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伝説のスナイパー  作者: まこと
58/162

No.58

ジャンプターンを繰り返すうちに平衡感覚を失い、吐き気に悩まされながら時計を見ると午前3時を指していた。

こんな夜中に誰!?

思い当たる節がある・・・ そう、故郷の秋田で借金を背負わせてきた美香の恋人、権田 徳次郎である。

まずい、ここの住所を突き止められたのか?

目が回る中、辛うじて思考が従いてきているみたいである。

恐る恐るドアスコープを覗き見る。 そこには、かつての恋人権田ではなく、アニメ柄のTシャツを着た外国人が立っていた。

あいつは、104号室の密入国者じゃない。 何なのよ、人様を驚かせといて!

美香の中では、スナイパーを密入国者だと思い込んでいたのだ。 あながち間違いではない推理である。

害はないと思うが、ドアチェーンだけは掛けたまま扉を開ける。

「夜分遅くに恐れ入ります、104号室に住むジミーです。 あの夜も遅いことですし、物音を何とか止めてもらえないでしょうか?」

密入国者の分際で、あたしに説教でもしようって言うの? 面白い、受けて立ってやろうじゃないの。 あたしには四人を世界に連れてく崇高な使命があるのよ。

今にも怒り狂いそうな感情を押し留め、涼やかな顔で応対をする。

「ああ、それはご迷惑をおかけしてすいません。 ただ、こんな夜遅い時間に人の部屋のチャイムを鳴らすのは非常識だと思うんですけど!」

はい、さよーなら!

バタン! 美香は勢いよく扉を閉めた。

これがスナイパーが妄想世界で、デブ椎名の魔手から全力で護り続けてきた女の本性であった。

途中で邪魔が入ったおかけで、貴重な時間がもったいないじゃないのよ!

憤慨たる気持ちで、もう一度ダンススタート。 その時、美香は気付いた。

あれ? 痛くない。 今だけは右腕が何ともないわ!

スナイパーを怒鳴りつけ、ダンスで興奮作用の強い脳内麻薬アドレナリンが分泌されたのだ。 右腕の痛みは一時的に打ち消されている状態にあった。

しかし、回転から来るひどい嘔吐感だけは増すばかりであった。

と、その時『バカヤロー! 撃てるはずないだろうがーっ!!』

あの密入国者、まだいたの!?

ガチャッ! 怒り心頭の美香は勢いよく扉を開けた。

「ちょっと、いい加減にしてくれませんか!? さっきから言いがかりつけたり、人の部屋の前で騒いだり! これ以上しつこいようなら警察を呼びますよ!」バタン! 再び勢いよく扉を閉めた。

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