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伝説のスナイパー  作者: まこと
44/162

No.44

「おい、後ろから変な外人が追いかけて来るぞ!」

ゴミ収集車を運転している林川が、助手席の田澤に言った。

「ん? どれどれ?」助手席の窓を開け、覗き見た田澤は驚愕した。

アキバ系ファッションに身を包んだ外国人が「ブランドストリート」を、尋常ではない速さでゴミ収集車を追いかけているのだ。

「な、なんだあいつ!? 車と同じ速度で付いて来てるぞっ!」

「何か分からんけど引き離すぞ! あんなオタクに追い付かれたら、癪に障るからな」

何の面白みもない日常へのささやかな饗宴である。

「それは面白いな! やろうぜ」田澤も合意した。

ここにスナイパーと、清掃職員の追従レースが始まった。


「ま、待ってくれー! そ、その中に俺の服が・・・!」

長年愛用してきた服が、自身のアイデンティティが奪い去られるような錯覚に陥ったスナイパーは、ゴミ収集車の速度が上がっても必死に喰らい付いていた。

葛原やユニクロの従業員、道行く人々は、スナイパーと清掃職員のレースを見て爆笑していた。


くっ、差が縮まらないな! こうなったらタイヤを撃ち抜くか!?

一定の速度で走行するトラックのタイヤをバーストさせれば、バランスを崩し、横転することもあり得るのだ。

スナイパーは、自身のアイデンティティのために相手の被害も顧みず、白昼堂々と騒ぎを拡大させようとしていたのである。


「なかなかしぶとい奴だな・・・そうだ! 飲みかけのペットボトルでもぶつけてやるか?」

「それいいね。 ちょうど雑誌もあるからな」田澤の提案に林川も合意した。

田澤は身を乗り出し、スナイパー目がけ、ペットボトルや雑誌、タバコの吸殻まで、あらゆるゴミを投げ付けた。

街の美化に務める清掃職員にあるまじき行為である。


「うおっ!」ゴミ収集車から飛んできたゴミは、すべてスナイパーを直撃した。 結果的に清掃職員の妨害は成功したのである。

「てめえら! 何すんだー!」

怒り心頭のスナイパーは銃を抜き、投げ付けられたペットボトルの飲み口を銃口に付け、手元を雑誌で隠し、発砲した。 即席消音器の完成である。

バスッ!バスッ! スナイパーの放った弾丸は収集車の後輪を撃ち抜き、やがて停まった。

清掃職員の妨害が、功を奏したようである。

このレースを制したのは、タイヤを見事に撃ち抜いたスナイパーであった。

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