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伝説のスナイパー  作者: まこと
92/162

No.92

「椎名ルール」を乱発した影響により、皆の施行限度数が尽きる事態に陥っていた。 自身の名が冠せられたルール権を行使せず、施行限度保有数首位を誇っていた椎名でさえも、女性陣に大盤振る舞いした結果、施行限度数は残りわずか1となっていたのだ。

「あたしが王様だ! じゃあ、2番が5番にキスをする」

2番・葛原、5番・琴江。

「琴江ちゃん、目つむってて。 すぐ済ませるから」葛原が興奮を抑え促す。

「え、すぐ終わらせるんですか?」琴江が挑発的な眼差しで、葛原を見つめる。

「ち、ちょっと葛原さん止めてよ! 琴江とキスなんて、絶対許さないから!」

刹那的な王位の座に君臨した道江は、静江と椎名にキスをさせようと目論み、命令を下したのだが、それが却って裏目に出たようである。

「これは道江ちゃんの命令じゃないか。 俺達はちゃんとプロフェッショナルに徹してるだけだよ。 それに残念ながら、俺にも琴江ちゃんにも施行限度数がない状況なんだ」

琴江とキスをしたいが為に、理論の抜け穴を探し、巧妙な話術で相手を納得させる。

「ちょっとそこのクソデブ! ぼやっとしてないで、最後の施行権をさっさと琴江に譲渡しな! 葛原君が琴江とキスしたら、どうしてくれるんだい!?」

静江の憤懣たるや如何ばかりか、最後の施行権を保有する椎名に怒鳴り散らす。

「えっ、あ、し、施行権・・・」

「いえ、それは得策とはいえないわ。 今後無理な命令が下される可能性が出てきてもおかしくない。 その最悪な時の為に、残しておくのがベストよ」

ここに来て、残虐非道の琴江が顔を覗かせる。

「琴江、いい加減におし! いい? 葛原くんは、あたいの大切な人なんだよ。 それを泥棒ネコみたいな真似して、恥ずかしいと思わないのかい?」

「でもまだ付き合ってる訳じゃないんでしょう? それにこれはゲーム、お互い本気じゃないのよ」そういうや、葛原に向き直る。

「葛原さん、優しくして下さいね」琴江が葛原の首に手を回し、微笑む。

「もちろん」葛原も琴江の背中に手を回す。

嫉妬と羨望の眼差しの元、二人は口づけを交わす。

「ああっ! あたいの葛原君が・・・ こんなんじゃ、もう食事も喉を通らず死んじゃうよ!」静江が涙を流し、崩れ落ちる。

恋愛如きで餓死していたのでは、人類はここまで繁栄してはいないだろう。

「葛原さん、もういいでしょ! 早く琴江から離れてってば!」道江がヒステリックに泣き叫ぶ。

「道江ちゃん、大丈夫かい?」

居たたまれなくなった椎名が、道江の肩に手を置く。

「いやぁ、そんな薄汚い手で、気安く触らないでよ! 何であたしだけ、こんなデブに触られなきゃいけないの!?」椎名の薄汚い手を払い落とす。

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