No.7
午後7時。 買い物袋を持ったスナイパーは東横インの前にいた。
今日は散々な一日だったな・・・
自動ドアを入ると何人かのビジネスマンが談笑していた。皆スナイパーの異様な格好に、目を見張り振り返る。
「いらっしゃいませ」
フロントには三十代と思しき男が立っていた。
「泊まりたいんだが、非常階段の脇の部屋で空いてる所はあるか?」
刺客の襲撃を考慮してのことである。
「はぁ、ただいま非常階段の脇の部屋でしたら、501号室が空いておりますが・・・」
「そこに泊まりたいんだが」
「お客様、大変失礼ですが、別な部屋でしたらすぐにご案内できますが」
「いや、どうしてもそこの部屋にしたいんだ」
「何か非常階段の脇の部屋に強い思い入れでもあるんでしょうか?」
まずい。詮索されてはまた疑われる。
「ああ、昔ホテルに泊まってたときに火災があってね。それからはすぐ逃げられる部屋に泊まることにしているんだよ」全くの嘘である。
「そういうことでしたら。 ただ何かありましても、当ホテルでは責任をおいかねますので」
「ありがとう」スナイパーは気にせずカードキーを受け取りフロントを後にした。
501号室。部屋に入り、疲れきったスナイパーは休む間もなく盗聴器の類やトラップ、侵入者はいないか全てをチェックして回った。
「よし、異常なし」
買い物した品物を冷蔵庫にしまい込み、シャワールームへ。
人生で最も長く感じた一日の疲れをシャワーで洗い流す。
すると、ガチャガチャガチャガチャガチャガチャ!
いきなりシャワールームの扉を無理やり開けようとしている者がいる。 すぐに銃を手に取った。いつでも銃は手に届くところに。スナイパーの習性である。
全裸のままシャワールームを出て銃を構える。 部屋にはスナイパー以外誰もいなかった。バスタオルを取って戻ってくると、今度はテレビが点いていた。
おかしい・・・ドアの鍵や窓の鍵はすべてロックしてあるのに・・・
もう一度部屋中をチェックする。今度は念入りに調べたが何も異常はない。
水でも飲むか。
食べ物は人から出してもらったものは決して口にしない。この世界に生きる者にとっての鉄則である。
冷蔵庫を開けると、通常では考えられないほどの巨大な女の顔がスナイパーを睨んでいる!
「うおっ!」
バタン!思わず冷蔵庫を閉めた。
「な、なんだったんだ今のは!?」