序章シナリオ
―――お金がない。
「ねえメイノ、今日はヒマ?」
「ごめんバイトがあるから!」
友人がたずねると、慌ただしく教室を飛び出した。
「杖野さんって付き合い悪いわよねー」
一人の女生徒が不満気に言う。
「そんなにほしいものでもあるのかしら?」
隣にいたもう一人は然程気にしておらずカラオケの話題に切り替えていた。
友人だけは理由を知っているがある事情からそれを言えないのである。
私は去年まで普通に暮らしていた。
お嬢様学校ではないけどそこそこ有名な女子高にも入って将来のことも考えようとしていた。
でも先月お父さんがリストラされて両親は別居、お母さんと私が二人暮らしに。
お父さんは新しい仕事を見つけるまで一緒に暮らせなくなった。
お母さんは生まれつき病弱で働けないから私は昼も夜もバイトして学費も稼がないといけない、でも学校は止めたくないから働くしかない。
幸いバイトを禁止されていないから助かった。
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バイト先へ急いでいると、メイノは何かに足を引っかけて転んでしまう。
このままでは怪我をしてしまう寸前で、転ぶ前に誰かが受け止めて立て直した。
目を開いたメイノが恩人の姿を視る。
その恩人は二十代くらいの青年で、そこそこ整った顔をしている。
「何かお礼をさせてください!」これが吊り橋効果だろうかと思いながら頭を下げるメイノに青年は困ったように頭を上げさせた。
「お礼って言われても…ほしいものは手に入れてるし少女にちょっかいかけるほど困ってないしなあ…」
しばらく考え込んでから青年は閃いた、といい手をポンと叩く。
「じゃあよかったら僕のメイドになってみませんか?」
やる気があるなら車に乗ってくれと指差す。
「え…えっと冥土の土産の冥土?」
メイノは新手の変質者だろうかと少し引いている。
メイドが何かはわかっていたが混乱してべつのメイドが出てしまう。
「はは……面白いこと言うんだね」
「あ、バイトがあるのですみません。これ私の学校の連絡先です!ご用があれば枝野と呼んでください!」
さすがに自宅は教えられないので学校のならば問題はないはず。
この制服からわかるだろうし、ホームページで調べればわかるからだ。
◆◆
「いらっしゃいませ」
「あーleafguardってあります?」
少しチャラめの若い青年が聞いてきた。
leafguardは私も好きでよく飲んでいるエナジードリンクだ。
「ございますよ」
「じゃあ5本いや10本ください」
熱狂的なファンらしい。後はたくさん買っていってくれた。
――あれから品だしやレジのバイトを終わらせた。
帰り道は暗くて、変な奴に付きまとわれている気がする
よくあることだけど、私が歩くと歩いて止まると止まる。
―――これはマジなやつ?
「なにしてんだテメー」
男性がストーカー?に声をかけたようなので私は逃げた。
―――今日は疲れたなあ。早く寝て、お風呂は明日の朝にしよう。