表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
伝説のスナイパー  作者: まこと
54/162

No.54

「みんな行くよ!」

「合点!」リーダーらしき者の合図に皆が応える。

二十年近く前のマイナーな曲が流れ、スタート。

な、なんて見事なダンスなの! あたしにあんなこと出来るはずない・・・

美香の目には、さぞ華麗に映ったことだろう。 ただし、これは飽くまでも美香のフィルターを通しての情景である。

実際は、何のことはないジャンプしながらのターン、そして決めのポーズ、たったこれだけである。

ジャンプターン決め、ジャンプターン決め・・・ 曲が流れている間、延々このサイクルが繰り返される。

ダンスを始めて3ヶ月弱、四人が苦心の末習得した技法がこれである。

始めは皆ジャンプしてからの回転に三半規管をやられ、嘔吐してばかりだった。 だが次第にその回転にも慣れ始め、誰も嘔吐する者がいなくなった。

しかし、その代償はあまりにも大きかった。 三半規管が麻痺してしまい、真っ直ぐ歩くことができなくなっていたのだ。

ダンスに命を賭している、この言葉はあながち間違いではなかったようである。

やがてダンスが終わり、すっかり満足顔の彼女達が優越感に浸りながら美香を振り返る。

「どうだい? あんたに、あたい達の真似ができるかい?」リーダーらしき少女が、得意げに美香を見る。

ふふ、美香が鼻で笑う。

「さっきから見てれば、馬鹿の一つ覚えみたいにワンパターンな動きばかりじゃない」

四人に衝撃が走った。

あの女、ただ者じゃない・・・ あたい達の動きが見抜かれてる!

誰でもすぐ見抜くことができるのだが、それを敢えて口にするのも大人気ないと感じ、黙っている者ばかりなのだ。 知らぬは、おめでたい当の本人達だけであった。

「じゃ、じゃあ、そう言うんならやってごらんなさいよっ」

「そうよ、やってみなさいよ」

リーダー格の一言に皆も加勢する。

「やってみろ!やってみろ!」

それはやがてシュプレヒコールとなり、美香を挑発する。

決断を迫られた美香は前へ出た。

「さっきの曲かけてくれる?」

曲が流れ出す。 美香は彼女達のワンパターンな振り付けを何百回と見ているのだ。

自分には出来るはずだと暗示を施そうとするが、あんな見事な踊りを再現するのは困難な作業と言えよう。 しかし、彼女達は待ってはくれない。

ええい、ままよ!

曲に合わせジャンプからターン、着地と同時に足首を捻り、ゴッ! 後頭部をしたたかに打った。

そして暴君・美香は沈黙した・・・

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ