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伝説のスナイパー  作者: まこと
43/162

No.43

真夏の昼下がり。 暑さのためか、通りを行き交う人々はどこか気怠さを漂わせていた。

そんな中、ユニクロの袋を両手いっぱいに持った男が頭を下げ、肩を震わせ笑っている。 もう一人の男もまた両手にユニクロの袋を持ち、頭を下げている男を怒りの形相で睨み付ける奇妙な光景があった。

葛原が頭を下げ肩を震わせているのを見たスナイパーに、哀れみの気持ちが芽生えてきた。

このバカ泣いてるのか? 何だよ、素直なところがあるじゃねえか。

「大輔、顔を上げてくれよ。 そんなんじゃ、夢も語り合えないだろ? 服は今から取りに行けばいいんだからさ」

「いや・・ジミーさん、の、大切な・・・服が・・・」笑ってしまい、話すだけでも辛いのである。

「もう気にしてないよ。 さ、早く取りに戻ろうぜ」

一人で取りに戻ればいいだけなのだが、まだ葛原を許してはいないようである。


「あの、さっき処分してくれと言った、あの服は今どこにありますか?」

「ああ、あの服でしたら、裏のゴミ置き場にありますよ」

スナイパーと葛原はファッションショーの聖地、ユニクロへと舞い戻ってきた。 従業員はまた二人が何かしてくれるのではと期待していたいが、予想に反して二人は店の裏に回った。

「ない、ない、ここにもない! どこ行ったんだ!?」

ゴミ袋を漁ったが、どこにもスナイパーの服がなかった。

葛原も一緒に探すふりをしながら、スナイパーがゴミ袋を漁る滑稽な姿を見て笑っていた。 と、そこへ見慣れた車両が葛原の視界に入った。 ゴミ収集車である。

「ジミーさん! もしかしてゴミ収集車の中じゃないですか!?」

「えっ!?」ゴミを漁る手を止め、買い物袋を両手に持ち、ゴミ収集車を追いかけ始めた。

人間とは、突発的な出来事に遭遇すると、矛盾した行動を取ることがあるが、スナイパーにとって買い物袋を持ちゴミ収集車を追いかけることが当てはまったのである。

「そこのゴミ収集車、待ってくれー!」スナイパーが慌てて追いかける。

それを見た葛原は下を巻いた。

両手に買い物袋を持っているのを差し引いても、尋常じゃない速さである。

だが買い物袋が脚に引っかかり盛大に転倒し、ユニクロで買った服が路面いっぱいに散らばった。

もう限界であった。 葛原も従業員も、スナイパーの無様な姿を見て笑い転げるしかなかった。

それでもまた起き上がりゴミ収集車を追いかけた。

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