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 夜空の黒さを確かめるように、食後の休憩を取っていると、


「シロク、あたし帰るね」

「送って行こうか?」

「一人で行ける! ううん、一人じゃないと行けないの!」

「そうなんだ。気を付けてね」

「シロクも気を付けてね。塔にはこわ~いモンスターがいるんだよ」


 はは、とシロクは笑う。


「知ってるよ。それより僕は知らないんだけど、闘技場での『新米勇者候補決定戦』はいつあるのか、シリリィは知らない?」

「知らないよ。でも、いつかあるよ」

「それで優勝したら、一緒に塔に行こうね」

「うん、行く!」


 シリリィの運動能力の高さはシロクが認めるほどだ。

 どことなく自分と似たセンスを感じる。

 本気で組手をしたら、どうなるかわからないというワクワクした気持ちすら、シロクの胸の底には眠っている。


「じゃあね、シロク! 明日も来るね!」

「僕はだいたいこの辺にいるから」

「ばいばーい」

「ばいばい」


 シリリィは大きく手を振って、走り出すものの、シロクの視界の中で動きを止めて、倉庫に使われている建物の向こうを仰ぎ見た。


 シロクもつられて見れば、そこには塔がある。


 朝だろうが夜だろうが、目を凝らしてみれば、左右にうねるように揺れている。


「そういえば中に入ると揺れている感じはしなかったな~」


 一階部分にしか入っていないせいかもしれない。


 シロクもシリリィと同じように、塔を見つめていると、その向こうに半分の月が見えた。

 塔の中で採取できる花や鉱石、あるいはモンスターを倒して手に入る魂脈を、魔法のエネルギーにして発電するだけでなく、いつだって頭上に上る月の明かりがあるから、人は夜を恐れなくなった。

 だが、その明かりがなにも届かない塔の中はモンスターが活発に動き回る。

 元々、光のない暗闇の地下迷宮で過ごしていたのだから、当然と言えば当然かもしれない。

 しかしそうなると、なぜモンスターは光を求めて塔を登るのか、わからなくなってくる。


「うん、昨日の場所で寝よう!」


 そう覚悟を決めたシロクが視線を落とすと、シリリィの姿は忽然と消えていた。

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