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伝説のスナイパー  作者: まこと
70/162

No.70

「葛原君、待たせてごめんよ」葛原と約束したであろう女が、遅れた非礼を詫びた。

なるほど確かに葛原の言った通り、アドバンテージがこちらに付いた。

だが、ただそれだけである。

即座に見返りを欲するスナイパーと椎名には、男女間の駆け引きがまだよく理解できていないらしい。

こいつ等が今日の合コン相手か?

スナイパーは、目の前の三人の女達を吟味し始めた。 まだあどけなさが残っており、メイクや装いも未熟。 取り立てて派手でもなく、かといって地味でもない、平均的と言う表現がぴたりと当てはまる容姿である。

この中で一番ブスな女は誰なんだ!?

昼間の「合コン攻略作戦会議」で合コンを円滑に進めるためには、キーマンである一番ブスな女を攻略するのが、極めて重要な課題だった。 そう豪語していた百戦錬磨の葛原でさえ、スナイパーや椎名と同様に、容姿が劣る女を見極め兼ねていた。

三人が三人ともレベルが近接し合っており、愚かな男達の審美眼を狂わせていた。

こうなったら、話しながら見極めるしかないな。

「遅いじゃないかよ! 今日の合コンが楽しみで、ずっと待ってたんだよ」

「な、何だい、嬉しいこと言ってくれるじゃないか。 そんなこと言われたら、来た甲斐があったってもんだよ」

「本当のことを言ったまでだよ。 さて、店も予約してあることだから早速移動しようか。 自己紹介はそこでしようよ」


「それでは今日のこのメンバーの出会いを記念して。 かんぱーい!」

「かんぱーい!」

居酒屋の個室に案内された葛原御一行は、席に着くなりビールで乾杯した。

葛原とスナイパーは、喉を鳴らしながらうまそうにビールを飲む中、椎名と女達は苦行に堪えるかの如き表情でビールを口に運ぶ。

「三人ともビール苦手なの?」

ジョッキを半分以上明けた葛原が、三人を気遣う素振りを垣間見せる。

「うん、普段ビールは飲まないで、カクテルばかりなんだよ」

「だったら、俺とジミーさんで三人のビール飲むよ。 ね、ジミーさん大丈夫ですよね?」

「ああ、全然問題ないよ」

「じゃあ、僕のも飲んでもらおうかな?」

椎名は、一口しか飲んでいないジョッキを、スナイパーにそっと差し出す。

こいつ、何をいい気になってるんだ?

「椎名さん、自分で注文した物は、責任を持って自分で飲んで下さいよ」

「そ、そんな殺生な・・・」

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