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伝説のスナイパー  作者: まこと
89/162

No.89

人生初のカラオケで、辛酸を舐めた椎名を皮切りに、皆が次々と歌い出す。

静江がデーモンズのメガヒットナンバー「グロテスクリング」を葛原と熱唱し、道江もデスモンタナの「銀座炎上」を葛原と共にシャウトを響かせ、琴江と絹江はジェニファーよし子の「ハイヒールの味~Domestic Violence~」を爽やかに歌い上げた。

二人が気に入った曲を共有して歌う二人一曲制。

限られた時間内で回転を上げるには、極めて効率的なシステムに思えるが、ことスナイパーにとっては、歓迎されるべき状況ではなかった。

椎名に檄を飛ばしておきながら、スナイパーも椎名と同様、カラオケに行ったことも、ましてや人前で歌ったことすらなかった。

まだ猶予があると思い悠長に構えていたら、もう順番が回ってきたのだ。

もしここで歌おうものなら、皆が己の失態を待ち侘び、晒し者にしようと鎌首をもたげている。 カラオケ初心者にありがちな被害妄想に陥っていた。

だが歌わなければ、今度は晒し者以上に酷い村八分が待っている。

進むも地獄、戻るも地獄である。

そんな極限状況下にありながらも、心のどこかでは安心材料もあった。

それは、椎名以上に酷い状況にはならないだろうという、全く根拠のない自信であった。

だがその根拠は、概ね的を得ているといっても過言ではないだろう。 それほどまでに椎名の歌は、酷いものだった。


「よし、俺はこれで行ってみるか」

スナイパーが選曲したのは、ダンディ・カルロスの「メキシコに帰りたい」だった。

ここでは妙な冒険心は捨て、普段から自身が聞き慣れている曲をチョイスするのがセオリーであろう。

「へぇ、ダンカルですか、懐かしいですね。 洋楽では割と有名ですもんね」

さほど洋楽に精通していない葛原でも分かるほど、知名度の高い楽曲である。

ちっ、このバカも知ってるのか。 これじゃ、余計に失敗は許されないじゃないかよ!

やがてイントロが終わり、スナイパーの歌声が炸裂した時、この場にいる愚民達は、皆呆気に取られていた。

す、すごい! 英語で歌ってるっ!

英語圏の国に生まれ育ったスナイパーが、母国語で歌っているだけなのだ、当然のことといえるのだが、普段から流暢に日本語を駆使するスナイパーを見ている彼等には、十分過ぎるほどセンセーショナルな出来事と捉えられても無理はない。

歌唱力の賛否は差し引いても、受けた衝撃は計り知れないものだった。

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