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伝説のスナイパー  作者: まこと
86/162

No.86

静江と道江を宥めている葛原を尻目に、次はスナイパーの自己紹介である。 人生で二度も自己紹介するのは、後にも先にもこの日だけであろう。

「あの、ジミーです。 仕事はフリーランスの探偵をやってます。 よろしくお願いします」

これ以上余計な詮索をされない為には、感情を押し殺し、自己紹介だけに徹する。 プロは決して同じ状況に陥らない。 実戦も合コンもさして本質は変わらないのだ。

「ジミーさんですね。 探偵ってどんなことをやってるんですか?」

またか! 自身がどれだけ感情を押し殺し努力しようとも、他人は一切お構いなしである。

「あのね、ジミーさんは素行調査が主な仕事なんだよ」スナイパーの横にいる「錆びれた女神」が代答する。

ターゲットの素行調査をし、最後に銃弾を撃ち込むことまでは、絹江に教えていない。

「絹江はマッチョな人好きだもんね。 他にも何か調べたりするんですか?」

まだ聞くのかよ・・・

ここまで掘り下げられると、返答に窮してしまう。

ここは無難な答えに集中せねば。

「あとは・・・ 浮気調査や家出人捜索くらいだよ」嘘八百を並べ立てる。

まずい。 これ以上質問を浴びせられたのでは、嘘で鎧った真実に破綻を来たしてしまう。

「琴江ちゃん、今度は椎名さんに何か聞いてあげたらどうだい? ずっとあんな感じで、黙ってうな垂れてるみたいだからさ」

琴江の好奇心のベクトルを、無理やり椎名に向けさせる。

「僕がいつうな垂れてたんですか? ただ明日からの任務が、困難を極めるから、それの熟考をしてただけですよ」

明日からの椎名の任務は、食べて飲んで寝るだけである。

今までと寸分たりとも違わず、どこにも熟考を要するシチュエーションなどないのだ。

「やれやれ、これ以上僕の経歴を大っぴらに出来ないんだけどな。 一般市民に僕の正体がバレたら、組織から始末されてしまうんだよ」

半ば悦に浸りながら、脚色した経歴をひけらかす。

「あ、それでしたら、けっこうです」琴江があっさりと引き下がる。

えっ!? スナイパーに見せた琴江の好奇心が、当然の如く自身にも向くと思ってただけに、精神的ダメージは計り知れないものであっただろう。

「で、でも今日は組織の人達も大目に見てくれそうだから、特別教えてあげるよ。 僕は椎名 恒夫、ある特務機関から調査依頼を任されてるんだ」

琴江の御前でも、椎名の子供染みた自己紹介は猛威を振るった。

そもそも合コンの席で、自身の経歴をひけらかすことを了承する秘匿組織など、今後の行く末が危ぶまれるだろう。

「そうですか、よく分かりました」

椎名など端から歯牙にもかけていなく、聞くだけに留めておいた。

今だ、琴江の残虐非道振りは発動せず。

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