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伝説のスナイパー  作者: まこと
87/162

No.87

辛くも静江と道江を宥めることに成功した葛原御一行は、二次会の会場であるカラオケに来ていた。

室内は七人で使用するには多少広いスペースとなっており、醜男の椎名が部屋の隅に縮こまり、スナイパー達はそこから更に、ワンクッションもツークッションも離れた位置に座る。 疫病神の静江と道江を両手に従えた葛原、錆びれた女神の絹江を横に置いたスナイパー、そして隣に容姿端麗の琴江が鎮座する。

明らかに椎名への悪意が感じられる、極めて無難な布陣であると言えよう。

「葛原さんはいつも何歌うの?」道江がメニュー表を検分しながら尋ねる。

「特に決まってないよ。 あ、でもデスモンタナはよく歌うかな」

「えっ! 葛原さんもデスモン好きなの!? あたしも大好きだよ! この前ベスト盤買ったもん」

「道江ちゃんも買ったんだ! 三曲目の銀座炎上はシビれたね」

「銀座炎上は着うたにしてるよ! 何か葛原さんとは、シンパシー感じちゃうな。 やっぱりあたし達、惹かれ合う運命なのかも!」そう言うや否や、渾身の力で抱きつく。

それを見た静江は憤怒に駆られ、マイクで道江の後頭部を殴打する。

ゴッ!「ぎゃっ! ち、ちょっと何するの!? 頭が陥没して死んだらどうするつもりよ!」後頭部を摩り、流血箇所がないか確かめる。

「ふんっ、あんたみたいな大喰らい女、死んだ方が世の為、人の為ってもんだよ。 そんなCD買ったくらいで運命感じてたら、百二十万人と運命共同体になっちゃうじゃないかよ!」

百二十万と言う数字は、デスモンタナのベストアルバム「樹海」の売り上げセールスである。

「まあまあ、二人とも落ち着いて。 ところで静江ちゃんは、何が好きなの?」

「あたいは、デーモンズが好きだよ」

「懐かしいな。 学生の時ライブに行ったよ!」

「本当かい? デーモンズは、ファンの年齢層が高いから、誰も聴いてないと思って心配だったんだよ」静江も葛原に抱きつく。

ここぞとばかり、静江に報復の意を込め、耳朶に拳を撃ち込む。

グチィ!「ぎゃーっ! な、何するんだい! あたいの耳が、カリフラワーみたいになったらどうしてくれるんだよ!? うぅ、痛いったらありゃしないよ!」耳朶を押さえ、悶え苦しんでいる。

「さっきの仕返しよ、この色情狂!」

「誰が色情狂だって!?」

少女達の凶暴性を目の当たりにした葛原は、共倒れを願い仲裁に入ろうとしなかった。

「絹江ちゃんと琴江ちゃんは、何が好きなの?」

葛原にとって疫病神から解放され、絹江と琴江に話し掛ける千載一遇のチャンスが訪れた。

「あたし達はジェニファーよし子が好きだよ」絹江が答える。

「ジェニヨシか! この間のシングルは感動したね」彼女達に同意を示す。

葛原は世間から高い評価を受けた楽曲を、広く浅く網羅していた。

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