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伝説のスナイパー  作者: まこと
52/162

No.52

「それは大変な目に遭いましたね」さほどの同情心も覗かせずに、葛原が憐れみの言葉を述べた。

それを同意と捉え、気を良くしたスナイパーは、先日美香から受けた仕打ちの説明により一層熱が入った。

騒音がうるさいと注意しに行ったこと、それを夜中に来るのは非常識だと斬って返されたことを、事細かに言って聞かせた。

葛原を味方に引き入れたと思い込んだスナイパーの説明がクライマックスを迎えるに連れ、声のボリュームもそれに比例するかの如く大きくなっていった。

「あれから毎晩足踏みが続いてるんだ。 このままだと、いつか天井が落ちてくるんじゃないか不安になってくるんだよ!」天井を指差しながら葛原に訴える。

二階の美香の部屋からは物音一つしない。 夜中の宴のために体力を温存しているのだろう、まるで嵐の前のような静けさである。

策士・葛原は、今笑いを堪えることに全神経を集中させていた。

スナイパーの女々しいまでの説明もさることながら、ここの天井が崩れ、スナイパーが情けない悲鳴を上げながら潰れる場面を想像してしまったのだ。

これを笑わずして、何を笑えと言うのだろう。

「ピンポーン!」誰だろうか?

スナイパーの部屋には引っ越して来て以来、葛原以外に訪問してきた者はいなかった。

もしかして、警察関係者かっ!?

銃に手を這わせ、恐る恐る対応に出る。

「・・・どちら様でしょうか?」

「こんばんは、101号室の木嶋です」噂の張本人、美香だった。

なんだあのクソ女か。 驚かせやがって、何の用なんだ? もしかして、この間のことを謝りに来たのか? そう言うことなら、今回だけは大目に見てやるかな。

非礼を詫びに来たと思い込んだスナイパーは、尊大な態度で扉を開けた。

「はい、なんでしょうか?」余裕の表情を漂わせながら対応する。

「ちょっと、なんでしょうかじゃないでしょ! さっきから騒いでばかりで、いい加減にしてくれませんかっ! この間も人の部屋の前にずっと立って大声出して、ストーカーまがいなことは一切止めて下さいっ」

怒り心頭の美香を前に、スナイパーは何も言えずにいた。

バタン! 話すだけ話した美香は、勢いよく扉を閉めた。

玄関の前に取り残され、呆然と佇むスナイパー、必死に笑いを堪える葛原。

取り付くしまがないとはこのことである。 サイコパスな一面を持つ、木嶋 美香であった。

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