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#3 陽だまりの中の憂鬱

▼陽だまりの中の憂鬱


「部活動なんにしよう?」

 そんな事を考えながら、叶はおばさんの家を出る時に考えていた。

 実の所スポーツは大の得意だ。だから、野球部にでも入ろうかなと想って仮入部して、見学してみたは良いがこの学校の体育部は練習量が少ない。それが叶をやる気にさせてはくれなかった。ある意味同好会って感じの部活だ。

 大人しく帰宅部で勉学に励んだ方が良さそうかなとも想えた。しかし、勉強は嫌いだ。そんな時間があったら、街にくり出し、ウィンドーショッピングをしている方が無難かも知れないとさえ想えたから。


「塚原君?部活は決めた〜?」

 そんな事を考えている叶の前に、麗華は相変わらずの笑顔で席に来てはそれを訊いてくる。

「まだやねん」

 そろそろ、どうしたいか考えなければならないのになと分かっているものの、全く気持ちの整理はつかない。

「あ、チャイムやで……席につかな……」

 またいつもの授業が始まる。

 こんなことで、楽しいのかどうかも怪しかった。自由を求めて東京迄来たは良い。しかし、気が抜けるばかりだ。

 すると、突然の地震が、この教室を動かす。

 それは震度4はあるだろうと想われる地震。

 こういう時、あの地震発主時の訓練なんて役には立たないという事が判明する。

 誰しも、席を立つものはいない。楽し気にその場に待機している。

「気持ち悪……」

 そんな中ただ一人、叶はその場で吐き気がしていた。この地震が、ただの地震でない事を悟ったからだった。


「大丈夫なのかい?」

 隣で、異常な叶の体勢に冷静沈着に歴史教科を読んでいた朔夜が問いかけてきた。

「顔色悪いよ……保健室行った方が良いんじゃないかな?」

「平気や……ただこの雰囲気が……」

 おぞましい霊気。それが、地震の源になっている事を悟った。

「……先生!塚原君が気分悪いと云ってますから、僕が保健室に連れて行きます」

 すると頼んでもないのに、朔夜は叶の腕をとり上げて保健室へと促した。


「たいそうな事あらへんよ」

 結局保健室に連れてこられた叶は、ベッドに横になり朔夜に語る。

「塚原君?キミ……霊が見えるんじゃない?」

 突然云い当てられ、叶は愕然とした。何故そんな事が分かるんだ?そう云う目で問い返す。

「何でそんな事判るんや?」

「ここの所、僕の夢に塚原君が出てくるんだ」

「はあ?」

 理解に苦しむような事を云って退けるのは何なんだ?叶は、溜め息が出た。

「どうやら、キミとは縁が有るらしい」

 そのあと、叶が朔夜のテストをカンニングする夢を見ると云う、訳の分からない事をロ走っていた。

「僕にとって、良きパートナーになるのはキミじゃないかなと、そう想ったから」

 何を云ってるんだこいつは?とも想ったが、何故だか不思議と癒されるから、怒る気も失せる。

「さっきの地震……何かの予兆じゃないかと正直僕は目星を付けてるんだ……この学校の生徒から来る依頼が、凶として表れている。今のままじゃ一騒動が起きてもおかしくはない」

 すると、何か?この都住というヤツも何かに気がついてると云うのか?それとも……

「僕は、夢占いと、夢の売買はできる。でも、霊に関しては、範疇じゃないから……」

 まるで、人の考えている事を読んでいるかのようなその言葉に愕然とした。この都住には嘘をつけないかも知れない。

「ああ、この学校。かなりの自爆霊があちこちにおるわ……俺、見えるんよ。校門前に、教室の隅。至る所にな……それに、体育館の南側に位置する所…あそこは昔、防空壕が在った場所なんやわ」

 こんな話をして信じる者がいるとは想えないから、それにきっと気味悪がられるだけだから……実際、そんな事を云った先に待ち構えていた沈黙は、今でも忘れられないトラウマ。

「……そうなんだね。ありがとう。これですべてのことが解決できそうだよ」

 朔夜は『フッ』と笑うと、右手を差し出した。

「塚原君の力が必要だ。是非、僕のカになってくれないだろうか?」

 これが友情の印だとでも云うかのように、握手を求めてくる。

 それを、どう受け止めたらいいのか悩んだが、

「ええよ。俺なんかの力が必要やりたらいくらでも貸したるわ」

叶も、右手を差し出す。

 変な話、こういう事で仲良くなることは不可能だと想った。でも、必要とされることが嬉しい事だと内心喜ぶ自分がいることに気がつき、苦笑いした。

「夢占いクラブに入らない?夢をみないって云うのも関心するんだけど、近くにいてくれた方がもっと夢を理解出来るような気がするから」

 こうして朔夜は、勧誘を熱心に勧める。

 そしてそれが、全ての事の始まりだった。


「地震?」

 家に戻った叶は、早速今日あった出来事を話した。

「かなりな揺れやったんやけどな……気付かなんだ?」

「そんなものありはしなかったわよ」

 不思議そうに話すおばさんは、忙しそうに夕飯のおかずを作っていた。

 やはり、勘は当たっていた。全ての元凶は、学校に有る。

「おばさん、今日のおかずなんなん?」

 話を擦り替える事が得策であろうと叶は想い、良い匂いのするキッチン横に有る木の椅子に座り込んだ。

「後少ししたらできるから、宿題でもしていなさいね?」

 優しく笑いかけてくる。

 こういった家族が叶の理想だった。宿題は癪に障ったが。

「あ、俺、部活に入る事になってん。帰りが今迄より遅なるけど……かまへん?」

 結局、朔夜が創立した部活に入る事になった。文化部なんて、何だか性に合ってないかも知れないなとは想ったが、熱意ある勧誘に心を動かしていたから。

「叶ちゃん、部活入る事にしたんだ。それは良い事だわ。帰り遅くなっても構わないわよ。どうせ、お父さん帰って来るの遅いんだから」

 おばさんに、コロコロと笑って鍋の中のカレーをお玉でかき混ぜている。

「ただし、宿題だけはちゃんと忘れずにするのよ〜」

 改めて念を押される。

「分かっとりますがな。きちんと学生の本分だけはけじめ付けてやりますよって」

 渋々2階の白分の部屋へと上がり始める。

 宿題なんて適当にこなしてればそれで問題にないわとその時は想っていた。

 後々考えてみると、この勉強嫌いが未来の叶のキャラターを作るとも知らずに。


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