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09

 シロクは、跳ぶようにしてドドンメに突撃する。



「邪魔だ!」



 その間に割り込むように、視界に映った攻撃の意思を見せるシロクに向かってくる塔から出てきたゴムゴブリンを横一閃――その体を上半身と下半身で真っ二つにした。



「ドドンメ!」



 敵の名を叫び、瓦礫を足場にして両手で構えたエメラルド・ソードを頭上に構えて振り下ろす。


 視界に映るドドンメは不敵に笑っている。



「遅かったな」



 呟いた瞬間、左手からの殺気にシロクは剣で防御の構えを取るものの、空中で重たい一撃を浴びて、その小さな体は吹き飛ばされる。



「グルリポ。どういうこと」



 しっかりと二本の足で着地したシロクは、敵と定めたドドンメとの間に割って入る、つい先ほども会って親しく会話をしたグルリポを見る。



「こいつは俺の敵だ」

「グルリポも、ドドンメに恨みがあるのか?」

「ちが――」



 事情を知らないシロクに教えようとセレナが口を開こうとした瞬間、隣のエーコと同じタイミングで背後を振り返った。


 そこには数十人のセレナの所属するギルドの仲間と呼ばなければいけない男たちがいる。



「おっ、エーコじゃん」

「いつもの変な甲冑つけてないからわからなかったわ」

「あの胸見れば一発だろ」



 好き勝手に喋る男たちは、エーコやシロク、当然セレナに対しての敵意は向けていない。



「遅いぞ、お前ら」



 グルリポの後ろでドドンメが言うと、男たちは肩を竦めて見せ、一人が代表して口を開いた。



「リーヴ・リリースの被害がもっと大きくなってからの方が、それを救ったギルドの価値が高まると思いましてね」

「お前たちが決めることじゃない。お前たちが遅いせいで、こうして邪魔が入っているんだぞ」



 むっ、とそれを聞いていたギルドメンバーたちは不快な顔を見せるも、ドドンメが積み上げた瓦礫の下に降りて来ては、手にした大剣を横に薙いで、塔の入り口を塞ぐように積まれた瓦礫を一掃する。


 その力は圧巻の一言で、不満そうな顔を見せていたギルドメンバーたちも一様に静まり返る。



「とっとと中に行け。外は資格を持たない俺が守る。たっぷり魂脈を稼いでくるんだぞ」



 グルリポとドドンメ、二人の横を足早に通り抜けて、狭い塔の入り口から入っていく塔破者の資格を持つギルドメンバーたち。


 それを追いかけようと一歩前に出ようとすれば、シロクに向けられるグルリポの持つ剣の切っ先。


 シロクはグルリポの実力を、初めて会った夜の軽い組手でしか知らないが、あの万全ともいえない状態でも手強いと感じさせるだけの動きがあった。


 ドドンメよりも、決して油断ができない相手だと、シロクはグルリポのことを認めているが、一対一で本気の武器を持っているドドンメも無視はできない相手だ。



「シロクくん……。グルリポはドドンメと同じで、ギルドのリーダー役です」

「グルリポも?」



 セレナの話を聞いてグルリポを見れば、顔色一つ変えず、険しい顔でこちらを見ている。



「実際に一番上にいるのはドドンメです。それはドドンメが塔破者の資格を持たずに暇だからって考えられますけど……」



 今だからこそセレナにもわかる。


 常に自分を監視するように絶妙なタイミングで現れて欲しくない時に現れるグルリポ。


 セレナを脅し、弱味を握っていたのは紛れもなくグルリポだ。



「戦闘能力もどちらが強いかわからないぐらい強いです……」



 シロクは黙って頷く。

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