#8 エピローグ
▼エピローグ
「で?二人は知り逢った訳なんだ?」
万年コタツの6畳の部屋に集っている三人の内の一人が意外だとでも云うかのように話を聴いていた。
今は初夏。冷房がないこの部屋には、扇風機が活躍している。
「そうですよ。不思議な出会いでしょう?かえでちゃん?」
朔夜はいつも通り、ネットで桧索をしつつ、昔話をかえでに聴かせていた。
「でさ、叶って……麗華って言う子と付き合う事はなかったの?」
叶は、キッチンの椅子に足を組んで腰を掛けながら、団扇で流れ落ちてくる汗を乾かそうとしていた。
「……俺はかえでちゃん一筋やもん!」
「なんだ、振られたんだ!」
クククとかえでは笑う。押さえ切れなくて噴き出しそうな勢いを隠しつつ。
そんな中、冷静に言葉を発する朔夜。
「夢違えした覚えはないんですけどね……宮原さんの方から、寄り付かなくなってしまったんですよね?確か……」
「……別に終わった事やし気にしてないもんなあ……可愛かったし、お金持ちやからオレとはどちらにしても縁がなかった。ちゅうことやわ……」
ぶっきらぼうに答える叶の目線は泳いでいた。
「じゃあ何?あたしはその麗華って子に劣るとでも云いたいのかしら?」
こめかみに怒り印を立てながらかえでは嫌みたっぷりに問い返した。
「……そう云う事云っとるんや無いやろが!?」
二人の間にビシビシと流れるムードに、
「痴話げんかは後にして下さいませんか?またお仕事が来ていますよ。叶?」
メールを見ながら、二人の雰囲気を和ませるかのような微笑みで、朔夜は言葉を放つ。
「またかいな……俺、またバイトクビやな……」
煩杖をつきながら、珍しくとことん付き合う気分になっている。
「初心に戻ってのことかしらねえ?」
かえでは茶化す。
「懐かしいもん想い出したら、何でもできる気分やわな…かえでちゃんも、仕事頑張ってな?で、俺を養って〜」
そんな甘い声につられるものかとかえでは舌を出す。
昔話に華を咲かせた今日一日。
また一つ、誰かを助ける為に。そして、夢を叶える手助けができるなら、それはそれで良い事かも知れないなとそう想う。
そんな昼間の出来事……
番外編は以上でした。
中学生の二人の馴れ初めでしたが、ま、こんな出会いもまた有りかなと。
次は、弐ノ巻(前編)となります。
またお付き合い頂ければ嬉しいです。