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伝説のスナイパー  作者: まこと
78/162

No.78

「大輔、遅いじゃないか! 今まで何してたんだよ!?」

「葛原君が遅いから、トイレで倒れてるんじゃないかと、皆で心配してたじゃないかよ」

皆の心配を他所に葛原が椎名を従え戻って来ると、別段何も変わった様子はない。 スナイパーが場を荒らしているものだと思っていたのだが、予想がすっかり外れてしまった。

まあ、いいだろう。

「ごめんなさい。 椎名さんが酔って気持ち悪がってたから、介抱してたんですよ。 ね、椎名さん」

「えっ!? あ、ああ。 普段はシャトーマルゴーしか飲まないから、飲み慣れないものを飲んで、悪酔いしちゃったみたいなんだ。 心配かけて悪いね」

椎名が口にしたこともない、唯一知るボルドーワインの銘柄を挙げる。

へぇ。 椎名に対する一同の反応は、冷やかなものだった。 誰一人として心配する素振りを見せる者はいなかった。

そもそもシャトーマルゴーを常飲する者が、下町アパートに住もうと思うはずがない。

最早、椎名の言うことを誰も信じてはいないのだ。

「あ、そうそう。 椎名さんが君達に何か大事なことを言いたいそうだよ」

「気が早いですね。 まだ誰とも話してないのに、もう告白するんですか?」スナイパーが皮肉を織り交ぜ、冷やかしを入れる。

それを聞いた女性陣は、一斉に青ざめ、身構える。 彼女達は、デブ椎名如きに恋心を抱かれることすら噴飯物なのだ。

椎名も一気に青ざめ、分厚い唇がブルブル震え、怯えた目で葛原を見る。

「えっ、あ、あのことはもう終わったはずじゃなかったのかっ!?」

葛原が椎名にしか聞こえない声量で囁く。

「世の女は厳しい男に惹かれるものですよ。 ここは一つ、ビシッと言ってやって下さい」

文字通り、葛原の悪魔の囁きを聞いた椎名に戦慄が走った。

厳しい男がモテる!? 優しい男がモテるんじゃなかったのか?

今まで椎名が培ってきた常識が、覆された瞬間である。目から鱗とはこのことであろうか。

よし、そう言うことなら。

「子猫ちゃん達、高校生がいつまでも大人の真似事してちゃいけないよ。 男は夜になると狼に変身するんだよ。 さぁ、背伸びはもうやめてお家に帰りなさい。 子供の起きてる時間じゃない」

椎名の戯言をいなすには、まだ若過ぎたようである。

「何ですって!? 人を見た目で判断しないでおくれよ! あたい達が未成年だと言う明確な証拠でもあるってのかい?」

盗人猛々しいとはこのことである。 ここから静江達の猛追が始まる。

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