執事・羊守川万水 ①お迎え
両親が多額の借金をした。
「借金20憶だってどうしよう!!死ぬしかない!」
狭いアパートの中をドスドス、ドスドスと走り回る私。
一回から天井を突く音がしてようやく冷静になるとドアをノックされる。
借金とりか下の住人か、どうしよう出たくない。
ホラー映画のように自ら危険に突っ込むような真似はしたくない。
開けたら最後、太陽は浴びられない。
開けなくてもいつの間にか後ろにたって居る可能性もある。
もし宅配ならかわいそうなのでドアスコープから相手を除く。
優しそうな男の子はお金持ちの側近のようなスーツを着ている。
このボロアパートにそんな綺麗な住人はいない。
それに害は無さそうな人だ。
これ以上待たせるのも悪いのですかさず開けた。
「あの…お嬢様!!」
いきなりお嬢様と呼ばれてしまった。
どこかのヤバイ会ですか?
「ハラーガヘッタ教なんでお断りします」
「待って!ちがうんです勧誘じゃありません!!」
涙目になりながら引きとめる姿に、私も鬼じゃないし、話を聞くだけならいいかなと汚い居間に招く。
「お金持ちの家につかえてる執事さんからしたらきったねーアパートの一室ですがどうぞ!」
本来お客を招くどころじゃない状況でつい嫌みな態度をとってしまう。
「お嬢様」
にこり、執事の屈託のない微笑みは消耗した私の心を癒した。
あれ、どこかで会った気がするような――――
「典光寺財閥お嬢様のご息女である貴女様をお迎えに上がりました」
執事はひざまずくと手の甲に、よく見るシチュエーションのアレに、ただただ驚いて固まってしまうのだった。