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伝説のスナイパー  作者: まこと
71/162

No.71

「待ちに待った自己紹介ターイム! はい、まずは俺から行きます」

葛原は、硬くなりがちな場の雰囲気を和まそうと恥を曝け出し、無駄な努力に精を出す。

「えー、名前は葛原 大輔です。 年は二十六歳、血液型はO型、職業は公務員です」

自己紹介を終え、女達の反応を伺うが、別段何のリアクションも返ってこない。

あれ、おかしいな?

普段なら公務員と聞き、羨望の眼差しで何かしらのリアクションが返ってくるはずだが、今日に限っては勝手が違うようである。

「あの、公務員って、学校の先生なんですか?」真ん中の女が葛原に問いかける。

よし、来た来た! 毎回同じリアクションばかりだな。

「そこはご想像にお任せしますよ」葛原も毎回同じ答えで返す。

そうですか。 ただそれだけである。

「はい、次はジミーさんの番ですよ」

気を取り直した葛原は、隣にいるスナイパーに自己紹介の権限を譲り渡す。

こ、こいつ、何してくれてんの!? 職業を紹介するなんて、一言も聞いてないぞ!

自己紹介に職業紹介が組み込まれることなど、さして驚くべきことではない。

しかし、まともな社会生活を送っていないスナイパーと椎名にとっては、答えに窮してしまう。

「ジミーです。 年は三十三歳、血液型はAB型、仕事は・・・フリーランスの探偵をやってます」

あながち間違いではない職種であるが、人の命を奪う行為は割愛した。

「探偵って、どんなことするのさ?」

「素行調査が主な仕事だよ」

ターゲットの素行調査をし、最後に銃弾を撃ち込むのが主な仕事である。

「はい、次は椎名さんの番ですよ。 ずっと外の景色ばかり見てないで、自己紹介して下さいよ」

これ以上余計な詮索をされては困る。 即座に自己紹介の権限を椎名に回す。

ふぅ、やっと僕の番か。

「椎名 恒夫、四十二歳、A型。 職業は、ある特務機関の調査依頼を任されている。 以上だ」

先月、交通調査のアルバイトをしたことを思い出し、それに脚色を付け加えただけなのだ。

はぁ? 何言ってんだ、こいつ?

葛原が身を呈してまでして盛り上げようとした場の雰囲気が、椎名の自己紹介で急降下した。

「どういう調査なんですか?」椎名の向いに座っている女が訊ねた。

ふっ、馬鹿な女だな。

「それを喋ったら、組織に始末されてしまうんでね。 これ以上はトップシークレットだ」

交通調査の中年アルバイトを始末しても、国土交通省には何の利益もない。

合コン開始早々から、椎名によって出鼻を挫かれた男性陣であった。

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