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伝説のスナイパー  作者: まこと
42/162

No.42

スナイパーと葛原の決して叶うことのない、悲しい夢物語は飽きることなく続いていた。

だが、どんな甘い夢にも突如として終わりが告げられるものである。

「そういえば、さっきまで着てた俺の服は?」

「ああ、あれは汚かったので、店員さんに処分してもらいましたよ」事もなげに言った。

「えっ!?」スナイパーの中に衝撃が走った。 アキバ系ファッションで世界に躍り出る夢を語り、悦に浸りきっていた気分が急降下したのである。

「な、なんてことするだよ! あれは大事な服だったんだよっ!」今までの笑顔とは打って変わり、今にも泣き出しそうな顔になった。

「そんなに大事な服だったんですかっ!? ごめんなさい。 すぐ取りに行きましょう」申し訳なさそうに言ってるが、本当は笑いを堪えているのだ。

ここに来て、トップデザイナーではなく策士・葛原の復活である。

「当たり前だよ、もう! 何で捨てるのかな・・・ 」スナイパーの声は、最早涙声である。

「何か足りないと思ってたんだよ。 でも大輔が必ず持ってるんだろうと信じてたのに!」

自身の汗が大量に染み込んだ服を忘れ、挙句の果てにそれを人に持たせようとしたのが、そもそもの要因と言えよう。

「大輔は服買ったら、今まで着てた服を店員に全部捨てさせるの? そんなことしたら服なくなっちゃうよね? ね、大輔はそれについてどう考えてるの?」

怒りに任せ一気にまくし立てると、理論に破綻を来すことは言うまでもないのだ。

「えーと、概数値が一定なら、服を買う度に捨てても、元の数に変化はありませんよ」正論で支離滅裂な理論に切って返した。

「そうだよね」肯かざる得ない隙のない解答である。

「だからって、捨ててもいいってことにはならないでしょ!」

責め立てるルートを塞がれたスナイパーは、相手の過失に言及するしかなかった。

「ジミーさん、本当にごめんなさい」深々と頭を下げ、肩を震わせている。

「ごめんで済んだら、俺の服は戻ってこないんだよ!」

何を言っているのかすら 自分でも意識していないのだ。

葛原は下を向いたまま、声を殺して笑っていた。

な、何とかしてこの現状を打破しなければ。 これ以上また変なこと言われたら耐えられる自信がないぞ!

葛原は、悲しい気分に浸ろうとするが、ユニクロでのファッションショーや、スナイパーの怒り狂った顔ばかりが頭を過ぎり、うまく集中できない。

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