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伝説のスナイパー  作者: まこと
57/162

No.57

参加してわずか20分足らずで似非ダンスチームのリーダーに抜擢された美香。 その躍進的な出世劇の裏側には、頭から右腕にかけて強い痺れという、あまりにも高い代償を支払わねばならなかった。


四人のメンバーと別れた美香は、急いで夜間診療へと駆け込んだ。

医師の診立てでは、後頭部と頸椎への損傷が酷く、手術するには非常に困難な場所な為、手の施しようがないと診断された。

そして美香の後頭部は陥没したまま、その生涯を閉じることとなるのだった。

若気の至りと呼ぶには、あまりにも悲しい出来事である。

結局、その日は医師から申し訳程度の鎮痛剤を処方されるに留まった。


自宅に戻り、鎮痛剤を服用するも、痺れがひどく眠れるはずもなかった。

その間も、頭に浮かぶは彼女達の常識外れで変則的なダンスであった。

あたしも踊らねば!

思い立ったら誰の迷惑も顧みず、即座に行動に移すのが暴君・美香なのだ。

美香は一度熱中すると、その対象物にしか興味を示さなくなり、貪欲なまでにそのスキルを吸収する。

そして夢中になる対象は、決して関心できる物ばかりではなかった。

以前付き合っていた恋人に、スロットを教えられたことがあった。 これが見事に美香のレーダーに捉えられた。

それからは、様々な角度からアプローチを試みた。 データ、確率、機器のアルゴリズム解析、情報収集に雑誌を読み漁り、終いにはガセの攻略情報にまで手を出した。

それでも、なかなか勝てないのが賭博である。

それもそのはず、胴元はお国である。 一市民の美香に、勝利の女神が微笑むことなど万に一つもあり得ない、財産を巻き上げられるのがオチである。

その間に借金も雪だるま式に増え続け、気が付けば借金が1000万円にまで迫っていた。

焦った美香は、その借金を全て連帯保証人である自身の恋人に押し付け、追われるように故郷を後にした。

そして当の本人は、今東京でのうのうとダンスに興じていた。


「これでよし、と!」邪魔な物は全て部屋の隅へ退かし、即席の舞台が出来上がったところで似非ダンススタート。

ジャンプしてからのターン、そして決め。 たったこれだけのことなのだが、そのたったこれだけのことが出来ずに苦しんでいた。

ピンポーン!

そして、何回目のジャンプターン決めを繰り返しただろうか、ほどなく玄関のチャイムが鳴った。

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