03
「いらっしゃいませ。二名様ですね」
塔を入ったらすぐ、受付があった。
机の向こう側には棒にトゲのついた鉄球をくっつけたような武器を置いた女性が笑顔を見せていた。
「左手の刻印の提示をお願いします」
シロクとグルリポは言われるまま、左手の甲を女性に向けると、女性は手にした宝石のようなものを手の甲に近づける。すると、ぼんやりと淡い色の光が浮かぶが、それは模様などではなく、ただの薄い光だった。
「うわあ、すごっ」
それがなんであるかは一瞬だったためシロクは読み取れなかったが、隣で一緒に翳したグルリポの光は、シロクのよりも大きく光っていた。
「あら、あなたは初めてですか? これが入塔許可証になっているんですよ。どこの塔でも、余程有名人になって、顔パスにでもならない限りは必ずやってもらいます」
「へえ、そうなんですか~」
「そうなんですよ。それと言うのもですね、私のような受付は毎日代わりますので、明日も同じ人がいることはないのです。いくら給料がもらえるとはいえ、拘束時間は長いですし、体は動かせませんし、一攫千金も狙えませんからね」
「でも、お金稼げないのに、お姉さんはいますよね」
「私は足をちょっとケガしちゃったからねぇ」
シロクが机の向こうを覗き込むと、女性の太ももには包帯が巻かれていた。
「そうなんですか~。僕たち、がんばってきますね!」
「ええ、いってらっしゃい」
「お姉さんも、ケガが早くよくなりますように」
女性に手を振って見送られ、シロクはグルリポに続いて、狭い木製のドアを押し開いた。
「ついに、塔の中だ!」