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伝説のスナイパー  作者: まこと
53/162

No.53

暴君・美香は今、ストリートダンスに夢中になっていた。

先日、仕事帰りにオフィス街を通りかかったところ、四人の女子高生と思しき若者が、ビルの鏡面ガラスを前にダンスをしている場面に遭遇した。

それまでダンスと言えば、バレエや舞台で演じられるような踊りしか知らない美香には衝撃的であった。

テンポの良い軽快な曲、一糸乱れぬ統率、敷居の高さを感じさせぬ雰囲気、どれを取っても魅力的に見えた。

気が付けば我を忘れるほどに魅入っていた。

あたしも一緒に踊ってみたいわ。

一度衝動に駆られたら、止める術はない。 早速一人の娘に仲間に加えろと、有無を言わせぬ口調で交渉をする。

当然彼女達は困惑した。 社会人になって間もない美香であっても、彼女達からしてみれば十分大人なのだ。

そんな美香に、高圧的な態度で仲間に加えろと交渉された。 それは最早交渉ではなく、至上命令に他ならなかった。

彼女達もやんわりと断れば事は丸く収まるのだが、そこはまだ血気盛んな十代の年端も行かぬ子どもである。

「あたい達はこのダンスに命賭けてるんだよ。 あんたには悪けど、そう安々とメンバーに入れる訳にはいかないよ。 他のメンバーにも示しもつかないし、第一そんなことしたら何百人も集まってきて大変なんだよ」

同じクラスになった者同士で結成し、始めてまだ3ヶ月の弱小ダンスユニットである。

他の生徒の注目を集めようと校内でダンスをしても、メンバーに加わりたいと申し出る者はおろか、誰も寄り付きもしなかった。 街中で踊っても結果は同じであった。

そこへ彼女達に初めて声をかけたのが美香であった。 始めは困惑したが、これは自分達の実力が認められた瞬間であると有頂天になったいた。 これが命を賭けているダンスユニットの全貌である。

ふっ、何を言うかと思えば、命を賭けてるですって?

美香は思わず失笑した。 親の庇護の下、のうのうと暮らしいてる生娘風情に限って生意気な能弁を垂れる、いつの世も変わり映えしないものである。

その時、メンバーの一人の気まぐれで、美香に幸運の女神が微笑みかけた。

「それなら条件があるよ。 一週間であたい達の振り付けをマスターできたら仲間に入れたげる。 これでどうだい?」

「ええ、それでいいわよ。 あなた達のお手本が見たいわ、早速踊ってみなさいよ」

どこまでも高圧的な態度を貫く。 暴君・美香と言われる所以である。

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