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伝説のスナイパー  作者: まこと
97/162

No.97

8月24日。 東京は連日猛暑日を記録しており、街行く民衆は暑さに身を焼かれ、すっかり疲弊し切っていた。

だが下町アパートに居を構える策士・葛原は、そんな暑さをも凌駕するほどの灼熱の恋情に身を焦がされていた。

それもそのはず、本日は希代の美少女・残虐非道の琴江と逢瀬の日なのだ。

鏡の前での身だしなみに余念がない。 琴江との逢瀬に懸ける意気込みが感じられる。


先に行われた合コンでは、言わずもがな少女達の人気は葛原に集中した。

特別何かに突出している訳でもなく、かといって何かに劣っている訳でもない、全てに於いて物事を卒なくこなす葛原が好まれる傾向にあった。

疫病神の静江や道江はともかく、可憐な絹江から電話番号を聞きそびれたのは悔やまれたが、琴江から電話番号を聞き出せたことで、全てをチャラにさせてくれる程大きな収穫となった。

「待ってろよ、琴江。 必ずモノにしてやるからな」鏡の前でほくそ笑む。

葛原は本来、釣った魚に餌はやらない主義である。 獲物に狙いを定め、狡猾に近づき、極めてスピーディに喰らいつき捕獲する。

あとは気楽なものである、相手におべんちゃらを並べ立て、祭り上げるだけでいいのだ。

しかし、そんなぞんざいな扱いを受ければ、激怒するのが女の心理。 だが策士・葛原は、巧妙な話術で相手を煙に巻くのが、神懸かり的に卓越しており、相手の感情を抑える技巧に長けている。

そんな葛原が相手にするのは、残虐非道と謂われた琴江である。

他の女とは違い、一筋縄ではいかないのは目に見えているのは明確である。

「これでよしっと!」

準備が整い颯爽と玄関を開け、真夏の熱風に晒される。 毛穴が開き、一気に汗が噴き出てくる。

葛原とほぼ同時に玄関を開ける者がいた。 104号室のスナイパーである。

うわっ、最悪なタイミングで出てきたな。

「こんにちは。 ジミーさんもこれからお出かけですか?」

作り笑いも手慣れたものである。

「よう。 ちょうど大輔と食事にでも行こうかと思ってた所だったんだ」

「ああ、ごめんなさい。 これから外せない用事があって、どうしても行かなきゃいけないんですよ」

「そうか、急用なら仕方ないな。 じゃあ、明日の昆虫採集はどうする?」

スナイパーと葛原の間では、早朝に郊外へ出て、昆虫採集をする遊びが流行っていた。

「それもごめんなさい、多分朝まで戻らないと思うんです」

「分かった。 大輔もいろいろと忙しいだろうから、また次回にするよ」

「本当に申し訳ないです。 それじゃ、いってきます」

何だ、今日はあっさり引き下がったな。 まあいいだろう、邪魔者はいなくなったことだし、これで心置きなく琴江と会えるぞ!


よし、やっといなくなったか。

葛原が立ち去るや否や、携帯電話を取り出し、絹江に電話をかける。

「もしもし、絹江ちゃん! これからうちに来れそうかな?」

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