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伝説のスナイパー  作者: まこと
65/162

No.65

「合コンか。 どうかな? ちょっと今晩は用事があって忙しいんだよね」

嬉しさによる照れ隠しからか、それとも葛原に対してイニシアティブを握りたいのか、椎名がもったい付ける。

これまで何の用事もなかった椎名に、合コンを蹴ってまでの用事などあろうはずがない。

「それならしょうがないですね。 じゃあ、また次の機会にお誘いします」

えっ? あっさり引き下がる葛原に焦りを感じたのか、ここでチャンスを逃すまいと、恥も外聞もなく食い下がる。

「そ、そう言えば、用事は今日じゃなくて来週だった。 今日は大丈夫だ、合コンに付き合ってあげてもいいよ」

「ありがとうございます。 では、早速俺の部屋で打ち合わせしましょう。 あともう一人も部屋で待ってますから」

椎名の見え透いた強がりなど、策士・葛原に通用するはずがないのだ。

椎名の希薄な人生観如き、たやすく見抜けて当然である。

飴と鞭を使い分け、モテない人間の心理を巧みに操る。 策士・葛原に自然と備わっていた能力なのだ。


策士・葛原、スナイパー・ジミー、デブ椎名、ライフスタイルも文化圏もバラバラな三人が、合コンという名目の元、105号室に集結した。

何も知らずに葛原の部屋に上がり込んだ椎名は、心臓を鷲掴みにされた。

そこには妄想世界で、いつも椎名を痛め付けている虐待者・スナイパーがいたのだ。

もう一人って、こいつだったのか。

「ど、どうも。 おはようごさいます」

おずおずと頭を下げる。

「ああ、椎名さんでしたっけ? 今日はよろしくお願いしますよ」

スナイパーの横柄な態度に萎縮した椎名は、部屋の隅に腰掛けた。

「では今夜のための作戦会議をしましょう。 と、その前に、飲み物がなかったんだ。 何か買って来ますけど、お二人は何がいいですか?」

「セブンアップ」

「あ、じゃあ、僕はコーラでいいや」

「分かりました。 ちょっと行って来ますので、会議はその後にしましょう」

部屋の主、葛原が出て行き、スナイパーと椎名が取り残された。

「・・・・」

「・・・・」

お互い黙っているせいか、葛原が出て行って3分と経っていないのに、椎名には3年にも感じられた。

「あ、あの」椎名は萎縮しながら口を開く。

「何か?」スナイパーは相変わらずの横柄ぶりである。

「あの、この前貸したシティーハンターのDVD返してもらえませんか?」

「DVD? さあ、何の事やら、そんな物借りた覚えはありませんが」

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