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伝説のスナイパー  作者: まこと
56/162

No.56

残虐非道の琴江は、淡々と自身の計画を説明した。

「あの上から落とせば、自殺と見せかけられるし、損傷具合にもよるけど、後頭部の怪我も誤魔化せるかもしれない。 それに死体を担いでたら、目撃されるリスクもあるわ。 屋上なら人に見られるリスクをぐんと減らせる。 横に移動するより、上に移動した方が目撃者も少なくて済むわ」

琴江は非常事態に限り、奸智が働く。

「そうね、たしかに琴江の発想は理に叶ってるかもしれない」

臆病風に吹かれながらも、絹江はこの計画に賛成の意思を示している。

「あたし達四人もいるんだから、人一人運ぶのなんて訳ないもんね。 静江も賛成よね?」

「うん、まあね・・・」道江に促され、卑屈な顔で静江も渋々頷く。

リーダーの座を琴江に奪われたようで、容易には賛同し兼ねるといった心境であろう。

静江に代わり、琴江の陣頭指揮の下、ここに「木嶋美香死体遺棄計画」が始まった。

「いつもダンスの練習が2時間かかるから、逆算すると約50分弱で死体を運ばなくちゃいけない計算になるわね」

毎日2時間ダンスの練習をして、ワンパターンな振り付けしか出来ない四人のロークオリティ振り。 ダンスへの未練を断ち切り、新たな道へ進んだ方が無難であろう。

「まず死体を運ぶときは、手足をタオルで包んで持って。 そうすれば指紋は付かないわ」

合点! メンバーがバッグからタオルを取り出し、美香を振り返ったと同時に、驚愕の光景が目に入った。

美香が起き上がり、焦点が定まっていない目でメンバーを見下ろしていた。

「あんた達何してるのよ?」

し、死人が生き返った!

真相は美香が、後頭部を打ち気絶していただけだった。 一度死んだと思い込んだ人間が生き返ったのだ、奇跡以外の何者でもないだろう。

キリストの復活に等しい奇跡を目の当たりにした一同は、死体遺棄という犯罪行為に手を染めずに済んだという解放感からもたらされた安堵の涙を、感動の涙と勘違いしていたのだ。

「あんたのダンス最高だったよ! あたい達のリーダーになっておくれよ」

卑屈な仮面を脱ぎ捨てた静江は、泣きじゃくりながら美香に哀願する。

皆も泣きじゃくりながら、大事な判断を見誤ったとも知らず、その場の雰囲気に呑み込まれ何度も頷く。

今、美香をリーダーとした似非ダンスチームが結成されたのである。

美香は後頭部を強打した後遺症として、頭から右腕にかけて強い痺れに悩まされ続ける生涯を送ることとなる。 まさに命がけのダンスであった。

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