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伝説のスナイパー  作者: まこと
39/162

No.39

「こ、これが俺!?」

スナイパーは 鏡に映る自身の姿に、思わず酔いしれた。

長年愛用してきた衣服を脱ぎ捨て、新たな自分に生まれ変わったのだ。

あのバカもやればできるじゃねえか!

「大輔! これでどうかな?」

試着室にいた客や店員が、カーテンを開け出てきたスナイパーを見た瞬間、一斉に静まり返った。

筋肉質の外国人が、アキバ系ファッションに身を包み颯爽と登場したのだ、皆笑いを堪えるのに必死である。

そんな中でもスナイパーと葛原だけは周りが一切見えておらず、二人だけの世界を構築しつつあるようだ。

「ジミーさん! 似合ってますよ!」

「止せよ、たかが服じゃないか」

そのたかが服のために暑さと周りからの視線に晒され、倒れた男の言えたセリフではないのだ。

「いえ、これは絶対似合ってますよ。 もっといろんな服を持ってきますね」

もたもたするなよ!

葛原は、更なる服を物色しに行った。

スナイパーはカーテンを開け放ったまま、鏡の前で様々な角度から自分の姿を確認し、ポーズを取り、その都度新たな自分を発見していった。

無論、店員や客はスナイパーの一挙手一投足を見逃すまいと、笑いを堪えながら見守っていた。

「お待たせしました! さあ、次はこれを着てみて下さい」

「ああ。 今度はどんな俺を演出できるのか楽しみだな」

この一言で、試着室が笑いの渦に包まれた。

スナイパーの中では、デザイナーの葛原がトップモデルである自身のために、ユニクロ主催のファッションショー「アキバコレクション」を開催している妄想世界に突入していた。 観客は店内にいる人間すべてである。 この笑い声も、賞賛を送る声援にしか聞こえてはいないのだ。

観客はスナイパーがカーテンを開けるのを固唾を飲んで見守っている。

やがてカーテンが開け放たれ、トップモデルのスナイパーが現れた。

白のツータックチノ、色落ちしたダンガリーシャツの下にアニメTシャツ。

まさにアキバ系の必須アイテムばかりを凝縮させたスタイルである。

モデル然としたスナイパー見たさに店内の客が試着室に詰め寄り、笑い転げている。

明らかに悪意を感じるチョイスであるが、当のデザイナーに成り切っている葛原には一切の悪意はなく、ただスナイパーに似合う服を選んでいるだけなのだ。 悪意がない分だけ達が悪いと言えよう。

これが策士・葛原と言われる所以である。

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