切ることにした。

「ええっなんでですかぁ~?」


妙にわざとらしくなってしまったが、相手にこれが偽名だというのが確実だと証拠があるわけでもないのだ。


「今の時代、高校生で花子はない」

「ぶっ」

確かにそれはそうだけど、余りに根拠が無さすぎる。


「もう降参します、そうですよこれは偽名です。本当の名前は枝野メイノです」

「あっさり認めたな」

「だって…ぷぷっ」


「お前、ジイさんに恨みがあるんだろ?」

「え?」

なんで恨みがあるとかそんな話に?


「まあいい。偽名だって事は秘密にしてやる」

「それってつまり…」

「オレは典光寺惣岐(そうき)。お前を個人で採用してやる」

こうして両親の借金を返す為に、私は素性を変えて、母の実家でメイドをすることになった。


「中幸央酉です」


彼は祖父の執事の孫で惣岐さんの執事をしているという。

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