No.91
「椎名ルール」を導入してからの王様ゲームは、軽快そのものだった。
「や、やった! 僕が王様だ! 2番が王様に胸を揉ませる」
2番・葛原。
人生初の王様ゲームで、王の座に君臨した椎名の命令は、欲望をそのまま口にしただけである。
「椎名ルール施行!」葛原が叫んだ。
また次のゲームに移行する。
「あ、俺が王様だ! 5番が1番を罵る」
5番・琴江、1番・葛原。
「この甲斐性なしの似非公務員! 国民の血税の無駄遣いして、恥ずかしいと思わないの! あんたは国家の犬らしく国民に、媚びへつらってればいいのよ!」
次のゲームへ。
「おや、今度はあたいが王様だね。 3番が4番の顔面を殴る」
3番・スナイパー、4番・椎名。
「椎名さん、悪く思わないで下さいよ。 これもゲームだから」スナイパーが、満面の笑みを浮かべながら構える。
「し、し、椎名ルール施行ーっ!」
自身の名が冠せられたルール名を叫び、命拾いをする。
次のゲーム。
「あ、あたしだ。 えーと、5番と1番が一緒に歌を歌う」
臆病者の絹江らしい平和的な命令だ。
5番・道江、1番・静江。
「じゃあ、デーモンズ行くよ」
「あんな時代遅れの歌なんて嫌よ! デスモンにしてよ!」
「そんなに嫌なら、椎名ルールを使えばいいんじゃないかい?」
「何であたしが使わなきゃいけないのよ!? 静江が使えばいいじゃない!」
この時、静江の施行限度数2、道江の施行限度数1であった。
「じゃあ、お互いでルール施行すればいいんじゃないかな?」葛原が提案する。
「もし無くなったら、余ってる人から譲渡してもらえばいいんだし」横目で椎名を見る。
「それもそうね。 椎名ルール施行!」
これで静江の施行限度1、道江の施行限度数0。 スナイパーの施行限度数2、葛原の施行限度数3、絹江の施行限度数1、琴江の施行限度数1、椎名の施行限度数9であった。
圧倒的に、椎名が施行限度数を保有している状況となっていた。
王様ゲームはまだまだ続く。
「また僕が王様だ! 4番が王様にマッサージをする」
先ほどの欲望に満ちた命令で反省したのか、今度は控え目な命令に徹する。
4番・スナイパー。
「椎名ルール施行!」
次のゲームへ。
「よし、今度は俺が王様だ。 3番と1番が口移しで酒を飲ませる」
3番・椎名、1番道江。
「こ、こここれは、ゲ、ゲームだからねっ!」
椎名の興奮は如何ばかりか、道江を目の前にして鼻息を荒げる。
「ねえ、椎名さんのルール施行権が欲しいな。 まだ初めて会った人と、急にキスだなんて恥ずかしくて出来ないよぉ、あたし」
葛原の唇を奪っておきながら、いけしゃあしゃあと恥じらいを見せる。
「えっ・・・ じゃあ、道江ちゃんにルール施行権を譲渡します・・・」
「ありがとう、椎名さん。 椎名ルール施行ーっ!」
椎名にとって、最も不利な展開となったいた。