23
グルリポに負け、シロクにぶっ飛ばされたドドンメは、どこかへと消えていたし、グルリポがどこの病院に運ばれたのか、シロクたちには知る由もなかった。
もうあれから何日経っただろうか。
シロクはあの後、もう一度治療を受けて、安静にするように言われたものの、その約束を破って国中の病院を探し回っている。
セレナは部屋の隅で魂脈の加工をしていた。
今、拠点としているのはエーコが借りている小さな一室の部屋。
風呂とトイレが自室についていながら、家賃が他の物件よりも安かった。その理由は壁の薄さや日当たりの悪さ、立地の悪さがあるが、特に不自由に感じることなく、その安さに甘えてずっと借り続けている。
三人で寝泊まりするには狭い部屋だったが、シロクだけでなく、部屋主のエーコも夜以外は帰ってこないため、日中ほとんど一人で過ごすセレナにとっても、窮屈に感じることはなかった。
「十年前のリーヴ・リリースでは、三日三晩戦いが続き、その末に全滅をさせたっていうのが公式の見解だけど、噂によれば逃げ出したモンスターの行方が未だわからない個体が一匹いる……」
国の管理する図書館や資料館、酒場で情報を集めてみたものの、答えが見つかっていない謎はそれだけだ。
しかも、それを教えてくれたのは十年前は国防軍に所属し、今現在は定年退職をした、酒場に入り浸っている酔っ払いだ。
信用度は極めて低い噂だが、気にせずにはいられなかった。
「モンスターには動物の帰省本能がある。それは魔力によって引き寄せられるものであり、塔から出てきたモンスターは、その塔に必ず戻る……」
十年前に出て行って行方知れずというのであれば、今さら気にすることではないのかもしれない。
どこかで死んでいる可能性だって十分にある。
「ただいま」
食料を買い込み、部屋に戻ってきたエーコは、二人を招いてから、毎日「ただいま」を言う相手ができたことに小さな喜びを覚えている。
二人がグルリポのことで心に傷を負ったことは理解しているが、エーコは彼のことを良く知らないため、二人が動けないのであれば、とリーヴ・リリースについて、もっと知っておこうと思ったのだ。




