婚約者・盤上レイン ①祖父を頼って令嬢になりました
両親が借金を作り蒸発、このままでは私が全額払うことになってしまう。
ただの学生には借金なんて返せない。
母の実家は莫大な資産を持つ有名財閥だと母がよく自慢していた。
こうなってしまえば後がない。
あの話が本当ならと、もうし訳ない気持ちになりながら祖父の元を訪ねる。
玄関付近をドキドキしながら覗いてみるとおじいさんと目が合った。
よぼよぼのおじいさんは私の顔を見るやいなや
「わああああ…お嬢様がお帰りになったぞ!!」
と叫び、大泣きしながらおどろくほど元気に走りだした。
そういえば過保護な“じい”の話を母がよくしてくれたのを覚えている。
もしかするとその人だろうか。
とにかく母が元財閥のお嬢様でお金があるといううさんくさい自慢は本当のことだったようだ。
「ワシの孫なのか…して、母親の口癖を言うてみよ」
普通は両親の名前を言うところじゃないのかと思ったけど、もし詐欺なら事前に名前を調べているからってことかな。
「母は私は財閥令嬢だったけど、お金より愛を選んで駆け落ちしたのよ?アナタも私のように素敵な恋をなさい」
と言われた通りの台詞を母に似せて自信たっぷりに言う。
これであっているだろうか、不安になりながら待ってみる。
「間違いありませんぞ!お嬢様のご息女です!!」
祖父の執事・中幸さんが言った。
「うむ」
あっさり納得された。
「借金か」
「それで…私はどうしたら」
「我が家にはライバルがおる奴の次男と政略結婚すれば解決するじゃろう」
借金をチャラにするため、結婚することになってしまった。
この家には他に跡継ぎがいないことと、次男ということから私のお婿さんになるらしい。
そのライバルというのが盤上家で、一人息子がレインという西洋人の母を持つハーフらしい。
ハーフといえば金髪だったりするんだよね。
「はじめまして、盤上レインです」
あれから一週間後、婚約の話を持ちかけるとすぐに会うという返事がきたそうだ。
「……はじめまして」
やっぱり漫画とは違うのか金髪ではなくて、暗めの茶髪だった。