表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
伝説のスナイパー  作者: まこと
59/162

No.59

「美香さん、すごいじゃないか! あたい達のダンスをもうマスターしてるなんて!」静江が媚びへつらう。

「ふふっ、こんなの当然よ」

美香は似非ダンスチームが3ヶ月も掛け、苦心の末、編み出された振り付けをわずか3日でやってのけたのだ。

彼女達のダンスはセオリー外のモーションを強いられる為、通常は不可能とされていたのであるが、美香は不可能を可能とし、そして驚異的なスピードでそのスキルを吸収していた。

美香はダンスの回転による眩暈と嘔吐感に対応できず、三半規管の麻痺という洗礼に苛まれていたのである。

「美香さん、ほんとにすごいです! ほんのちょっとの期間なのに、テンポもバッチリ合ってる」絹江がおずおずと褒めそやす。

「これくらい大したことないわよ」

「これは天性そのものね。 神は二物を与えずって言うけど、それは大きな間違いだったみたいだわ。 美香さんはダンスも上手いし、何よりきれいだわ」琴江が手放しで称賛する。

「相変わらず口が上手いのね、琴江ちゃん。 でもそのことには薄々感付いてたけどね」

琴江の美辞麗句に、美香は増長し切っていた。

「美香ちゃん、練習終わったらマック食べに行こうよ! アップルパイ食べたい」

道江は相変わらず、食べ物以外に興味を示さない。

「ふふっ、ほんとにあんたは食べることばっかなんだから。 夜遊びは駄目よ、子どもは帰って寝なさい」

大して年が離れていない者へ、尊大な態度で諭して聞かせる。

「えー、あたし達もう立派な大人だよ」

皆が、美香を持て囃すのには理由があった。

美香が頭を強打し、気絶したのを死んだと思い込んだメンバーは、死体をビルの屋上から落下させ、自殺に見せかけようとした、いわゆる「木嶋美香死体遺棄計画」の全貌を知られるのが不安だったのだ。

計画殺人は、少年法の範疇を大きく超えるものである。

卑怯者の静江は、美香を焚き付けた張本人とし、媚びへつらうことで少しでも量刑を減刑してもらう。 それと同時に、譲り渡したリーダーの座を奪回しようとしたいが為に。

臆病者の絹江は、美香殺害未遂の罪で捕まりたくないが為に。

残虐非道の琴江は、万が一殺人未遂の首謀者として告訴されたとしても、情状酌量の余地を勝ち取る為に。

そして、大食漢の道江は共謀者として服役したら、好きな食べ物を食べられないからであった。

腹に黒い物を、一物も二物も隠し持った者同士の戯れであった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ